0407・師匠の家に帰還と雑談
10階では転移登録の黄色い魔法陣と、脱出用の赤い魔法陣が同じ場所にあった。これは意図的にそうなっているのか、それとも偶然こうなっているのかは分からない。とはいえ、今の僕達には都合が良いので脱出する。
<暗闇ダンジョン>を出た僕達は、マイルームへと飛び皆を戻すと、再び<暗闇ダンジョン>前へと転移する。すると、何だかよく分からない町並みの場所に立っていた。
いったいどういう事だと困惑するも、よく考えればセーフティエリア以外でマイルームに戻ると、その地域の国の首都に飛ばされるんだった。ここが何処の国か分からないが、ちょっと見て回ろうかな?。
<暗闇ダンジョン>とは違い、暗くも無い町中を見て回る。特に誰か知り合いが居る訳でもない中を散策するのも良いかもしれない。そんな事を考えていたんだけど、今が夕方近い事を思い出す。
僕は慌てて誰も見ていないであろう路地に入り、師匠の家への転移札を使い転移した。あそこが何処の国かより、やるべき事をやらないとね。それにマイルームで皆待ってるだろうし。
師匠の家へと飛んだ僕は、修羅スケルトンなどに挨拶してから師匠の家へと入る。中に入り、いつものソファーの部屋へと行くと、皆が居て楽しくお喋りしているようだった。
僕は挨拶だけしてすぐにマイルームへ。ラスティアとキャスティとファルに声を掛けると、ソファーの部屋へと戻り3人を呼び出す。それが終わった後は、掲示板などを見ながら情報収集を始める。
「コトブキ、今日ランダムガチャのダンジョンに行ったみたいだけど、どうだったの? 良い物は出た?」
「出る訳ない。師匠の100階はまだしも、急いで移動して10階に行く事は出来たよ。そこで転移登録が出来たんで、次からは10階スタートだけど……」
「10階でも良くない感じ?」
「良くないっていうより、採取なんかは1階でしかしてないから分からないってトコかな? 1階で採れたのは採掘だと殆ど石、伐採だと殆ど若木、採取だと殆ど雑草だったね」
「殆どという事は、少し良い物が出た?」
「そんな事はありませんよ。採掘では銅鉱石、伐採では堅木、採取ではアール草ぐらいです。使える物ではありません。ある程度の深さまでは進まないと、とてもではありませんが、まともな物は手に入らないでしょう」
「そんなにキツいの? 何か行く意味が無いっていうか、苦労のし甲斐が無さそうな場所ねえ……。敵はどうだった?」
「経験値もくれない癖に、群れてて面倒だったよ。【光魔法】が良く効くけど、【闇魔法】じゃなきゃ効く感じかな。とにかく【闇魔法】の効きは頗る悪いから注意した方が良い」
「<暗闇ダンジョン>っていうくらいだから当然だろうけど、【光魔法】が弱点なら、まあ何とかなるかな……?」
「それはともかく、魔物の詳細は? どんな魔物が出て、どういう風に襲ってくる?」
「最初に出たのは暗闇ネズミ。レベルは48だけど、魔法を上手く使うとそこまで強くないね。でも体が大きいから武器で倒した方が早いし、首を落とせばすぐに終わる」
「次は暗闇ウサギでレベルは51ね。跳躍力が高く、凄い速さで突撃してくるわ。シグマの盾にぶつかった時に「ガァン!」って鳴ったくらいよ。それも大きいから首を刈れば終わるわね。怖いのは突撃くらい」
「5階から登場するのが暗闇リスでレベル48、これは小さく群れているのが特徴です。黒い木の実を投げてくるのですが、これが結構なダメージを受けます。ただし生命力が低く、【ライトウェーブ】2度で瀕死か死亡ですね」
「ならそこまで強くない。上手く魔法を使えば倒せるだろうけど、【光魔法】持ちが居ないと厳しい気がする。それと盾持ちが居ないと防げない場面が多そう。罠の事も考えるとパーティー編成必須でソロは無理?」
「サモナー系とテイマー系以外は無理だと思う。とにかく敵が群れてて、1体しか出ないって事は絶対に無い。必ず群れで出現するし、その頻度も結構高いんだ。思ってる以上に連戦が厳しい」
「ただし、<暗闇ダンジョン>の魔物は1度倒すと出てこないのよ。だから倒しては回復、倒しては回復で進む事も出来るの。かなり無駄な時間が掛かるから大変だけどね。それでも、そうやって攻略する事は可能よ」
「自然回復かぁ。コトブキ的にはどんな感じ? 自然回復で行けそうなのか、それとも無理か」
「難しいね。とにかく魔物を蹴散らせる何かが無いと進めないのは間違いない。途中でトイレとか行けないし? 相当の準備をして駆け抜けないと駄目かな? それか地図を描きながら地道に攻略するか」
「ランダムなので変化したら地図の描き直しですけどね。それでも、攻略法としては地図を描くのが正しいでしょう。地図を描かなくても力で押せるのは、おそらく30階ぐらいまでですよ」
「1階の敵のレベルが48とかなのに、30階まで行ったらレベル100とか出る?」
「流石にそれは無いわよ。随分昔の事だから覚えてないけど、そんな高レベルじゃなかった筈。それこそ、もっと先に行かないとレベル100なんて出ないでしょ」
「それなら何とか行けるかな? コトブキに連れて行ってもらえば私も行ける。ランダムガチャは良さそうだし、色々経験が積めそう。魔隠穴と同じ匂いがする」
「言いたい事は分からなくもないけど、経験値は手に入らないよ? 代わりに罠が多いから【罠発見】は上がってるだろうけど。それとスキル関係は普通に伸びるのかな? 師匠は経験は出来るとか言ってたから……」
「その辺りは重要になりそうね。特に罠ってあまり多くないし、今までも大して活躍していないスキルなのよ。ただ、これからの事を考えたら、悪く無いと思う。罠って何処で出てくるか分からないし」
「それはそう。いきなり罠だらけのイベントとかを仕掛けてくる可能性は高い。運営は性格が悪いから常に警戒するくらいで丁度良い。でないと足を掬われる」
「ここの運営だと可能性高いのよねえ……おっと、呼びに来たみたい」
ファルが来たので食堂へと行く。既に師匠が居たが、話しかけられたので素直に答えた。
「それで、今日は<暗闇ダンジョン>に行ってみたか? 作らせるだけ作らせておいて、結局行かぬとなれば無駄な手間を掛けさせられた事になるからの。たとえ、ついでであったとしてもな」
「今日行きました。とりあえず10階までは行けましたけど、中に居られる時間にも限りがありますし、何度も何度も進むのは骨が折れます。浅いと碌な物が手に入りませんし」
「それは仕方あるまい。あそこはそういう場所だからな。全てが集まる場所ではあるが、何が出るかは皆目見当もつかぬ。あそこでは金すら採掘できるからの」
「えっ!? 金が出るの!?」
「うん? 知らなんだのか、ラスティアは。あそこでは金が出るぞ。殆どの金鉱脈は何処かの国が押さえておるが、あそこでなら金は手に入るのだ。妾が一時期<暗闇ダンジョン>に足繁く通った理由じゃの」
「成る程、錬金術の腕を磨く為ですか。なら僕もそうした方が良いですね。金なんて手に入りそうもないですし」
「通貨の偽造は止めるのだぞ? 神どもが出張ってくるからの。錬金術の腕を磨く為なら何も言ってこんがな」
「はい、流石に犯罪を行ったりはしません」
やっぱりそういう罠があるよねえ。元々やる気は無いし、善行度と悪行度があるんだから犯罪なんてする訳がない。
しっかし確認なんて碌にしてなかったけど、気付いたら善行度が500を超えてるなぁ………何かしたっけ?。




