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0399・運営さん達28




 2000年 11月2日 木曜日



 『プレイヤー<コトブキ>が<破滅のエンリエッタ>に属性金属の作成方法を質問しています。属性金属の作成に着手すると思われますが、レベル的には品質7を超えられないでしょう』


 「そうか、彼が属性金属にな。……それにしても品質7か。微妙なトコだな。属性金属は品質が上がる毎に威力が変わるからなぁ。それに効果も」


 「そうですね。品質7だと最高でも大ですね。特大にはいきませんし、道具の方の効果も大には届きません。まあ、今のところ作り出せるのは魔銅、魔鉄、魔銀、魔金の4種。それの属性金属だけですから」


 「まあ、そうなんだがな……。流石の彼でも、まだ聖金属にまでは届かないだろうし、真金属はもっと無理だろう。……無理だよな?」


 「聖魔銅とか、真魔銅とかですか? そもそも材料が足りないので流石に無理だと思いますけどね。あれらはダンジョンの奥深くに行くか、それとも星の僻地へと行かないと素材が手に入りません。それにまだ解禁して……ませんね」


 「それなら大丈夫か。いやー、この辺りから色々出てくるからなぁ。普通のRPGで言えば中盤に入ったくらいだ。色々な種類の武器や防具が出てきて悩む時期に入る。プレイヤーも悩むだろうと思っているが、聖と真はなー……」


 「悩むどころか、それさえ持ってれば普通にクリアしていける装備ですね。聖金属も真金属も強力ですから。でも、何で基本は銅、鉄、銀、金にしたんです? もっとファンタジー金属にしても良かったのでは?」


 「単純に言うと、管理する側の問題だ。つまり我々が管理するのに不便だからこうなってる。各AIやセントラルに任せれば間違ったりしないが、我々が把握し辛い意味は無いからな。それで基本4種に色々した形にしてある」


 「そういう理由だったんですか。まあ、分からなくもないですし、管理が楽な方が助かりますけど……夢は無いですね。効果的には夢がありますけど」


 「道具にした場合の効果か。これもなぁ……結構色々悩んだんだよ。NG喰らった効果も多いしな、例えば【回復強化】とか。それが溢れて氾濫するからって言われて却下されたけど」


 「まあ、このゲーム回復方法に乏しいですからね。だからこそ慎重に立ち回る者が多いんですし。普通のゲームならポーション使いまくりで強引に進んでるんじゃないですかね? このゲームじゃ無理ですけど」


 「【回復魔法】で回復できるとはいえ、それにも限度があるし、何より病気関係と毒がな。もちろんワザとああいう風にしてるんだが、あれも結構な猛威をふるってるみたいだ。予想した通りではあるけども、ちょっと強いか?」


 「毒のレベルと病気のレベルは、なかなかにキツいみたいですね。レベルが高いと現状の【回復魔法】じゃ治療できませんし、その毒や病気を治療する薬は高いですし。挙句の果てには、1段階落とすだけですから」


 「そもそも本来は毒や病気って厳しいものなんだよ。ゲームだからってポンポン治るのはおかしいだろ? だから大変にしておいた。そもそもレトロゲームの中には、毒のレベルがあるゲームも在るからなー」


 『確認したところ、プレイヤー<コトブキ>が聖金属や真金属を作成できる可能性はあります。材料となる聖結晶、あるいは真魔結晶を得る可能性として、<暗闇ダンジョン>を探索すれば入手可能です』


 「あのランダムダンジョンか!? ……成る程、深くまで潜ってランダムならば、可能性として無い訳じゃない。しかし……彼の実力でそこまで潜れるか?」


 「そんな事を言ってたら、彼、行っちゃうんじゃないですか? だって戦闘狂でしょ? あそこ、深く潜れば潜るほど強い魔物が出てきますし、彼ならむしろ喜んで突撃しませんかねえ」


 「そんな怖い事を言うなよ。一応<暗闇ダンジョン>は解禁されているとはいえ、あまり話題にもなってない場所だからな。そこまで掲示板にも書かれてないし、今のところは問題ない。あそこはそもそも運の要素が大きいからな」


 「一応は転移魔法陣が使えますけどね。でも……あそこの転移魔法陣が使える階層まで、彼なら行きそうな気もしますし、難しいところですか。場合によっては聖結晶ぐらいなら手に入れるかも」


 「おいおい、勘弁してくれ。彼が<暗闇ダンジョン>へ行ったら、彼だけ突出してしまわないか? 今のところ下らない嫉妬じみたものが幾つか届くだけだからいいが、彼だけが聖金属を手に入れられるってなったら騒ぐ輩がなぁ……」


 「それはそれでいいんじゃないですか? 後から参戦したプロゲーマーが色々やらかしてくれてますし、中身がスカスカで面白い事になってますよ」


 「あれもなー……。我々が最初に想定してたのはアレなんだが、何で第4陣で参戦したプロゲーマー連中が引っ掛かってるんだ? むしろ第1陣が引っ掛かるべきだろ」


 「あれは多分、早々に弟君が発見し、周囲の知り合いが拡散した所為でしょうね。だから第1陣の方が慎重ですよ。色々な事を探り探りやってますし、我々運営を信用してません」


 「それもそれでどうなんだと思うが、色々隠してるしなぁ。地雷が敷かれてるとなれば慎重にもなるか。そして第1陣から第3陣が地雷を撤去してくれてると思ってる第4陣が好き勝手にやってる、と」


 「そんなところでしょうね。別に悪いとは思いませんけど、奇妙な捻れ現象だとは思います。その所為か第4陣の一部の者達は、プロゲーマーの配信は見ずに掲示板で情報集めをしている者もいますよ」


 「ふーん。そっちの方が正解だが、世の中と似てるのが面白いな。大多数が間違いに流れても、一部の冷静な連中は正解を探すからな。そういう連中こそが本当に得をする者達なんだよな」


 「何かを得る為には、冷静でなくちゃいけませんからね。大衆として流されてると、いつまで経っても真実には辿り着かないもんです。ま、中には勘違いして陰謀論にのめり込む連中もいますけど」


 「あれらは冷静からは一番遠い連中だ。自分がカルトじみたものに熱狂しているという自覚も無いんだからな。間違ったプロゲーマーを鵜呑みにし続けるのも同じさ。冷静からは一番遠い」


 『プレイヤー<コトブキ>が運営ダンジョン36階へと踏み込みました。攻略を開始するようです』


 「おっと、話がおかしな方向に行ったから戻すか。それはともかく、弟君が再びジャングルにな。なかなか大変だとは思うが、少なくとも一度は停滞する筈だ。それで何とか押しとどめられるか?」


 「流石に一度は気付かずに40階に行って、死ぬとは思いますけど……彼の場合、森の中で死んだりはしないでしょう。ネクロマンサー云々ではなく、森の魔物は毒狙いでしかありませんし」


 「まあ、あそこはウロウロさせるのと、その間に毒で始末する事を考えた布陣だからなぁ。たとえ正解の方法を知ったとしても、北へ行って戻るという事をしなくちゃならない。そこで毒は効くだろう」


 「慎重に立ち回れば受けずに済みますけど、なかなか大変でしょうね。特に毒蛙。舌が体に付くと高い確率で毒ですから」


 『プレイヤー<コトブキ>が2種類の草に気付きました。それを元に下り階段へと行き、撤退したようです』


 「おっと、彼が第1段階に気付いたらしい。わざわざ2つの引っかけが用意されてるんだが、彼は2つ目に気付くかな?」


 「蛙戦隊ですか? 流石にあれは1度40階に行ってからしか気付かないと思いますよ。条件を満たさないとボスと戦う事すら出来ないパターンですけど、レトロゲームには多いですよね、こういう理不尽」


 「本当にな。どれだけ純朴な少年の心を折ってきたと思っているのやら。あの時代のゲームは本当に根性が悪い」


 「………」


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