0390・久しぶりのウェズベア森と屍人の森
豪雪山とバイゼル山で掘った僕達は戻り、ファルを昼食の手伝いに行かせた。素材を掘ってくるのにも時間が掛かるし、<暗闇ダンジョン>とかいう場所はお預けだね。行く暇が無い。
「まあ、それは仕方ないんじゃない? そもそも行かなきゃいけない場所でもないし、気が向いた時に行けば良いと思うわ。あそこも結構ヤバい場所だし、それなりに覚悟する必要があるしね」
「<暗闇ダンジョン>は暗闇も然る事ながら、出てくる魔物も強力なんですよ。コトブキなら戦えるでしょうけど、そう何度も戦えないかもしれません。それでも1階ならば問題ないと思うのですが……」
「そんなに魔物が強いダンジョンがあるんだ……。私達には早いだろうし、行かなくてもいい場所みたいだね」
「でもあそこ宝箱があったりとか、色々な物が採掘できたり採取できたりするのよ? 伐採だって出来るし。でも何が手に入るか分からないのよねー。不思議な事に」
「??? ……どういう事?」
「あのダンジョンでは手に入る物がランダムなのです。黒い木を伐採したら、普通の樫の木であったりグリーントレントであったりと、同じ場所でも手に入る物がバラバラなんですよ」
「それは………もしかして良い物が欲しければ、ひたすら通うしかない? おそらくランダムと言っても幅があるんだとは思うわ。そうじゃないとメチャクチャだもの。いきなり超レアな物が手に入るのも変だし」
「ん。ランダムだと欲しい物がなかなか集まらないうえ、そこでしか出ない物がある。お金の掛からないガチャ。でもガチャは厄介……」
ファルが呼びに来たので僕達は昼食へ。師匠が居たので聞くと、師匠も渋い顔をした。
「確かにあそこは良い物が手に入る事があるが、継続して手に入る保証も無ければ、本当に手に入るかも定かではない。そのうえレア度が極めて高い物は、相当深く潜らぬと手に入らんのだ」
「逆に言えば、深く潜ると手に入ると知ってるのよね? 元悪魔の私でさえ、そんなに深くは潜った事が無いっていうのに……。流石は<破滅>と言えばいいのかしら?」
「本当ですね。天使の私であっても、そこまで深く潜った事はありませんよ。いったい何処まで行ったのやら?」
「もちろん行ける所までに決まっておろう。流石に面倒になったので帰ってきたが、妾でさえ最奥まで行った事は無いぞ?」
「冗談でしょ!? どんだけ深いのよ、あそこ! <破滅>でさえ最奥まで行けなかったなんて!」
「………」
ラスティアが本気で驚き、キャスティは声も出ないらしい。師匠でさえ攻略できなかったというのは、やはりそれ程の事のようだ。深すぎて無理なのか、それとも無限に続くから諦めたのか。いったいどっちなんだろう?。
師匠が最奥まで行けないとなると、何か無限ダンジョンのような気がするんだよね。際限なく続いていくというか、終わりが無い感じ。
昼食後はソファーの部屋からマイルームに飛び、そのままログアウト。現実へと戻ったら昼食と雑事を熟して、再びログイン。
今度はウェズベア森へ。久しぶりに来たけど、特に変わった様子は無いね。僕達は早速グリーントレントを倒していく。これもあって損はしないし、【クリーン】を使いながら戦えば臭くなくて済むから、そこまで嫌じゃない。
ウェルズベアーは立ち上がった瞬間に首を貫いて殺し、確実に毛皮を入手しておく。僕と仲間達だけで来てるけど、他の皆は運営ダンジョンに行ったり物作りをしたりしている。やる事が色々あって大変だね。
グルっと回って粗方倒したら戻り、僕もマイルームで物作りを開始する。セナに話してククリナイフを回収したら、それも使って棒手裏剣を作成。それをセナに渡しておいた。格闘武器でもっと良い物ないか、考えておくか。
頭の中で色々と考えながら魔力金属や属性結晶を作っていき、魔力が無くなると【昏睡眠】で回復する。そんな事を繰り返していると夕方に近くなっていたので、ソファーの部屋に戻りファルを呼び出す。
ウェズベア森に行っていたからか、あまり物作りが進んでないな。殆どの精錬なんかは終わってるんだけど、実験の方が進んでない。とはいえ水と闇しかないから、大した実験なんて出来ないんだよね。どっかに別の属性の精石ないかな……。
ソファーの部屋でプレイヤーマーケットを確認するも、精石を売りに出している人はゼロ。検索してもゼロだから、今のところは居ないようだ。
「コトブキが悩んでる? 何かあった?」
「ああいや、他の属性の精石が無いから、これ以上の実験は今のところ無理だなと思ってさ。プレイヤーマーケットにも出てないし。今日はウェルズベアーも狩ってきたから、毛皮を出すついでに確認してたんだ」
「え、毛皮出すの? 高く売れるなら、私も狩りに行って出そうかなー。お金はあるけど、稼げる時に稼いでおきたいし」
「それは良いけど、グリーントレントが出る事を忘れてる?」
「うっ………で、でも【クリーン】を使えば戦えるから………たぶん大丈夫」
「何で小声でちょっと震えてるのよ。確かに耐え難いほど臭いけど、そこまでじゃないでしょ」
ファルが呼びに来たので夕食に行き、その席で師匠から<澱み草>を抜いて来いと言われた。どうやら最近アマロさんも抜いてないらしく、ゴーグルの試しも含めて僕が受けた。
夕食後はソファーの部屋へと戻りマイルームへ、そして囲炉裏部屋でログアウト。現実で食事やお風呂に雑事を終わらせたらログイン。ゴーグルを着けてソファーの部屋へ。
呼び出したのはセナ、フォグ、フィーゴ、セス、エスト。何故かセナは来たがったんだが、何か理由があるんだろうか? それはいいとして、師匠の家を一歩出た瞬間から異様に見える。
明るいか暗いかではなく”見える”んだ。ちょっと不思議というか何と言うか、明るさは変わらないのに非常によく見えると言えばいいんだろうか? どうにも説明し辛い。
そんな中を皆で歩いて調べていく。<澱み草>を見つけたら、【クリア】で枯らしてから引っこ抜く。その為に【浄化魔法】が使える皆を連れて来ている訳だが、セナだけはフィーゴを憑依させている。
今のフィーゴは憑依しながら【浄化魔法】が使えるからいいんだけど、アンデッドが出てくると容赦なく攻め立ててるな。蛙戦隊で鬱憤が溜まったかな? ボス戦の時は異様なほど打撃に対する防御が高かったからね。
1匹1匹で出現した時にはそこまでじゃなかったのに、ボスの蛙戦隊になると途端に高防御だった。トンファーやヌンチャクの【魔刃】や【闘刃】が碌に効かないんだから、ある意味では凄い防御だと言える。
そんな事を思い出しながら【クリア】で<澱み草>を枯らしていき、浅層が終わったら中層へ。久しぶりだなと思いつつも、もはやザコだからかセナが骨を破壊しまくっている。本当に容赦が無いね。
【魔刃】や【闘刃】は一切使ってないんだけど、それでもレベルがレベルだからか凄い破壊力に見える。そんなセナを見つつ【精密魔力感知・中級】で<澱み草>を探して枯らしていった僕達は、全て終わったので戻る。
前よりも随分広い範囲を感知出来るようになったので、<澱み草>の位置が分かりやすかった。その事が印象的なくらいか。とはいえ、たまには夜の森を散歩するのも悪くはないね。アンデッドの森だけど。
皆と師匠の家に戻り、ソファーの部屋からマイルームへ。その後、魔鉄での格闘武器作りを考えるも、思いつかなくて断念。諦めてログアウト。本日はここまで。
298話の誤字報告、ありがとうございました




