0374・午前終了
魔隠穴を脱出した僕達は転移札で師匠の家に戻り、次は豪雪山へと行く。その時に気付いたのだが、アマロさんは防寒服を持っていなかった。洞窟に着いた瞬間、寒さに震えるアマロさん。これは困ったと思っていると、気合いと根性で我慢するらしい。
「本当に大丈夫なの? 体調が悪くなっても知らないわよ?」
「最悪は私の召喚モンスターだけを連れて行って下さい、私はバイゼル山の方に戻りますので。魔鉄の装備を売って貰うにしても、お金を稼いでおかないと買えないでしょうし。場合によってはプレイヤーマーケットに出すので買ってほしいんです」
「僕としては素材が買えるなら助かるかな。魔隠穴の素材の中で魔纏石だけは師匠が買ってくれるから、師匠に売ると良いよ。僕は属性金属の事を考えたら銀が欲しいところだね」
「銀鉱石ですね。他にも色々と出ましたし、何とか足りると良いんですけど……。とりあえず、うちの子達をお願いします」
「了解。フリーズベアが出てきて厳しいなら、バイゼル山の方へ戻るようにね」
トモエがフリーズベアの事を伝えた後、僕達はいつも通りに素材を採りに出発する。スノートレウッドやアイストレウッドにアイススライムの抜け殻など。
手に入れて戻るとフリーズベアと戦ってるアマロさんが居た。【採掘】を持つスケルトンとゾンビ以外はアマロさんと一緒に居たんだが、その仲間達と戦っている。僕達はそれを見ているだけだ。
「おめでとう。フリーズベアと戦ってたから手を貸そうか迷ったけど、無事に勝利できたわね。意外と言ったら何だけど、普通に強いじゃない。他の召喚モンスター達も十分に戦えてたし」
「そうですね。狭い洞窟の中でブレスを吐いてくるフリーズベアは厄介な筈ですが、キッチリと防いでいましたしね。今思ったのですが、無理に魔鉄ではなくても、ここで採れる白曜石の武器でも良いのでは?」
「ああ、スノートレウッドと白曜石で作る事も出来るよ。そっちの方が安値で作れるだろうし、アマロさんはそっちの方が良いかな? それとも暗曜石の方が良いかも。あれを使って武器を作った事は無いんだよね」
「まあ、とにかくフリーズベアが出ても大丈夫そうだから、もう片方も済ませてくるわ。だからもうちょっと待ってて」
僕達は崖の下で採掘できる方へと出発していく。こちらはスマッシュタイガーが出てくる側だが、道中でアイススライムが出てくる。僕としてはそっちの方が重要であり、他に強力なスライムの出る所を探さないといけない。
そんな場所は全く聞いた事が無いので骨が折れそうだけど、師匠に聞く訳にもいかないし……どうしたものやら。っと、少し真面目に掘ろう。スマッシュタイガーが居るのに適当すぎる。
採掘が終わった僕達は戻って行き、洞窟に着いた時にはアマロさんは勝っていたようだ。戦闘は終わっており、誰も犠牲にならずに勝利したみたい。
すぐにバイゼル山へと撤退し、アマロさんは安堵の息を吐く。
「いや、本当に寒かったです。あそこまで寒いとは思いませんでした。防寒具が無いと駄目だというのは当然だと思いますが、この山を下りた麓の町まで行かないといけないんですよね?」
「そうね。私達は前に行って購入してきてるから持ってるけど……コトブキ、どうにかならない?」
「うーん……そうだなぁ……熊の毛皮をそのまま着るとか? 確かフリーズベアからは毛皮が手に入る筈。それを錬金術で繋ぎ合わせれば服には出来ると思う。ただし毛皮が要るよ?」
「結局は何度か戦わないといけない訳ですね? ………毛皮は2つ手に入っていますし、折角ですからお願いできますか? 運営ダンジョンにも雪山があるそうですし」
「ああ、ビッグフットとビッグアームの所か。そういえば、僕はあの先のジャングルをまだ攻略できてないんだった。あれも早めにどうにかしたいなぁ……」
「やっぱりUMAの階層を攻略してたんですね。掲示板では、まだ攻略者が出ていないという書き込みがありましたよ。それでもコトブキさんは攻略してるんじゃないかと言われてましたけど」
「雪山ってジャイアントがボスの所よね? あそこなら一回で攻略は終わったけど、そんなに難しい場所だった? 大きな奴等が出てくるだけでしょ」
「足が長いのと腕が長いのですね。特にどうこうと言う相手でもありませんでした。ボスのジャイアントが少々面倒だったくらいで、それ以外は特に大した事はなかったような……?」
「少々面倒………。そのジャイアントで皆は苦しんでいるようです。大きな剣を縦横無尽に振り回してくるので勝てないと、そういう書き込みが非常に多かったですよ」
「まあ、あのジャイアントは確かに動きが早かったけど、それでもそこまで勝てないかなぁ? 足の甲を突き刺したり、抉ったりしたんじゃなかったっけ?」
「そうそう、それで物凄く痛がってたわ。更に追撃としてセナがトンファーで抉ってたわね。あまりの痛みで尻餅ついたところに、私が接近して首を薙いだのよ。それで血を噴き出して死亡、次の階層へ進んだって感じ」
「………何となく想像はできますけど、私も実際ジャインアントと戦った事はないので、何となくでしか分かりません。まずは手足などを攻撃するのが良いのですね?」
「相手が大きいから、手足しか攻撃できないというのが正しいかな。そのうえ大きな剣を振り回してくるんで、盾で防ぐか回避するかを選ばないといけない。大半のプレイヤーは回避一択だと思うけど」
「よしっ、後は戻るだけね。大きな身長をしてて長い剣を振り回してくる。思ってるより厄介だけど、盾で止めればどうにでもなりそうね。リナとリーダが防いで止めてくれてるうちに一斉攻撃かしら?」
「それで勝てると思うよ。【魔刃】や【闘刃】を使えば抉れるし切れるから、そこまで厄介なボスじゃないし。使えなきゃ武器を強化して戦えばいいと思うんだけど、もしかしたら切れないのかな? なかなか硬いボスだったような……」
「そういえば、そうでしたね。あのジャイアントは思っているよりも硬かったです。武器を強化するだけでは、そこまでダメージが与えられないのかしれません。ならば突破は難しいでしょう。特に一人だそうですし」
「サモナー、テイマー、魔隷師、ネクロマンサー。運営ダンジョンに複数人で入れるのは4つの職業だけだからね。それ以外は全員ソロでしか入れないダンジョンだから、余計に大変なんだと思うよ」
「代わりにその4つの職業だと難易度が上がってるんだけどね。検証班いわく、経験値も何も変わらないのにモンスターがだけが強くなってるそうよ? 私達にそんな自覚ないけどね」
「自覚が無いっていうか、こんなものとしか思ってないしね。仮に僕がソロで行っても強さは変わらないだろうから、意味は無いと思う。……鉄を掘り終わって帰ってきたけど、ちょうど昼食の時間?」
「ちょっと遅いくらいじゃない? それでも魔隠穴の事を考えたら早いわよ。まずは昼食が先ね」
僕はマイルームに皆を戻し、ファルを呼び出して昼食の手伝いに行かせる。アマロさんもゾンビを昼食の手伝いに行かせたけど、アマロさんのゾンビは男なんだよね。
ゾンビの1体目はネクロマンサーの性別とは逆になるのかもしれない。ま、どうでもいい事か。今は昼食までゆっくりするのと、手に入った素材を確認しておこう。
その後、ソファーの部屋でアマロさんと話したが、暗曜石とスノートレウッドの矛で良いとの事だった。なので午後からか、それとも夜に作っておこう。
ちょっと迷ってるんだよねー。物作りをするか、運営ダンジョンの攻略か。




