0402・暗闇ダンジョンとは?
2000年 11月7日 火曜日 AM8:19
雑事も終わったのでそろそろログインしよう。今日も素材を集めに行くんだけど、今日こそは<暗闇ダンジョン>へ行ってみようと思ってる。どんな所かは行ってみないと分からないけど、厄介な場所なんだろうなーとは思う。
囲炉裏部屋に来た僕は、ファルとキャスティの作った物をプレイヤーマーケットに流して売り上げを回収する。属性金属で作った物は綺麗に無くなっていたけど、そこまで売れるものか? という疑問はあるんだよね。
魔鉄系の属性金属は属性効果が低いし、魔銀系の属性金属は武器として弱い。ここの折り合いがつかないので、なかなかに強力な武器にはならないんだよね。まあ、武器としても属性効果も強力な武器なんて、早々ないとは思うけどさ。
プレイヤーマーケットに売っている料理の幾つかと、運営マーケットでお菓子を買い足して倉庫に詰めておき、僕はラスティアとキャスティに声を掛けておく。その後ファルにも声を掛けてソファーの部屋へと移動し、3人を呼び出した。
相変わらず姦しい4人が居たので挨拶だけをしておき、僕はソファーに座って掲示板を確認する。ファルが呼びに来るまで時間を潰し、呼びに来たら食堂へ。
席に座り朝食を食べ始めると、話の流れでスキルの事を聞かれた。
「コトブキよ。お主が言っておった、よくわからぬスキル。あれは使ってみたか?」
「よく分からぬ……ああ、【爆力】の事ですか? あまり使えそうなスキルではないので、使っていませんが………。あのスキルに何かあったりします?」
「スキルそのものの事ではない。昔の知り合いに、意図的にケガを放置する輩がおったのを思い出したのだ。魔物というのは弱っている者を狙う習性がある。それを意図的に利用していた者だがな」
「いや、まあ、言いたい事は分かるんだけど、何その頭のおかしい奴は? 意図的に怪我を放置するって、頭がイカれてるとしか思えないんだけど……」
「ネクロマンサーの割には根性論を言うヤツだったのだが、それはよい。それよりも【回復魔法】で回復できるからと意図的にケガを放置し、自身に攻撃を集中させて、その間に召喚モンスターに倒させる。そんな戦法を使った事があったのを思い出してな。お主なら出来よう?」
「……成る程、それで【爆力】を使えという事ですね。確かに捌ける魔物であれば、僕が囮になる戦法は上手く使えるでしょうけど……。稀人でもないのに、その人は囮戦法を行ったんですか?」
「うむ。永き時の中には頭のおかしいヤツもおるでな。それをふと思い出したのだ。稀人ならば死んでも復活するうえ、コトブキの技量であれば最低限は熟せるだろうとな。ヤツは………確か本当に死にかけて止めた筈だ」
「それはそうでしょう、としか思えませんね。様々な戦法を編み出そうとする者は居ますが、その人物は極め付きだとしか思えません。必要とあらば己を犠牲にしようとするとは……」
「そのうえ死にかけてるんじゃ、何の意味も無いでしょうにね。何がしたかったのかサッパリよ。確かにコトブキみたいに稀人なら分からなくもないけど、復活出来る稀人でも厳しいと思うわよ?」
「それでも<暗闇ダンジョン>なら役に立つと思わんか? あの魔物だらけの場所ならば、な」
「あー、それは確かに」
「「「「「魔物だらけ?」」」」」
何やら不穏な言葉が聞こえてきたね。魔物だらけなんて聞いてないよ? <暗闇ダンジョン>って暗闇なうえに魔物が大量に居るの? 流石にそれはシャレにならない……んだけど、良い訓練になるだろうか?。
「確か<暗闇ダンジョン>って魔物が強いんじゃなかったっけ? それで僕なら何とかなる……的な話だったと思うんだけど、そのうえ大量に魔物が居るって聞いてないよ?」
「あれ? 言って無かったっけ? <暗闇ダンジョン>って曲がり角とか結構あってさ、その向こうに魔物が居たりするのよ。そのうえ行き止まりに木が生えていて伐採できたりとかね」
「「「「「???」」」」」
「訳が分からないという顔をしていますが、本当に訳の分からない場所なのですよ。通路を通っている最中に、急に採掘場所が現れたり、階段横に採取場所があったり。意味不明なんです」
「そのうえ通路を曲がったら大量の魔物が居て、そいつらに追い駆け回されたりとかね。非常に厄介な場所なのよ。魔物も当然強いんだけど、深く潜れば潜るほど魔物の数が増えるの」
「そのうえ何故かは分からぬが、中で他人に会う事が無いのだ。妾とて<暗闇ダンジョン>の中で、他の者に会うた事はない」
「「「「へー……」」」」
天然のソロ専用ダンジョン……っていうか、インスタンスダンジョンなのかな? それはともかくとして、狭い場所で大量の魔物に追い駆け回されるとか、また厄介な場所を作ったもんだ。
そのうえ何が手に入るか分からない場所ときてるし、本当に面倒な場所だよ。深く潜って良い物を手に入れても、また一から進まなきゃいけないんだろうし……。
「そういえば<破滅>って何処まで行けてるの? あそこ転移魔法陣があったでしょ。それで移動していけた筈よね?」
「妾が行けるのはⅩの転移魔法陣までじゃな。あそこは10階層を降りる毎に転移魔法陣に登録出来るからの、妾はそこで面倒になって帰った。どのみち何が手に入るか分からんのではな?」
「つまり100階ですか……どれだけ進んでいるのかと呆れればいいのか、それとも其処まで行っても先がある事に驚けばいいのか……」
「別に驚く事では無いぞ? 慎重に立ち回りながら進めば、そこまでの危険は無い。あそこは中の魔物を駆逐すれば安全に進めるからの。1体1体を確実に始末し、なるべく少数の魔物と上手く戦えばよいのだ」
「その為には相当の腕前の斥候役が居なければ無理ですが、ネクロマンサーですもんね。召喚モンスターに任せればいいだけですか……」
「それでもよ? それでも100階はメチャクチャだわ。キャスティじゃないけど、どっちに呆れればいいのか、どっちに驚けばいいのか分からないわね」
「ご本人は誇るでもなく、おそらくどうでもいいのでしょうが……前人未到の記録でしょうね。私でさえ聞いた事が無いです」
「頭のおかしいヤツが、頭のおかしい事をしただけとも言えるけどね。それぐらいのレベルの事をやらかしてるんだけど、本当に自覚無さそうね?」
「自覚も何も、妾にとってはどうでもよいのでな。そもそもどれぐらい潜れば良い物が手に入るか知りたかっただけぞ。たまに行っては適当に採ってきておるが、あまり行くべき所ではないな」
「そこまで行っても良い物が出ないの?」
「逆じゃ。あそこまで行って手に入れた物は使い勝手が良くないのだ。真魔結晶を手に入れてどうする? と言ったところじゃの」
「「うわぁ………」」
師匠がいう100階は何だか凄い物が手に入るらしい。とはいえ<しんまけっしょう>ねえ……どういう字を書くかサッパリだ。他にも手に入る物とかあるんだろうか?
「他か? 天魔鉱やら、降魔石、六浄砂に、羅漢岩も手に入るの。あれらも市場に出す物ではないからな」
「それ以前に<破滅>以外は扱えないでしょ! それ<天魔星鋼>や<降魔聖銀>、<六浄真鉄>に<羅漢仙銅>の原料じゃないの!? 何で伝説級金属の材料まで出てくんのよ!!」
「そんな事は妾に言われても知らんな」
伝説級金属ってそんな名前なんだ。てっきりオリハルコンとかかと思ってたよ。違うんだね。




