0418・暴走のスキルと次の日
<暗闇ダンジョン>前で喋っていても仕方ないので、レイドを解散してマイルームへと飛び、皆を召喚したらワールドへと戻る。いつもの不明な国の首都に飛び、全員と合流したらパーティーを組み師匠の家へ。
ようやく一息吐くと、解散してユウヤはシャルロットさんの屋敷に帰って行った。僕は師匠の家のソファーの部屋に入り、ラスティアとキャスティを呼び出したら、代わりに僕がマイルームへと行く。
精錬作業は終わらせているので、トンファーやヌンチャクにメイスを作り、それらをプレイヤーマーケットに流していく。相変わらずよく売れているし儲かっているのは良いんだけど、需要は満たせていないみたいだ。
仕方がないというのもあるけど、僕と同じ品質を出せている人が居ないらしい。更には品質によって属性ダメージが変わるらしく、高品質が求められている。まあ、この辺りは分からなくもないかな?。
僕は途中でソファーの部屋へと戻り、ファルを召喚してマイルームに戻る。再び作業を続けていると、トモエからメールが来たのですぐにソファーの部屋へ。既にファルが来ていたので今日もギリギリだった。
トモエに感謝を言って食堂に行き、夕食を食べ始めると、師匠はナツを見て怪訝な表情をしている。
「ナツよ、そなた何故【暴走】などというスキルを得ておる? 昨日まで……いや、今日の昼まで左様なスキルなど持っておらなんだであろう」
「これは……私も何故か分からなくて、暗闇ダンジョンの外に居て、気付いたら持ってた?」
「ナツは暗闇ダンジョンの中で暗闇Gに耐えかねて暴走してた。とにかく抹殺しようとして暴れたりしてたし、今日は私達が必死に抑えてたから、何とか突破できたようなもの」
「本当に酷かったわ、そのうえ本人に殆ど記憶が無いんだもの。あれだけ抑えてたのにね。ま、次からは暗闇Gは出てこないからいいんだけど、私達よりも遥かにダメだったみたい」
「そうでしたね。今日は最初から暗闇Gが出るって分かっていたからか、昨日よりもダメだったようです。私やイルさんにトモエさんは、昨日である程度慣れたというかマシになったのですが……」
「成る程、ナツは今日の方が暴走したという訳か。それで【暴走】というスキルを得たというのも面白いのう。上手く使えば役に立たん訳ではないところが、厄介なスキルじゃ」
「やはり役立てる事は可能なんですね? 僕もソロで戦うなら何とか、仲間と戦う時には難しいと思いましたけど……」
「そうじゃな。仲間とおる時には使わぬ方が良かろう。仲間がおらぬのであれば3割の強化は魅力的だと言える。ただ、魔物を把握しておかねばならんがの。ブレスを吐いてくる者などは、暴走していたら殺されるでな」
「それはそう。暴走している者から離れて、ブレスで焼き殺されるだけ。理性というは往々にして、あった方が強いもの」
「そうじゃ。理性の無い獣は、それはそれで強いがの、相性というものがある。暴走するような暴力で圧倒できぬ者もおる事は、覚えておかねばならん」
「そもそも私自身、これを使おうとは思っていないです……」
「それはそれで勿体ないと思うが……暴走にとっては状態異常も天敵じゃの。回復する事も叶わず暴走を続けて死ぬかもしれん。ま、どんなものでも使いよう、どう使うかが重要。そこまで使ってみれば良いと思うぞ? 稀人なのだしな」
「死んでも復活するものね。なら死の危険があるスキルも使い熟せるかー。それが良いか悪いかは知らないけど」
「ですね。何度も死ぬような努力というのも、それはそれでどうなのかと思いますし」
現実的に考えるとそうなんだけど、それをするのがプレイヤーというかゲーマーな訳で……。僕が<BUSHIDO>でやってる事も同じなんだよね。ひたすらに殺されながら腕を磨くって事だから、普通じゃないんだよ。
昔の人なら絶対に出来ない事をやっている訳だし、昔の人がゲーム内のNPCでプレイヤーが現代人でVR? ………あんまりこの辺りは考えない方が良い気がするな。何だか思考の迷路に入りそうな気がする。
夕食を終えたらマイルームに戻り、そのままログアウト。ラスティアとキャスティは今日も飲むらしいので捨て置く。酔っ払いに絡まれるのも嫌だしね。
お風呂や夕食に雑事を終わらせたらログイン。残っている作業を終わらせプレイヤーマーケットに流したら、訓練場に行き皆の武器と盾を交換する。予備をちょこちょこ作ってたんだけど、そろそろ交換時期が来てるからね。
ついでに訓練場で訓練をし、納得できたら囲炉裏部屋に戻ってログアウト。本日はここまで。
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2000年 11月13日 月曜日 AM8:17
今日も元気にログインなんだけど、昨日の今日でナツは大丈夫だろうか? 情緒不安定とかは止めてほしいので、治っている事を祈ってログイン。
囲炉裏部屋に着いた僕はファルに挨拶し、ソファーの部屋に出るとファルを召喚してから皆に挨拶。ナツも居たし、いつもと変わらないっぽいので安心した。
「おはよう、コトブキ君。そんなに見てこなくても大丈夫だよ。昨日はおかしなスキルも貰っちゃったけど、今日からは出てこないからね!」
「おはよう、コトブキ。ナツは大丈夫、回復してる。本人の空元気じゃないから安心していい」
「おはようございます。おそらく大丈夫だと思いますし、行かなくてもいい以上は、ストレスも無いと思います。まあ、別のストレスはあるかもしれませんが……」
「今度の階層では何が出てくるか分からないものね。とはいえ、今日からはやっとガチャでしょ? 40階の地図も描いて、採取できる場所を調べておかないといけないわね」
「皆、おはよう。そうだね、トモエの言う通り40階を回って地図を完成させようか。でないと何処で採取活動が出来るか分からないし」
どうやらナツは安定しているみたいで助かる。ま、G地帯にはもう行かなくて良いんだし、そりゃ安定するか。昨日は過大なストレスが掛かっただろうから怖かったんだけど、無事で何よりだ。
そのまま当たり障りない話などをしていたら、ファルが呼びに来たので食堂へ。師匠とラスティアにキャスティが居たので挨拶し、朝食をいただく。
「今日からやっと暗闇ダンジョンで採取活動だよ。40階までは必死だったけど、ここからやっと色々手に入れられる」
「そういえば採取したり採掘したりがメインだったのを忘れてた。行けるなら更に先へ行っても良いと思うけど、そこの辺りはどうなのかしら?」
「流石に40階以降は厳しいのでは? それでも行けるなら行って良いとは思いますが……どうでしょう、行けますかね?」
「難しいところじゃの。40階の魔物と戦ってみて、行けそうなら行っても良いのではないか? ただし50階からは罠が厳しい。流石にそこで止まる事になろう。そなたらまだ罠が発見できんのであろう?」
「そうですね、まだ無理です」
「それでは50階以降は難しいと言わざるをえぬ。もちろん、だからこそ50階まで行き、そこで罠を見極めるというのは良い事だがな。だがそれをするならば、まずはそこまでの罠を発見できるようになってからだ」
となると、50階までと50階以降で発見の難易度も違うって事か。50階までの罠も発見できないのに、50階以降に行っても仕方ないな。まずはしっかり罠が発見できるようになるのが先だ。
でないと50階以降の罠は悪辣らしいし、もしかしたら罠で全滅するかも。




