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0439・物欲センサー




 ナツの物欲が暴走しているんだが、それも仕方がないのかもしれない。あれから幾つかの採掘や伐採の場所を経て、ようやく採取場所を発見した。それと同時に50階の地図も完成したんだが、何故かナツにはもち米が一つも出なかったんだ。


 僕には3つ出たし、ユウヤも2つ出た。他の皆は出なかったけど、ナツも出なくて暴走が始まったんだ。まさか一つも出ないなんてねー。



 「ぬがーーっ!! 何で出ないの!? おかしいでしょ!! どう考えたってあり得ない!!」


 「だから物欲センサーだっつってんじゃん。皆それに苦しむんだよ。一番確率が高いのに出なかったりな。不思議と出ない事が多いから物欲センサーなんて言われるんだ。残念だけど諦めろ」


 「そう。皆が苦しむ最強の敵、それが物欲センサー。戦いを挑んだところで勝てる訳じゃないし、何を言っても非情であり無慈悲。それが物欲センサー」


 「本当に最強の敵すぎるから困りものなんですよね。気持ちは痛いほど分かりますけど、誰も彼もがその強大な力の前に敗れてきたんです」


 「ナツは変な運を持ってるから大丈夫なのかと思ったけど、やっぱり物欲センサーには勝てないのねえ。何をやっても勝てないし、世の中には厄除けの御祓いにまで行ったのに勝てなかった人も居るのよ」


 「厄の所為じゃなくて物欲の所為だからね。幾ら厄を祓っても、どうにもならないと思うよ? 無の境地に到ってるフリしてるだけで、物欲が隠せないからセンサーが反応してるんだしさ」


 「そんな事はどうでもいい! 私にもち米を寄越せ!! 善哉ぜんざいを食べるんだから!!」


 「ああ、善哉ぜんざいが食いたかったのか。小豆と餅に砂糖たっぷり。ま、食いたい気持ちも分からんではない。でも小豆をどうする気なんだ?」


 「あんこなら運営マーケットに売ってるし、それを使って今川焼きを売ってるプレイヤーも居る」


 「ああ、アレね。回転焼きとか、人形焼きとか、おやきとか、御座候とか色々な商品名で売ってたわ。それで出身県がどうとかって話をしてたのと、あと玉子焼きも2つ出てたわね。たこ焼きみたいなのと普通の玉子焼きと」


 「それって明石焼きじゃん。ウチでも取り扱ってるけど、それ地元だと玉子焼きっていうらしいぜ。だからそれを出してる奴は兵庫県民か出身なんじゃね?」


 「へー、そうなんだ。まあ、それはともかくとして、お餅さえあれば後は運営マーケットで買えばいいだけなのよ。だから善哉ぜんざいは簡単に作れると思う。どうせお店みたいに作る必要ないんだし」


 「ナツが食べたいだけだから適当でいい。それより青い魔法陣が見えてきたから先に進む」



 イルの言葉に我先に飛び込むナツ。いきなり襲われたらどうするんだと思いながらも、皆と一緒に魔法陣で転移する。ナツはきちんと待っていたけど、「早く行くぞ」と言わんばかりの表情だ。


 どうしても善哉ぜんざいが食べたくて仕方ないらしい。僕はひたすら地図を描きつつ戦闘し採掘し、伐採してまた地図を描く。この階では未だ採取場所が見当たらないなー。それよりダークゾーンも見当たらない。


 この感じだと、やはり【闇視】の効果でダークゾーンそのものが認識出来ないみたいだ。まあ、わざわざダークゾーンを確認する理由も無いし、そんな事をしていたら荒ぶってる人に何を言われるか分からないので、僕も必死になって追いついていく。


 そんな中、やっと見つけた採取場所に真っ先に飛びつくナツ。そして採取していくのだが……またも手に入らなかったらしい。本当に物欲センサーさんは勤勉だなぁ。



 「うがーーーっ!!! な・ん・でーーーーっ!!!」


 「そこまでして食べたいっていう執念も凄いが、律儀に仕事をする物欲センサーも凄いなー。おっと……」



 ユウヤが軽口を叩くと、物凄い顔で睨みつけるナツ。だから物欲センサーさんが仕事をするんだけど、未だに理解できていないらしい。単に僕達が慣れてしまっただけかもしれないけど、最初に物欲センサーに苦しんだ時はこんな感じだったなぁ。


 そんな事を思いつつも発見した採掘場所や伐採場所で素材を得ていると、ついにナツが爆発した。



 「ウィンドトレウッドとか金とか要らないの! 私はもち米が欲しいだけなのに余計な物が出る! こんなの要らない!!」


 「いやウィンドトレウッドは結構儲かると思うし、俺が欲しいくらいだ。だったら俺のもち米を売るから、ウィンドトレウッドを売ってくれよ」


 「売る!! けど、自分でも採る!!」


 「もうこうなったら意地ですよね、手に入れば何でもいい筈なんですけど、自分で手に入れられないのが許せない。だからどんどん必死になって、どんどん硬くなってしまうんです。私も昔はああでしたね」


 「分かるー……っと、魔物が出てきたから真面目に戦おうか?」



 暗闇シールドと暗闇ヘルムの混成だ。これはそこまで面倒でもなく、割とイージーな編成ではある。とはいえ盾3の兜7という最大数の編成なうえ、兜に寄ってるのでブレスが厄介ではあるんだけど。


 それでも仲間達の【ライトウェーブ】と、先に進みたいナツの【ライトウェーブ】連打で瀕死になる暗闇ヘルム。後は1体ずつ確実に処理していけばいいだけだ。



 ―――――――――――――――


 <兜> 幸運のハチマキ 品質:10 レア度:10 耐久150


 幸運を示す金色のハチマキ。着けると目立ってしまい魔物から狙われる確率が上がるが、その反面色々な場面で運が良くなる。ただし壊れやすいので注意しよう

 【幸運】


 ―――――――――――――――



 おおー……これは良い物だ。僕は後10年戦える。


 ま、冗談は置いといて早速着けようっと。でも壊れやすいから注意しないといけないね。幸運のウサギ耳を外してっと……あれ? そういえば幸運のウサギ耳って、確か【幸運】なんてスキル付いてなかったな。


 という事は、これが本当の幸運上昇アイテムなのかもしれない。



 「コトブキどうしたんだ? ……っておい、それレアアイテムか!?」


 「えっ、レアアイテム!? …………耐久150かー。範囲魔法とか受けたらすぐに壊れそうね。正直に言って【幸運】っていうのは魅力的だけど、ずっと着けてる自信ないかなー」


 「私も無い。流石に耐久150じゃ今では低すぎる。耐久の最大値で減少の仕方が決まってるから、最大150は今の魔物相手だと壊れやす過ぎ。弱い魔物なら安心できるけど、そんな弱いの相手じゃ身につける意味が無い」


 「微妙に使いにくい感じだが、さっきコトブキが倒してたのは星兜だったよな? 他のアーメットとかグレートヘルムじゃなかった筈」


 「つまり和風の兜を狙えば手に入る? あのハチマキは非情に重要。ドロップとかレアアイテムとは書いてなく、様々な場面で幸運になると書いてある。だから生産作業や採取とかにも恩恵がある可能性が高い」


 「あー、採取の時とかだけ装備してればいい訳か。成る程なぁ……ってナツ、睨むのは駄目だろ」


 「とにかく星兜っていう和風の兜を倒せば手に入るっぽいから、頑張りましょうか」


 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」



 何だか僕の召喚モンスター達も含めて狙ってる気がするぞ? このハチマキが有ったからって、そこまで幸運になれるとは思えないけどなー。


 とか言ってたら、ナツから凄い睨まれたよ。気持ちは分かるんだけど、もち米が出ないイライラを僕にぶつけないでほしい。


 流石に僕がチラッと見たら止めてくれたけど、ここから先の気が重いよ。早くナツにもち米が出てくれないものか……。とはいえ出たところで足りないから、実際には3つか4つは要るんだろう。


 でもなー、一度食べたら2度3度と言い出すかも。太らないっていうのは大きいからね。


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