0427・師匠の家に帰還とマリアさん
43階を進んで行く皆の後ろで、地図を描きながら考える。今回のダンジョン攻略で43階まで来たが、この調子だと1日で2階分しか進めないなと。罠が見えないからゆっくりしているのだが、見えるなら先へと進んだ方がいい。
まだ全ての罠が見えないので分からないが、明日にでも見えるようになったら先へと進むべきだろうか? でも<光精石>などはここでしか手に入らないし、十分に手に入れてからの方が良いのか悩む。
「どうだろうな? 難しいところだが、あまり先へと進み過ぎても良くない気もするし……今はこの辺りで良いんじゃないか? コトブキも言うように罠が全て見えている訳でもないし、色々な精石も大量に必要だからな」
「ナツは先に進みたそうだったけど、それはどう? 最初、先に進めるなら進むべきだって言ってたじゃない?」
「あれは、また変な虫が出てくるのが嫌だったからだよ。ここは暗闇ソードとか暗闇シールドだし、なら無理して先に進む必要も無いかな? 45階からも、多分だけど似たような魔物だろうし」
「それはそう。今までのパターンはずっとそうだから、いきなり変な虫が出てくるとは考えにくい。むしろ次が何なのか気になるところ」
「次ってガントレットじゃないの? 僕はそう予想してたけど」
「「「「ガントレット?」」」」」
「ああ、そういう事か。でも兜の可能性もあるし、鎧の可能性もあるぜ? そもそもガントレットはラストに手に入るし、使った時の効果が効果だしな」
「兜は冷気魔法か何かだったような気が……どのみち無限に使える便利アイテム扱いだよね。アレは」
「ガントレットが異常すぎるけどな。そもそも核撃魔法ってどうよ? って話ではあるんだけどさ」
「何か分かったけど、下らない話をしてないで集中する。たしかに剣と盾は出てきたけど、次がガントレットとは限ってないし、出てきたら多分勝てない」
「「「「???」」」」」
僕達だけで伝わる話をしていてもしょうがないので先へと進もう。ちょっと集中力が落ちたかもしれないけど、今さら隙をみせるような皆でもない。なので問題ないだろう。
進みながらも地図を描き、現れた魔物を緊張感を持って倒す。大分慣れてきたけど、時間が時間なのでそろそろ赤い魔法陣を見つけたいところだ。採掘や採取に伐採もしてるけど、レアはもう無いらしい。
そういえばゴルドウッドを倉庫に入れたまんまだった。あれも何とかしないとな。金鉱石とゴルドウッドで、ゴールドマト○クとか作ってみる? いや、全く意味がないね。それに、ここ60階以上あるし。
そんな下らない事を考えながらも、戦闘は緊張感を持って対処していると赤い魔法陣を発見。皆と相談し、出来る限り地図を完成させておく事にした。脱出するとまた魔物を倒さなきゃならなくなる。
それでは調べ難いので、今の内になるべく調べておこうとなったんだ。まあ、明日また戦いながら調べるのは面倒臭いからね。既に半分以上は調べ終わってるし。
採掘や採取に伐採をしつつ進んで行き、地図が完成したらすぐに脱出する。43階も微妙にバラついているというか、先へと進むだけならそんなに素材を集められないように散っている。
困ったなと思いつつも、皆で地図を確認しつつルートを決め……いや、女性陣が勝手に決めてしまうか。まあ、揉めるよりマシだとしておこう。
脱出した僕達は、いつも通り不明な国の首都を経由して師匠の家に戻る。ユウヤと別れて家に入ると、ソファーの部屋にマリアさんが居た。何故? と思う間も無く声を掛けられたので、一応しっかり挨拶しておく。
「聞いていた時間に帰ってきてくれて助かるわ。<破滅>殿が言うには、暗闇ダンジョンへ行ってるんですってね? あそこは何処の国にも属さない場所だけど、有用な物が沢山手に入る場所でもあるわ」
「はあ……そうですね」
いきなり話を始められたが、何が言いたいのか分からない。不思議に思っているとソファーの部屋に師匠がやってきて話を始めた。
「帰ってきたか。マリアが言いたいのは、有用な素材があれば買い取るという事だ。そなたらにも必要な物があるから、そちらを優先させよと言うたのだがな。それでも国として買い取りたい物でもあるのだろう」
「ですが僕達はそこまで奥に行ってませんよ? 今日も43階の地図を完成させて帰ってきただけですし」
「あら、まだそんな所だったの? となると買い取って有効活用できそうな物は少なそうね。残念」
「そう思うのなら、己の所の騎士なりを行かせれば良かろう。何もコトブキ達から買おうとせずにな」
「それは無理よ。貴女だって知ってるでしょう? あそこは有用な物が手に入るけど、代わりに死に近すぎる。特に罠で簡単に死ぬ以上、おいそれと騎士なんかは派遣できない。1人の優秀な騎士を育てるのに、どれだけのお金と時間が掛かるか……」
「だからと言うて、幾らでも生き返れる者に無茶をせいと言うのもおかしかろうが。前にも言うたが、復活するからといって簡単に命を散らしてよい訳ではないのだぞ」
「そういう意味ではないわよ。そもそもあそこに挑戦する者自体が少ないって知ってるでしょうに。しかも暗闇ダンジョンでは奥に進むほど良い物が出てくる。ならば買取を考えるのは当然でしょう?」
「まあ、そうだがの……」
師匠が半眼でマリアさんを見ているが、マリアさんはどこ吹く風だな。それはともかく、僕達が売れるのはそんなに無い。
「金鉱石や各種精石は使いますし、薬の材料は師匠に売ってしまいますし……残っているのは木材ぐらいですか。ゴルドウッドとか要ります?」
「あの金ピカ木材? ……うーん、別に悪くはないんだけどねえ。金ピカの何かを作りたい者とか居るし。でも、そこまで需要が無いのよねえ。木像を造るぐらいでしか使われないのよ、アレ」
「一応、木像という活かし方はあるんですね。僕は何も思いつきませんでした」
「まあ、有効活用しないと勿体ないっていう思いから、活かし方が生まれただけだしね。そもそも金ピカだけど金じゃないから然して価値ないのよ。たまにボタンとか、アクセサリーの一部に使ってたりするわね。金色は映えるから」
「ああ、成る程。となるとプレイヤーマーケットに流した方がいいか。誰か使うでしょ。見た目装備とか作ってる人いるし」
「だね。見た目にしか使えなくても、見た目には使えるんだから十分優秀だと思うよ。そのうえ高値にならないんじゃ、買う人は多そう」
「40階辺りだとそこまで良い物は出ないわよね? 確か」
「そうだの。まだ40階付近、そこまで良い物が手に入る階層ではない。それでも首を刎ねようと狙ってくる暗闇ソードは出てくる階層となる。緊張感の強いられる場所じゃな」
「これだから暗闇ダンジョンは嫌われるのよね。汚い虫が蠢いていたり、首を刎ねようと剣が襲ってきたり。話に聞くだけでも碌でもないのが分かるわ。それを越えれば素晴らしい物が手に入るんだけど」
「市場に流す事が出来ん物は素晴らしくも何ともないがな。それに、60階から急激に魔物が強くなる。あそこを突破するのは簡単ではない」
「60階からは死を振り撒く魔物だらけだと聞いた事があるわ。色々な意味で死が近すぎるとね。だからこそ先へと進めた者は殆どいないのだし」
罠は50階から、魔物は60階から強くなるのか。通りで大変だと言われる筈だよ。このままなら順調に進めると思ったんだけど、やはり簡単なダンジョンじゃないらしい。




