0413・暗闇ダンジョン20階
「今日はどうであったのだ? 無事に20階に辿り着いたか?」
「無事に20階に辿り着いたけど、まだまだこれからよ。それにコトブキ達の【罠発見】スキルじゃ、いまだに罠が見抜けないみたい。今まで碌に使えてなかったみたいだから、仕方ないようだけど」
「そうですね。それに今日は<ライフドレイン>の罠も踏んでしまいました。あれがあるのでは瀕死戦法はとれないとコトブキは言っていましたね。まあ、納得ではありますが……」
「ああ、あの罠か。確かにアレが分からぬのであれば、迂闊に瀕死にはならぬ方が良いな。踏めばその時点で死亡する。流石にそれは出来まい。<ブラックウェーブ>も問答無用で受けるしな」
「そうね。他にも<爆発壁>とかもあるし、<火炎壁>の罠に<氷結爆>、更には<炎熱通路>や<電撃通路>の罠もあるわ。ああいうダメージを受けやすい罠って厳しいけど、<破滅>はどうやって瀕死戦法をとらせる気だったの?」
「コトブキは【爆力】というスキルを持っておるであろう。ならば本当に危ない罠や避けられぬ罠に踏み込む前に、回復すれば良いであろう。その後に再び瀕死になれば済む。生と死の際を知る事は重要な事ぞ」
「そんな危ない事をしてどうすんのよ、<破滅>じゃあるまいし」
「妾の弟子なのだがな?」
いやいや、そんな危ない事を何故弟子に薦めますかね? と思うものの、もしかしてそれをするとスキルが手に入る? でも罠が見つけらない今は怖いんだよな。それに皆に迷惑掛かるのは確定してるしね。
戦力的な事も然る事ながら、一番は、僕が転移札を持ってる事だ。つまり僕が居なくなると帰る事すら難しくなってしまう。流石にそれはマズいんだよねー。だからこそ僕が死ぬ訳にはいかないし、だからこそ危険は冒せない。
せめて罠が見えるようになったらやってもいいけど……いや、1人で行く時以外は無理だな。せめて<暗闇ダンジョン>以外では瀕死戦法をとろう。
夕食の終わった僕達はソファーの部屋へと行き、マイルームへと移動。師匠とお酒を飲むラスティアとキャスティを放っておき、囲炉裏部屋でログアウト。現実へと戻る。
お風呂や夕食に雑事を終わらせたらログイン。再び囲炉裏部屋に戻ってきた僕は物作りを行う。残っていた材料で適当に色々作り、それをプレイヤーマーケットに流したら終了。本日はここまで。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2000年 11月11日 土曜日 AM8:01
今日はちょっと早かったけど、特に何か理由がある訳じゃない。ちょっと早起きしたから、早くに雑事が終わっただけだ。今日もログインして午後からは<暗闇ダンジョン>の攻略だけど、果たして30階まで行けるんだろうか?。
まあ、悩むのは行ってみてからにしよう。という事で本日もログイン。
囲炉裏部屋に来た僕は、ラスティアとキャスティとファルに声をかけ、ソファーの部屋へと移動したら3人を呼ぶ。その後、女性陣に挨拶してソファーに座ると、掲示板を確認する。
ラスティアとキャスティが増えて更に姦しくなっているのはスルーし、僕は主にマーケット板を確認。昨日僕がブラックリストに入れた奴等の話が書き込まれていた。
………成る程なー。プレイヤーマーケットで転売なんてしても意味はないけど、直接取引きでやっているバカが居るらしい。この事で運営にクレームを入れた人達が居るみたいだけど、運営はそこの取り締まりはしないとの事。
クレームを入れた人は腹を立てたらしいけど、直接取り引きで転売してる連中は、悪行度が跳ね上がっているらしい。つまり、これから色々な場面で不利になっていくそうだ。その説明で溜飲を下げたみたい。
確か善行度と悪行度って色々な所で関わってくるんだった筈。一時の利益の為の転売で、今後のゲームが大変になるのか。それはそれで十分な罰な気がするなぁ。
運営も良い人で居ろなんて言ってない。悪行をするなと言ってるだけだ。おそらくだけど、善行も悪行も大した事が無くても、普通にゲームをする事は可能な筈。
言い換えると、普通にゲームが出来なくしているのは、他ならぬ悪行をしているプレイヤー本人という事になる。どう考えても自業自得でしかないし、これから苦労をしても誰も同情しないね。
ファルが呼びに来たので朝食にし、終わったらマイルームに皆を戻して師匠の家の前へ。ユウヤと合流したら魔隠穴へと行き、採掘をしていく。終わらせたら豪雪山とバイゼル山へ。
ここでも採掘を終わらせたら戻り、ファルを呼び出したら、ソファーの部屋からマイルームへ。皆からの買取を終わらせ、精錬作業に取り掛かる。それが終われば、半分をユウヤに流して終了。
ソファーの部屋へと移動すると、すぐにファルが呼びに来た。今日もギリギリだったな。
昼食を終わらせた僕は、ラスティアとキャスティとファルをマイルームへ戻してログアウト。現実での昼食と雑事を終わらせたら、再びログイン。
師匠の家の前で待っていると、全員が集まって合流したので<暗闇ダンジョン>へ。昨日と同じく着いたらパーティーを解散し、編成し終わったらレイドを組む。今日は魔法陣が3つ並んでいる。
それも縦に並んでいるので、先へ進むほど奥に歩いていく事になるんだろう。暗闇の中なので怖いが、魔法陣は輝いているので大丈夫だと思おう。
最奥の魔法陣に乗ると20階に到着。そこから再びスタートだ。
「今日も急いで攻略しなきゃならないが、大丈夫か? ここからは魔物が変わるんだろ?」
「まだこの辺りなら大丈夫じゃない? キャスティも言ってたけど厳しくなってくるのは30階以降よ。あそこから罠の種類も急激に増えるから」
「そうです。<爆発壁>などが出てくるのも30階以降なのですよ。気をつけないと罠で苦労します。それでもこまめに回復すれば突破できるでしょうが、その分の魔力は消費しますので……」
「MPはなるべく節約したいところ。無理をすると碌な事にならない」
誰もがそれは分かってるんだけど、そう簡単には行かないのがゲームだと思うよ? ………お、新しい魔物が出てきた。
―――――――――――――――
<暗闇トカゲ> 特殊魔物 Lv54
暗闇ダンジョンにのみ生息する特殊な魔物。全身が黒く目だけが赤いのが特徴。非常に厄介な魔物であり、群れの数が多い。体が大きいのでそこまで攻撃を当てるのに苦労はしないが、素早い噛みつきに注意しよう
―――――――――――――――
「今度はトカゲかと思うが、レベル高いなー。そろそろ俺らより高いんじゃねーか? 流石にこれらの群れを倒しながら進むのはキツいな。やるしかねーんだけどさ」
「本当にね。グチグチ言わずにこっちも数の暴力で押す」
「お、おう……。そうなんだけど、ハッキリ言うなぁ」
体が大きいので首を狙いやすく、少々踏み込む必要があるけど呆気なく終了した。それでもネズミやウサギよりは厄介だ。気を取り直して進んでいると、再び初見の魔物が現れた。
―――――――――――――――
<暗闇ヘビ> 特殊魔物 Lv53
暗闇ダンジョンにのみ生息する特殊な魔物。全身が黒く目だけが赤いのが特徴。非常に厄介な魔物であり、群れの数が多い。体が大きいのでそこまで攻撃を当てるのに苦労はしないが、代わりに音が殆どしないので不意打ちに注意しよう
―――――――――――――――
「うわ!? ヘビだ!!」
「これは面倒臭い。今までと違って攻撃が当てにくい。上手くやらないと倒せないし、ヘビは無駄にしぶとい事が多い」
無駄にって言い方もどうかと思うけど、言いたい事は分かる。ここは素早く範囲魔法でダメージを与えるか、闘気バインドで止めて首を刈るのが正しい戦法だろう。




