0378・魔隠穴と豪雪山で素材収集
飛んでくる矢に対処しつつ、アマロさんが倒すまで待つ。これはこれで修行になるというか、訓練になるので悪い事じゃない。槍で叩き落としたりしつつ待っていると、無事に倒し終わったので先へ。
素材を掘りつつ進んで行くと、道中にプレイヤーがちょこちょこ居た。プレイヤーだと分かった理由は、僕達に気付くと「ネクロ氏」とか「弟君」とか言ってくるからだ。僕の事をそう呼ぶのはプレイヤーしかいない。
「ここもプレイヤーが増えたけど、誰かが掲示板にでも流したのかな? 当初は僕達しか居なかったのに、今はそれなりにプレイヤーを見るようになったからさ」
「あれ、コトブキは知らなかったの? 最初に魔隠穴に突入した時に、一緒に入ってきていたプレイヤーが居たのよ。そして、その人物が掲示板に私とコトブキを発見したって書き込んでる」
「トモエとコトブキだけで最初に来て、その後に私達が呼ばれてる。最初の段階からバレてたんじゃ、増えるのは当たり前。ここは厳しいけど、かわりに上級まで鍛えられる良い場所」
「目が見えなくて厳しいけどね。でも、それぐらいするから鍛えられるって言われたら、返す言葉が無い。漫画とかアニメでも、強くなる為に目隠ししての修行とかあるし」
「本当にやると大変だけどな? ここだって【魔力感知】を使えば見えるからいいけど、本気で見えなきゃどうにもならないぜ。見えなくても戦えるなんて創作の中だけだ、現実にはあり得ねーよ」
「分かる、分かる。風の音とか気配とかで分かるとか表現されるけど、分かる訳が無いんだよねー。あんなの現実的じゃないし、どう強くなるのか理解できない。相手を見ると騙されるから足下だけを見る、とかなら分かるんだけど」
「なんだそれ?」
「何だったかな? 確か昔の漫画だったと思うけど、頭の位置を動かさずに接近されると遠近感が掴み難くて、敵の位置を誤認するっていう話だったと思う。それで足下を確認して、何処まで接近されてるか把握するんだよ」
「ああ、なんか聞いた事がある気がするな。なんだっけ? スルスルと滑るように相手に接近するんだった筈。人は物が上下に動くから遠近感を把握できてるんであって、上下に動かないと把握し辛いんだったか……」
「そんな事、本当にあるの?」
「漫画か何かの中ではそうなってたよ。そして確か実際の剣術流派にも似たような技術があった筈。昔の人も遠近感が掴めなくてビックリして、それで技術として確立したんじゃないかな?」
「へー、頭を上下に揺らさないかー……。何だか難しくない?」
「すぐに出来たら天才ですらない。何故なら頭を上下に揺らさず、戦いもしなければいけないから。そんな事は練習しないと絶対にできない。歩くだけなら1度で出来る事もあるだろうけど、戦闘は無理」
「そうそう。にも関わらず、何故か主人公が1回で成功させたり、あっさり使えるようになったりするんだよ。そういうあり得ない展開は冷めるから止めてほしいぜ、ここに同じくらい非常識なのが居るとしてもだ」
「それは横に置いといて、確かに冷めるね。きちんと特訓して使える様になるならまだしも、話の都合上なのか、いきなり成功したりする。あり得ないんだから、そこは適当な描写でもちゃんと一言ほしいよね」
「適当な雑談をしながらでも攻略できるんですね……羨ましいです」
「それは仕方ない。私達は1陣だし、今までにも様々な事をやってきてる。ここはそれなりの強さの敵だから、私達にはそこまででもアマロには厳しい。それが理由」
「レベルの問題だったり、経験の問題だったり。私なんてイルと一緒に始まったようなものだったから、最初は2人だけだったんだよ? 大変だったし苦労も沢山したんだから」
「そう。プレイヤーマーケットに武器なんて売り出されてなかったし、私は弓だったからお金が稼げなかった。矢も自作してたけど、それでもなかなか……。最初はナツに苦労をかけた」
「代わりに【解体】で援助してもらってたから、そこは私も得だったよ。私の【料理】スキルのレベルも低かったし、プレイヤーマーケットに流しても碌に売れなかったねー」
「皆が金ねーから買えないんだよな。最初の頃は本当に厳しかったけど、その頃と今とじゃ経験の中身が絶対に違うと思うぜ? 4陣辺りは絶対に俺達のような苦労はしてないだろうし、それが俺達のアドバンテージになってると思う」
「苦労した分だけ、経験もしてきてるもんねー。後発の方が楽だけど、楽な方に流されてると手痛い失敗になるかもしれないし。その辺りをちゃんと考えないと、弱い人はずっと弱いかも」
「苦労したんだから、その分の見返りがほしいのは当たり前の事。そして苦労した分だけ、ちゃんと身についてる。私達は量産機ではなく、カスタム機」
「言いたい事は分かるけど、なんでそんな表現するのさ。試作機とか実験機とか、何で量産機より劣る筈の物で無双したりするんだろうね? あれって絶対におかしいと思う。本当に無双できるなら、相当の技術格差がないとおかしいんだけど……」
「だいたい似た技術力、もしくは主人公側の方が劣ってる事もよくある。にも関わらず、持てる技術を全て結集して作ったら、何故かオーパーツレベルの物が出来るという」
「あれって本当に訳が分からないよね。素材が既にあり得なかったり、何故か都合よく訳の分からない力の覚醒を促したり、あり得ない事ばかり起こるんだよ」
「それ以前に、使われてるエネルギーが意味不明の場合もあるだろ。後は、あり得ないほどに巨大だったり、それどうやって動いてんだってくらい装甲が柔らかかったり、その割には被弾してもダメージなかったり」
「サイエンス・フィクションじゃなく、スペース・ファンタジーっていうジャンルだから仕方ないとは思うけどね。そうとしか言えないしさ」
「だな」
そんな下らない会話をしつつも素材を収集し、僕達は帰り道を歩く。もはや攻略済みの僕達は迷う事なく戻っていき、入り口を出た段階でウィンドウが出た。
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召喚モンスター:ファルの【精密魔力操作・下級】が【精密魔力操作・中級】になりました
召喚モンスター:ファルが【魔力感知】を習得しました
召喚モンスター:ファルの【魔力感知】が【精密魔力感知】に変更されます
召喚モンスター:ファルの【精密魔力感知】が【精密魔力感知・下級】になりました
召喚モンスター:ファルの【精密魔力感知・下級】が【精密魔力感知・中級】になりました
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「カタカタ」
一気に上がったうえ、ファルって【魔力感知】は持ってなかったのか。ファルのステータスを最近見てなかったな。まあ、【魔力操作】だけで戦えてたのも事実だったし、【魔刃】も使えてたしね。
特に問題なんて無かったから気にしてなかったよ。それはともかく、少し【昏睡眠】で休んでから師匠の家に飛ぶよ?。
トモエに声を掛けた後、少し休んでから一気に飛ぶ。師匠の家に戻ってきた僕達は、防寒具の用意をして豪雪山に出発。相変わらずアマロさんの防寒具が無いが仕方ない。
洞窟にアマロさんを置いて出発した僕達は、さっさと素材を回収していく。無駄な寄り道をする必要も無いので最速で終わらせ、洞窟に戻るとアマロさんが相変わらず寒そうにしていた。
今回もフリーズベアの毛皮が出たので、そろそろ防寒具は作れそうだ。というより、防寒具無しで来ると毛皮しか出ないんだろうか?。
疑問だけど、考えても仕方ないんで放り投げてさっさと戻る。本当に寒そうだからね。




