0425・復活する者
とりあえずトラバサミが見えるようになったので、その注意だけはしていく。他のも見えるようになれば良いんだけど、どうも今はまだ無理みたいだ。相変わらず暗闇ソードが厄介だが、首に注意して皆は戦っている。
ある意味で一番気をつけなければいけないのは、プレイヤーではなく支配モンスターだ。僕やアマロさんの召喚モンスターは復活するし、プレイヤーも復活する。しかし支配モンスターだけは死ぬとそこで終わりだからね。
主要部分というか、出来得る限り危険な事はしないように言ってある。実際、死んだらそこで終わりは厳しい。その反面、愛着が湧くんだろうけど。それに、他にも優遇されている部分があると思う。
「今のところはよく分からないけどね。それでも召喚モンスターに比べれば不利だから、何かしらあると思ってる。でないと厳しいだけだし、それじゃあねえ。いや、別に厳しくても変わる気は無いんだけど」
「サモナーやネクロマンサーというか、召喚モンスターとの違いでしょ? それは生命力が使えるかどうかに決まってるじゃない。昔に聞いた事だけど、生きている以上は当然生命力を持つわけでね」
「つまり、コトブキが使ったような【生命力操作】を習得可能という事です。当然ですけどね」
「それって、イベントの時のような<死王の欠片>に対抗する手段が手に入る? 逆に言えば、召喚モンスターじゃ手に入らない?」
「擬似生命である以上は無理でしょう。ただ、どのように発展や進化をするか私達は知りません。場合によっては、生命力を使える擬似生命も居るかもしれません」
「確かに<破滅>の召喚モンスターの中には居そうよねえ。どんなのか分からないけど、あいつも自分の手はなるべく人前じゃ出さない奴だからさ」
「ですね。私の言っているのも、あくまで一般論と言うだけです。それに【生命力操作】は結構危険なので、使わないに越した事はないのですが、一度は<死王の欠片>が出てきてますからね……」
「そうそうポンポンと出てくるようなのじゃ無いけど、神々が関わってるんじゃ出してくる可能性、っと! 危なかった!!」
「何をやってるんです、何を。首を刎ねられそうになるなど、本当に元悪魔なのですか?」
「たまたまよ、たまたま。ちょーっとミスしただけじゃない。それに自分でリカバーしたから問題無しよ!」
問題しかないと思うのは気のせいかな? まあ、本人も焦ったみたいだから僕は何も言わないけどさ、気をつけてくれないと困るよ。こんな所で首を刎ねられて死亡とか冗談じゃないし、2人が復活できるかも分かってないんだ。
実際、元悪魔と天使って復活できるのか疑問なんだよね。こちらの人達、つまりNPCである以上は復活不能である恐れがある。できれば慎重に立ち回ってほしいけど、首を刎ねられると一撃だしなぁ。
「まったく。気をつけないと大悪魔に笑われますよ、仮にそうなっても自業自得でしかありませんが」
「それは嫌。大悪魔に笑われるのは流石に腹が立つから、ちょっと真面目に戦うわ。幾らアレが復活させてくれるって言っても、腹立たしい事に変わりはないし」
「あれ? 2人って復活できるんだ。私てっきり死んじゃったら終わりだと思ってた」
「そんな事はありませんよ。代わりに説教など色々受けるので死にたくはありませんが、仮に死んだとしても復活と言いますか蘇生してはもらえます。それも天使と悪魔の特権の一つですね」
「代わりに<死王の欠片>を始め、何かあったら大悪魔や大天使の指示で戦わなきゃなんないんだけどね。それが悪魔や天使になったものの義務みたいなものよ。ま、私達は色々やり過ぎて、反省の意味も篭めて封印されたんだけど」
「混成が出てきたから真面目に戦おうか。皆も首には気をつけるようにね」
暗闇シールドが前に出て、暗闇ソードを僕達の視界から隠そうとする。そんな事をしても【ライトウェーブ】が飛んでいくから、あんまり意味はないんだけどね。貫通してダメージを与えたら、更に【ライトウェーブ】。
これで暗闇ソードには結構なダメージが与えられている。実際どちらも弱点属性に弱いので、そこの部分は助かると言ってもいい。これで弱点属性すら無かったら相当に厳しい事になっていた筈だ。
後は暗闇ソードの動向に気をつけて戦っていれば勝てる。僕は暗闇シールドに対して【ダークウェーブ】を使ったり、【ダークボール】でダメージを与えていく。流石に【ダークジャベリン】は消費高いから、継戦的に使わない。
それでも暗闇シールドはそれなりにダメージを受けるのか後退し、その御蔭で暗闇ソードの位置が分かったりする。暗闇ソードに関しては気付いた人が対処して、囲む感じで戦っている。
つまり2人で囲んだり3人で囲んだり。首を刎ねられる危険性を減らす為にそうしており、敵の数が減ると囲む人数も増えるので安全だ。【闘刃】を固めて攻撃すれば鈍器扱いでの攻撃になるので、それを当てれば十分に暗闇ソードの行動を止められる。
なので首を刎ねられる危険性は格段に減ったのだが、厄介なのが突きだ。どうもちょこちょこ、胴体を突き刺そうとしてくるのが居るんだよ。全員防具を着けているので、おそらく貫通される事は無いと思うんだけど、怖いものは怖いので誰も受けてない。
「っと! あぶねえ!! また突き刺そうとしてきやがったぞ!」
「ごめん、助かった! ありがとう!」
「ナツは気をつける! ショートソードだからって楽に考えてると突っ込んで来る。串刺しにされるかもしれない、だから盾を使う」
「分かってるけど、いきなり来るんだもん! 簡単にはいかないよ!」
「できなければ死ぬかもしれないから、やるしかない。つべこべ言わず、しっかり守る! 前と比べて守りが疎か」
「まあ、いまだに練習中だから、仕方ないと言えば仕方ないんだけどね。とはいえ首を刎ねられたり、貫かれたりする今はそんな事は言ってられないし、ある意味ちょうどいい相手?」
「ちょうどいい相手じゃないかな? 失敗すれば首を刎ねられるか串刺し、それなら緊張感も出るだろうし、対処もしっかり覚えると思うよ。生温いところで努力しても、それは大した事じゃないうえに身にもつかないしさ」
「コトブキが言うと意味が変わってくるけど、言ってる事は正しい。少ない努力で身につくものなんて殆ど無い」
「確かに意味は変わってくるな。コトブキが言う努力は、つまるところ、本気の殺し合いの事だからな。アレは努力とかそういうのを超えてるから、別枠として考えるべきだろ」
「どちらかと言うと達人への道? そんな感じよね。ギリギリの攻防と、ひたすらに自分としての地力が問われるっていう、尋常じゃないの。一瞬でも失敗すれば、そこで死んで終わりっていうね」
「それを笑いながら出来るようになって一人前って言われてもな、流石に狂ってるような領域だぜ? それはそうと、おつかれー」
「おつかれー、じゃなくて、最後は私1人だけだったんだけど? 何で皆ゆっくりしてるの?」
「ナツが自力で敵と戦う必要があったから? 対処出来るように練習するのと、自分で責任もって戦うのは大事。確かに地図を描かなきゃいけないから早く進んだ方がいいけど、それはそれだし、これはこれ」
「何だか納得できない」
実際には戦ってるところを邪魔しない為に、皆は手を出さなかったんだけどね。それと誰かが助けてくれるのに慣れられても、今後ナツが困る事になるし。
424話の誤字報告、ありがとうございました




