0433・暗闇ダンジョン45階
攻撃力が高いものの、いつかは壊れる。それがレアアイテムだ。当たり前だけど修理は不可だし………ファルにでも渡そう。おそらくファルなら手首が360度回転しても平気な筈。ただし「必中」と口に出来るかは知らないけど。
そう決めて先へと進んで行く。やたらにレアアイテムが出たけど、結構戦わないと手に入らないのか、それとも偶然4人に出たのか。レアアイテムなんてよく分からないところがあるから、なんとも言えないんだよねえ。
僕達は43階まで採取や採掘に伐採などをしつつ進み、44階へと転移する。ここからは新しく地図を描き始めるんだけど、ここに来るまでに多少の時間が掛かってる。それでも今までよりは早かった。
「ユウヤに売った黒魔銀のロングメイス、びっくりするほど効いたね。まさかあそこまでとは思わなかったけど、やっぱりそれだけの大きさをしてるからかな?」
「そうじゃねえか? 俺もまさかタワーシールドが大きく後退する程だとは思わなかったぜ。しかもかなりのダメージを受けたからか、俺にあまり近付いて来なくなったしな」
「あれはあからさまだったね。ユウヤから逃げる感じだったから、私が黒魔銀の鉈で攻撃したよ。また後退して別の所に行ったけど、最後はセナのトンファーで沈んでたね」
「シグマも活躍してたし、セナは白魔銀のトンファーも持ってた。暗闇ソードがビックリするほど嫌がってたけど、暗闇ソードの方が弱点に弱いのかも」
「盾は耐久力ありそうだもんね。剣の方が耐久力は無さそうだし、そうなると剣の方が嫌がるのは当たり前かな? 白魔銀の方も持っておいた方が良いんだろうけど、高いから他の人お願い」
「私はパス。支配モンスター達を前に出すのは難しいし、そんなお金の余裕ないし。元々作ってるコトブキが一番良いと思うわよ。どうせ沢山作らなきゃいけないんだろうし」
「それはそうなんだけどさー。武器を交換する手間もあるから、あんまりこっちに放り投げられても困るんだよね。一番いいのはプレイヤーが武器を持つ事なんだけど? 鎖鞭つくろうか?」
「要らない。あったって仕方ないし、周りの味方を巻き込む可能性があるしね。別に無理に使わなきゃいけない訳じゃないもの、そういうのは他に任せる」
「もし僕が持たせるなら、後はセスだけなんだよね。といってもセスはエストックだから威力もそこまで出ないし、無理に黒魔銀に交換する意味も無いし」
「あんた達ちゃんと緊張感を持って戦ってるんでしょうね? 誰かが首を刎ねられたら、それだけで戦力ダウンするのよ。もうちょっと緊張感を持ちなさい」
ラスティアに叱られたので口を閉じ、真剣に魔物と戦おう。まあ、そこまで緊張感が無くなってた訳じゃないんだけど、確かに迂闊だったかもしれない。罠も未だに落とし穴とトラバサミしか見えない……?。
「ここ! ここに罠がある! 私見えたよ、罠が!!」
「おめでとう。と言いたいところだけど、私も見えてるわね?」
「私も見える。銀色だからトラバサミ。やっと見えるようになったけど、これから先が長い。コトブキもまだ2つしか見えてないし」
「そうなんだよなー。俺もやっと見えたけど、先は長そうだ。まだ44階だから良いけど、50階に到達するまでには全ての罠が見えるようになってないとな」
「僕は壁のも見えるようになったよ。ちょうど向こうの壁に赤黒い光がチラチラ見えるんだ。あれ多分だけど<爆発壁>だと思う。でも罠が分かったとはいえ、どう防げばいいんだ?」
「先に発動させればいい。だから何か投げれば?」
「いや投げるって言って……ああ、石。採掘のハズレ品である石を持ってればいいのか。成る程、よく出来てる」
「確かにな。石なら捨てるもんだし、それで罠を解除出来るならそれに越した事は無い。確かに上手く出来てるな、あのハズレ品は何処の階層でも出るし。で、それはいいとして、今はどうするんだ?」
「……仕方ない。銀鉱石があるからそれを投げよう。多少勿体ない気はしないでもないけど、背に腹はかえられない」
僕は盾組に並んでもらい、銀鉱石を罠に向かって投げる。それは見事に罠にぶつかり、壁が爆発して破片を周囲に撒き散らす。今までならそれなりにダメージを受けたが、今回は盾組が完全に防いでくれた。
「よしよし。全くダメージを受けずに突破できた。後は適当に投げる物を用意しておけばいいだけだ。っていうか、銀鉱石も多少壊れただけで拾えるね。石なら簡単に壊れるかもしれないけど、鉱石なら耐えられる?」
「でも無理して鉱石を投げる意味が無い。こういうのは無くなっても惜しくない物を投げるべき。何度か使い回せるからと言って必要な物を投げる意味が無い。そちらの方が無駄」
「まあ、それはね。それより先へと進もう。早く進まないと2階層分の地図が完成しない」
止めたのは僕だけど、そう言って進んで行く。罠があれば棒などで発動させたり、採掘時にとっておいた石を投げて発動させる。それだけでダメージを受けずに進めるので、今までに比べて相当進みやすくなった。
そうこうしている内に44階も終わり、遂に新たな魔物が出てくる45階に突入。緊張感を持って進んで行くも、すぐに新たな魔物は現れた。
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<暗闇ヘルム> 特殊魔物 Lv69
暗闇ダンジョンにのみ生息する特殊な魔物。全身が青黒く、微妙に見え難いのが特徴。とても厄介な魔物であり、群れの数が多い。無機物なので気配が無く、生ある者を追い駆けて冷気を吹きかけ、凍死させようとしてくる。生物的な弱点や急所がないので注意しよう
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「良かったー。ガントレットじゃなくてヘルムだったよ。これならまだ戦える」
「言いたい事は分かるけど、この冷気を吹きかけっていう部分、もしかしてブレスじゃねえのか? だとしたら無限にやってくるぞ」
「何を今さら。ヘルムもガントレットも連発してくる。無限に使える奴等に悪態を吐いても意味が無い。それに、こいつの弱点はおそらく火属性。だとすると誰も弱点武器を持ってない」
「青黒くって出てるんだから、もしかしたら光属性も多少は効くんじゃないかな? 黒い剣の弱点が光属性で、白い盾の弱点が闇属性なんだから」
「青黒いのは火属性と光属性が弱点? とにかく誰か光属性で攻撃して」
5体出てきているんだけど、冷気攻撃というかブレスが厄介だ。一塊になってブレスを吐いてくるので非常に強力な攻撃になってる。その一団に対してキャスティが【ライトウェーブ】を放つ。
ブレスは止まったが、すぐにナツが【ライトウェーブ】を放ち、その後にエストが【ライトウェーブ】を放つ。3度の【ライトウェーブ】は流石に厳しかったのか、一塊になるのは止めて散開した暗闇ヘルム。
そこに白魔銀のトンファーを持ったセナが襲いかかり、思いっきり殴りつける。なんとその一撃で暗闇ヘルムを倒したセナ。そこまで耐久力の高い相手ではないらしい。そういえば5階刻みの魔物は全て耐久力が低かったね。今思い出したよ。
セナが一撃で倒したのを見たからか、皆も一斉に襲いかかって倒していく。そこまで強い魔物じゃなかったけど、一塊になって強力なブレスを吐くのが厄介だなぁ。
何か対策が必要かな?。 でも固まってる間は攻撃のチャンスだし……皆と相談しよう。
「相手は一塊になって強力なブレスを吐いてきたけど、対策は必要な感じ? それともチャンスだから、塊になったら一気に攻める?」
「一気に攻めるのが良いんじゃねえか? 別に無理して対策を立てずとも、暗闇ソードと同じで【ライトウェーブ】でダメージを与えたら済むだろ」
他の皆もユウヤと同じ意見だったので、無理して対策をとる必要は無しとなった。ま、一気に倒した方が早いのは確かか。




