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0440・もち米




 微妙な空気の中で進んで行く僕達だけど、それも長くは続かなかった。理由は突然通路に走った電撃だ。


 「「ぐっ!」」


 「「「「きゃあ!」」」」


 「「!」」



 突然通路に電撃が走り、僕達は大きなダメージを受ける事になった。何といっても電撃だ、避ける事なんて出来やしない。おそらくこれがラスティアが言っていた<電撃通路>なんだろう。



 「久々だけど、やっぱり厳しいわねー。これが思ってる以上にダメージを受けるのよ。そのうえ電撃だから避けられないし」


 「本当に嫌になりますよね。今回はたまたま50階では登場しませんでしたので、もしかしたら階層が変わったのかと思っていたのですが、やはり50階から登場のようです」


 「偶然50階には無かったけど、だからといって50階以降も無いなんて事はないわよねえ。甘い希望だったけど、今打ち砕かれたわ。これ本当に回避できないから困りものなのよ」


 「発見して踏まないように回避するしかありませんね。物理的な罠ではなく魔法的な罠ですから、見た目に全く表れないところが厄介です。何とか【罠発見】で見つけてもらう以外にはありません。ですので頑張って下さい」



 何だかナツのもち米以外にもプレッシャーが掛けられたぞ? とはいえ50階に来たところだし、そう易々と見つかれば苦労はしない。いつものトラバサミとか落とし穴は分かるし、爆発壁も分かるんだけど、通路系は今のところ無理だ。


 そう言いつつ進んで行くと、魔物の混成が襲ってきた。剣2の盾5に兜が3なんだけど、ナツが早速【ライトウェーブ】を放ってるよ。それ自体は間違いじゃないんだけど、絶対にハチマキ欲しさに狙ってるよね? 星兜いるし。


 キャスティが【ライトウェーブ】を放ち、エストが【ライトウェーブ】を放つと、再びナツが【ライトウェーブ】。そして瀕死の暗闇ヘルムの星兜をセナが白魔銀のトンファーで一撃。あっさりと倒した。



 「あーーーー!!!」


 「はいはい、騒ぐと思ったけど諦める。そもそも白魔銀の威力は高いし、ナツが倒しても手に入ったかは分からない。それよりもモンスターを倒す」


 「うー……分かった!」



 ナツがあからさまにご立腹だが、それを僕達に押し付けられても困る。まあ、セナは若干狙ってたっぽいけどね。そしてそれを皆が分かってる。手に入るなら欲しいんだろうし、気持ちはよく分かるよ。僕もたまたまだったし


 戦闘終了後、先を急ぐように進んで行く。少々遅れ気味だからなんだが、今度は通路から火が吹き上がり僕達を焼こうとしてきた。通路全体だから逃げ場が無い。


 熱いし痛いし大変だったけど、火は途中で自動的に消えた。これが<炎熱通路>かー、シャレにならないね。<電撃通路>より長く続くから痛みも長く受けるんだ。痛覚的に厳しいのと、火はどうしても恐怖を生む。


 もち米と星兜を取られた事でキレかけていたナツが、今は恐怖を顔に浮かべながら回復している。僕も仲間を回復するが、通路に居る全員がダメージを受けるのがキツい。これの被害が大き過ぎる。



 「皆がダメージを受けるし長いから、<炎熱通路>の罠の方が厳しいね。少なくとも<電撃通路>の方はエストが受けてない。っていう事は、飛んでたら回避できるって事だし」


 「言いたい事は分かるが、俺達は飛べないんだぜ?」


 「まあ、そうなんだけどね。それより回復しながら進むしかないし、これは相当攻略が遅れそうだよ。帰る時間までに青い魔法陣を見つけないと、ちょっと面倒な事になるかも」


 「それは言っても始まらない。それに採取ポイントがあそこにある。………ナツ、行かないの?」


 「ここで勇んで行くから失敗する。私、学んだ。だから他の人が先に行って」


 「変わらないんだけどなー。まぁ、まずは俺が行くわ。………なんか、すまん」



 早速ユウヤがもち米を出し、「ピクッ」と反応するナツ。でも澄ましたままなので僕達も何も言わずに見守る。ユウヤの番が終わり、他の皆も順々に採取をしていく。そして僕の番が回ってきたので採取しようとすると……



 「ちょっと、待ったぁ!! ここは私が採取します!!」


 「いや、まあ、お好きにどうぞ?」


 「コトブキが採取する番を横取りする事で、コトブキの運を手に入れようとしてる。だからコトブキがやるまで待ってた。ナツ、なんてセコい!」


 「別にいいもんねー。私はもち米が手に入れば何でもいいんだよ。コトブキ君の順番に割り込んだから、必ずもち米が出て……出て………ガッデム!!」



 何で<悪のカリスマ>なのさ? ナツがSTFをするあの人に見え……る事はないね。そんな事は流石にないか。しかし何で急に「ガッデム」とか言い出したんだろう?。


 とりあえず僕の番だから採取しよう。………あの、横でジッと見るのは止めてくれないかな? 流石に味方にプレッシャーを掛けられるのはおかしいからね? だから、って出た。



 「何で一回目から出るの!? 絶対におかしい! コトブキ君は私の運気を奪った!!」


 「何言ってんのよ。さっきコトブキの運気を奪おうとしたのはアンタでしょうに。自業自得よ、自業自得」


 「自業自得にしてもちょっとおかしい。2回目も3回目も何故かもち米」


 「それどころか4回目も5回目も何故かもち米なんですが……。コトブキの引きはいったいどうなっているのでしょう?」


 「5回で終わりって事は、今回全部もち米か? よく分からない引きだなー。そういうのはコトブキじゃなくてナツがするもんだけど……」


 「ほら! やっぱり私の運を奪ってるー!!」


 「そんな事できる訳ないじゃん。運気を奪うなんてどうやるのさ」


 「まあ、確かにそうね。そんなスキルも能力も聞いた事がないわ。これはアレじゃない? 卑怯な事をせず正々堂々とやれっていう啓示じゃないかしら」


 「かもしれませんね。そもそも他人の運気に乗ろうとしたのはナツが先なのです。それを忘れて文句を言うのは筋違いでしょう」


 「ぶー……だってさー」


 「なんか小学部の時のナツみたいだな。昔はこんな感じだったのを思い出したわ」


 「そう? 私と居る時はたまにこうなる。普段は猫を被るようになったから知らないだけ」


 「そういうのバラしちゃダメ!!」



 どうやら態度や言葉使いは変わっていても、ナツの本質は何も変わっていないらしい。それはそれで安心だけど、そうなるともち米が出るまで大変だなぁ。ナツはヘソを曲げると長いから。


 今は皆との話で横に逸れたけど、次も出なかったらまた怒り出すだろう。本当、早めに出てくれないかなー。


 その後、何度か罠を受けながら採掘や伐採ポイントを過ぎ、ようやく新たな採取ポイントを見つけた。早速ナツが採取してるけど、頼むから出てよ。



 「アール草、雑草、アール草、ティロエム、オールアップ草! 何で出ないのよ!! こんなものぉ!! って、アレ?」



 ナツが触れられないと思っていて引き千切るような仕草で採取ポイントを触るとまだ引っ込抜けた。珍しく6回採取できるポイントだったみたいだけど、ナツが握っているのは念願の



 「もち米だーーーーー!! やったーーーーーー!!!!」



 物凄い喜びようだなー。そこまでになる程に出なかったし、気持ちは凄くよく分かるんだけど、ナツの大声の所為で敵が寄ってきた。


 ナツ、嬉しいのは分かるけど戦って。早く戦って、【光魔法】持ちなんだからさあ!!。



 「ナツ!! インベントリに仕舞って早く戦う!!」


 「はい!!!」



 僕達の言葉より、イルの一喝の方が良く効くらしい。


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