0385・蛙戦隊
「ボスは蛙戦隊みたいだけど、僕が一撃で殺された攻撃がある筈だ! それが何なのか分からないけど、警戒!!」
僕が声を掛けると全員が敵に対して警戒の構えをとる。蛙戦隊の大きさは変わらず僕の背丈の半分ぐらい、つまり体高80センチほどの蛙だ。蛙と考えればビックリするほど大きいが、魔物と考えればそこまでじゃない。
とりあえず魔法で攻撃しようと思った瞬間、何かが飛びまわる姿を幻視する。これは……【幻惑魔法】か! ピンク蛙だな、鬱陶しい。
そう思った瞬間「ドォン!」という音がして、シグマが少し後退する。理由は黒蛙が舌で攻撃した事によるものだった。舌先が槍みたいになってるけど、アレが僕が受けた攻撃なんだろう。物凄い威力だが、どうやら黒蛙しか使えないらしい。
他の蛙はあそこまで舌が伸びるところを見てないし、あれが黒蛙の必殺技みたいなものか。つまり他の4匹が暴れている間に、あの黒蛙がコソッと致死性の一撃で攻撃してくる、と。厄介な事を……。
「【幻惑魔法】と黒以外に注目しすぎるな! おそらく黒の舌攻撃が一番威力が高い。アレを有効に使う為の目眩ましをしてきている!」
皆も分かったのだろう、ある程度散開しつつ戦っている。これが運営ダンジョン、つまりソロダンジョンの40階ボスか。幾らなんでもソロで戦うには強くないかな? それともネクロマンサーだから、ここまで強化されてる?。
皆が割と一進一退の攻防を繰り広げてる事にビックリだよ。相手は強いというより上手いんだろうか? 僕も適度に【闇魔法】を使いながらダメージを与えていくものの、そこまで大きなダメージにはなってない感じだ。
白蛙に対して使ってるんだけど、もしかしてコレ間違ってる? 【光魔法】を使う相手だから【闇魔法】で戦ってるけど、もしかしたらその所為で碌に効いてないのかも。だとすると……。
僕は試しに闘気を篭めた【セイントバインド】を白蛙に使うも、一瞬で解除される。次に黒蛙に同じ事をしたが一瞬で解除。という事は……。
「この蛙戦隊、魔法防御力が妙に高い! 物理的な攻撃で戦え! そして誰でもいい、ピンクを先に倒すんだ。【幻惑魔法】が厳しい!!」
あのピンク蛙、厄介な事に【幻惑魔法】を連発してきてる。1匹だと何の問題もなかったけど、連携されていて物凄く厄介だ。攻撃しようとしたら別の奴のカバーがあり迂闊に攻められず、更に黒の舌に気をつけないといけない。
ピンクの【幻惑魔法】をいちいち解除しなきゃいけないが、解除しないと邪魔すぎてまともに戦えない。本当に厄介なボスだよ。ソロダンジョンの癖に連携が良すぎるんだ。せめてどれかを倒して崩したい。
まったく見えないという訳でもなく、敵の攻撃を回避する程度ならば可能なところが腹立たしい。視界がグチャグチャではあるものの、それでも敵の攻撃が分からない程ではなく、そこまで僕もヘタクソではない。
槍を使って前に出ながら敵の攻撃をいなし、流し、かわしながら更に前に出て、魔力を篭めた槍で真っ直ぐに突く。
足の裏で地面を滑るように動きつつ、勢いそのままに、前への動きを腰に乗せて始動。膝、腰、背筋、肩、そして腕へと連動した力が真っ直ぐに敵に突き刺さった。
「ギャブヴェ!?!!?」
黒蛙はおかしな鳴き声を上げたが、開けた口の中に吸い込まれるように槍が突き刺さっている。舌で攻撃しようとした瞬間だった為、運良く弱点部分への一撃となったようだ。
僕は素早く槍を抜いて離脱するも、黒蛙には大ダメージだったのだろう。動きが極端に悪くなり、口を開かなくなった。もしかしたら魔法でも同じ事が出来たのかもしれないが、とにかくあの危険な舌攻撃が無くなっただけで楽になったよ。
そうして一旦距離をとり隙を窺っていると、今度は別の所から鳴き声が聞こえてきた。一瞬チラリとだけ見たが、どうやらピンク蛙が倒されたらしい。やったのはセスで、【闘刃】螺旋突きで倒したようだ。
蛙の皮膚はブヨブヨしていて攻撃してもダメージを与えている感じはあまり無かったんだが、どうやら突き系の攻撃ならダメージは出るみたいだね。いや、斬撃でも同様か。
つまり打撃に強いって事になるんだけど、通りでセナが活躍できてない筈だ。いつもならセナが大暴れしてないとおかしいのに、妙に大人しいと思ったら。もしかして、持ってる武器で自動的にダメージを減らされてる?。
「セナ! ククリナイフか棒手裏剣で戦え。おそらく打撃武器だというだけで効きが悪い!!」
僕がそう言うと、セナは棒手裏剣を赤蛙に投げつけた。白曜石で作った物だから威力は出ないものの、それでも明らかにダメージが出てるのか嫌がっている。それまでセナの攻撃を受けながら反撃までしてきたのにだ。
その事に気付いたセナは右手にククリナイフを持ち、左手のトンファーで【闘刃】を伸ばして攻撃。しかしそこまで効いておらず短い舌で反撃をしてくるが、それはトンファーで受け流した。
そのまま近付きククリナイフに【闘刃】を纏わせながら一閃。赤蛙の表面の皮膚を切り裂く。浅いものの、今までの打撃武器と違い、あからさまにダメージが出ている。
セナは【短剣術】を持っていないから、【闘刃】分しかダメージが出ていないにも関わらずだ。
そういえば何故かセナは頑なに【短剣術】スキルを得ようとしないんだよね。手に入りそうになるとキャンセルしてるっぽいんだよ。欲しくないと思えば手に入らないらしいんだけど。
それでもセナは精彩を欠いた攻撃しか出来ていないし、主に棒手裏剣で戦っている。どうやら刃物自体を使いたくないらしい。あれならククリナイフを止めて、魔鉄で棒手裏剣を作ってあげた方がいいな。
そう思っていると赤蛙が光輝き、口の中から火の鳥を飛ばしてきた。慌ててセナが横っ飛びでかわしたけど、必殺技か? 流石はリーダーだ。あんな必殺技を隠し、あ……。
シグマが必殺技を撃った後の隙だらけな赤蛙に、【闘刃】を纏わせた片手斧を勢いよく振り下ろす。その一撃で断ち割った結果、ボス戦がようやく終了した。
何と言うか、何て言ったらいいか分からない終わり方だったなー……。
少し前にキャスティの剣を受けた直後、降って来た薙刀で黄蛙も倒されているけど、白と黒はいつ倒したんだろう?。
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召喚モンスター:エストのレベルが上がりました
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「皆、おつかれー。流石に蛙戦隊は強かったね。何か異様な強さだったけど、勝てて何よりだよ。白蛙と黒蛙はいつのまにか死んでたね?」
「おつかれさま。黒蛙は私がブッ殺しておいたわよ。まさか魔法に強いうえに、打撃攻撃が碌に効かない相手だとは思わなかったわ。それと中途半端な体の大きさだからか、結構素早くて意外にかわされたわね」
「おつかれさまです。ラスティアの言う通り、思っているよりも素早い蛙でした。カラフルな蛙でふざけているのかと思いましたけど、あそこまで厄介なボスだとは思っていませんでしたね。レベル45は詐欺だと思います」
「分かる。絶対にレベル45なんていう低レベルじゃないわよ。もっと上よね、あの実力なら。セナの武器が打撃系だっていうだけで碌に効いてない感じだったし、もしかしたらボス戦も隠された何かがあったんじゃない?」
「ああ、北に行って戻ると蛙が居たようにですね。倒すべき順番とかがあったのかもしれません。例えば出てきた順番に倒すと簡単だったとか。ここは神様のダンジョンですからね。おかしな植物もあったくらいですし、おかしなボスが居ても不思議ではないです」
「まあ、とりあえず先へと進もう。脱出の魔法陣が次の階にある筈」
僕達は開いた所から進み階段を下っていく。41階の扉は開いておらず、脱出の魔法陣だけがそこにあった。ようやく今行ける最高階層に辿り着いたよ。やれやれ、ボスが強すぎた気もするけどね。
脱出の魔法陣に乗って登録すると、目の前にウィンドウが現れた。
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第二次運営ダンジョン40階踏破おめでとうございます
全プレイヤーの中で初めて攻略された為、スキル【爆力】を授与します
第三次運営ダンジョンに更新されるまでお待ち下さい
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<特殊スキル> 爆力
筋力を爆発的に高める事により一撃の威力を高めるスキル。一度の発動でHPの9割を消費する代わりに、一時的に筋力を3割向上させる。尚、一度でも攻撃すると解除されるので注意。HPが足りなくても使えない
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………うーん、微妙!。




