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0372・魔隠穴での剣談義




 僕達は魔隠穴の真っ暗な中を進んで行く。アマロさんの召喚モンスターも積極的に戦わせ、様々な経験をさせる。この経験というのが割と曲者で、これが有ると無いでは結構違ってくる。


 やはり色々な経験がある方が有利で、スキルレベルも経験によって上がったり停滞したりする。だからこそ僕も最近はアクティブスキルを使ったりしてる訳だ。手抜きとかいう下らない事をしてる訳じゃないんだよ。



 「まあ、言いたい事は分かるし、普通はアクティブスキルを使うんでしょうけど……コトブキの場合、既に基礎が身についているのがネック?」


 「かもしれない、ってところかな。だからアクティブスキルを使ってるんだ。何となくだけど、アクティブスキルを使って基本を身につけ、そしてそれを体に覚えさせる……的な想定をしてるのかな、と」


 「基本をねえ……ああ! アバターに教えるって事ね。コトブキが知ってるのとアバターが知ってるのは同じじゃない。コトブキは知り過ぎてるから、逆にアバターが育たない?」


 「そんな感じ。大分前にもそんな話をしたと思うけど、ここ最近伸びないのはそれが理由なんじゃないかと改めて思ってさ。【魔力感知】系や【闘気感知】系は中級になったのに、それ以外がサッパリなんだ」


 「確かに私も中級なのは感知系ぐらいだし、経験が足りないから上がらないと言われれば、まあ納得はするかな? ダラダラと同じ事を繰り返しても上達しないと言われれば、黙って頷くしかないしね」


 「あっ、中級なのは鑑定もだった。【総合鑑定・中級】だったよ。でもそれぐらいで、後は下級ばかりだね。やっぱり色々な経験が足りないんだろうし、アクティブスキルも使わないと成長しない気がする」


 「私もアクティブスキルを使っておこうかなー。何か停滞している気もしてるし、上がらない感じもあるのよ。手応えが無いというか、上がる気配が感じられないというか」


 「もしくは練習が足りないのかもね。僕もそうだし、トモエも多分そうだと思うけど、マイルームの訓練場で戦ったりしないでしょ。実戦ばっかりじゃスキルレベルも停滞するのかも」


 「あー、そういえばそんなのもあったわねー。確かに色々と出来る事もあるし、それをやってはいないわ。だから経験不足と言われれば、その通りとしか言えない。ちょっと真面目にやった方がいい感じ?」


 「トモエの言う真面目が分からないけど、真面目にした方が良いと思う。色々と考えられる事はあるし、今はイベントが終わって時間があるから。今の内に色々な経験をしておいた方が良いだろうね」


 「お2人の言っている事は何となく分かりますけど、それでも色々と思うところはありますね。私もダラダラと同じ事を繰り返している部分はありますし、その所為で停滞していると考えると否定できません」


 「だよねー。敵と戦うのも最初は大変だけど、段々楽になってくるとパターン化するのよ。そうやってパターンになった事って、本当に経験? って考えると……まあ、どう考えても違うとしか言えない」


 「パターン化したら完全に作業であって、それは経験とは言わないからね。そこまで考えられている可能性がある事だけでも驚きだけど、実際に成長している感じがしない以上は……」


 「分かる。もしくは成長はするけど、その成長方法じゃ強くなれないってなると、それはそれで困るわよね。ゲーム的に経験値が手に入ってても、空っぽの経験値と、重厚な経験値という違いがありそうなのよ」


 「経験値の中身……ですか。考えた事もありませんでした。何故そんな事を?」


 「僕達のような稀人は死んだら経験を失うんだよ。おそらくログイン時点まで戻される。これをアバターの経験と呼んでるけど、このアバターの経験なんていうものが設定されている以上は、様々な事が考えられるんだ」


 「アバターの経験に基づくものなのか、それとも単なる数字を集めたものなのか。さっき言った経験値の中身ってそういう意味よ。わざわざ経験したかしてないかを記録してるくらいだもの、中身があるか経験値という数値だけなのかも記録してるでしょう」


 「正しくは経験値だけか、経験のフラグもオンか……という判定だと思うけどね。それでも経験を本当に積んだかどうか判断してると、そう僕達は思ってる訳なんだ」


 「だからアクティブスキルを使って戦闘をしている、という経験をしている訳ですね? ………凄く大変なんですが、本当に皆さんそこまで考えてるんでしょうか?」


 「攻略勢とかプロとかは考えてるんじゃないかな? でも難しく考える必要はないよ。結局は色々な事をやってみよう、で終わる話だし。同じ事の繰り返しは止めて、色々やってみればいい」


 「同じ事の繰り返しって、よくよく考えれば手抜きだしね。運営も手抜きすんなって言ってる、そう考えれば分からなくもないでしょ? 手を抜いて上手くなる筈もないし、何かスカスカになりそうじゃない」


 「経験が無いから中身がスカスカ、ハリボテのような強さ。流石に嫌ですね。それでは駄目だというのは、私でも分かります」



 アマロさんは自ら前に出ながら、剣を使って戦い始めた。彼女は剣と盾を持っているけど、堅実な剣士みたいな戦い方をしている。小さな丸い盾と短めの剣を持ち、それを叩きつけるような戦い方だ。


 あれならグラディウスのような幅広の剣の方が良いと思うけど、筋力が低いのかな? それとも細かい事も分からずに持っているのか。まあ、知り合いと違って僕が口を出せる事じゃないから黙っておこう。


 危な気なく倒したけど、どうにも本人的には納得はできていないらしい。



 「何となくで剣を使ってますけど、やっぱりこういうのも良くないんでしょうか? 何を使っていいかも分からなかったので剣と盾を使ってるんですけど……」


 「別に剣と盾が悪い訳じゃないんだけど……私達だと使ったりはしないわねえ。剣の有用な部分って携帯性ぐらいだと思ってるし、他の武器に比べて劣る部分も多いもの」


 「そうなんですか?」


 「あくまでも僕やトモエはそう思うというか、そう考えているって事。そもそも昔の戦場だって、メインは槍や斧やメイスに弓矢なんだ。もちろん剣も使われてたけど、鎧を装備している相手に有効かと言われると……」


 「金属の全身鎧に叩きつければ折れるでしょうね。そもそも西洋だって全身鎧に対しては斧やメイスで戦ってた訳だし、日本だと槍がメイン武器だったと言われてるもの。剣や刀じゃないのよね」


 「その前の時代は薙刀とかだしね。もしくは刀の中でも長大な大太刀だったと言われてる。西洋だってロングソードやグレートソードの長大な物だったみたいなんだけど、これって剣の有用な部分である携帯性が死んでるんだよね」


 「剣が使われる場合、大きくて長い剣が使われていた……という事ですね」


 「もちろん普通の剣も使われていただろうけど、それはメインには成り得なかったという事だね。相手よりもリーチが長い方が有利だし、威力が高い方が有利なのは、考えれば誰でも分かる事だから」


 「そして剣の有利な部分は携帯性。リーチは長柄に勝てないし、威力は斧やメイスに勝てない。じゃあ剣を持つ理由は? って感じかしら。もちろん長大な剣を作ればリーチは解決するけど、そんな長大な剣をわざわざ使うの? って考えると……」


 「そこまで長いなら槍や薙刀の方が使い勝手いいよね、って普通は考える。何故なら長くした剣なんて折れやすいし、剣ってそこまで長くして有用な構造をしていないんだ」


 「はあ……」


 「別に剣が駄目だとは言ってないよ? 唯、剣の特性を考えると僕達は使わないってだけ。兵器だってそれぞれに合わせて特化した物が作られて使われるんだ。決して平均的な物が使われるんじゃないんだよ」


 「平均的ってその程度だもの、相手が特化した武器を持っていると押し負けて殺される可能性が高いのよね。プロの兵士とアマチュアのサバゲーマーぐらいの差かしら?」


 「それは……絶望的な差ですね」


 「運で引っ繰り返る場合もあるだろうけど、十中八九はプロが勝つ。それぐらいの差なんだよ、平均と特化って」


 「成る程……」



 僕達が剣を使わない理由が、何となくでも伝わったかな?。


実験のご協力ありがとうございました。今までのまま更新していこうと思います。

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