0370・運営さん達27
2000年 10月29日 日曜日
『プレイヤー<コトブキ>とプレイヤー<トモエ>が王女護衛イベントを始めます』
「おっと、イベントが始まったか。彼等がこのイベントを熟すこと自体は構わないんだが……セントラルが言っていた通りに転移札を使う可能性が高い。それを止めない我々も我々ではあるが、雛形の経験としてはむしろプラスではある」
「それ無理矢理に捻り出したメリットじゃありませんよね? 流石に苦しい気がしないでもないんですけど……」
「そんな事は無いさ。雛形の経験という事は、これからのプラスになるという事だ。長い目で見れば十分な程のメリットだよ。雛形は雛形だしな。後の部分は、未来の様々なゲーム運営が考える事だ」
「まあ、そうなんですけどね。それに我々の想定が甘いと言われれば返す言葉がありませんし、上手くいかない事も考えられますしね。王女とか<支配>が止めるかもしれませんし、まだ分かりません」
「確率は極めて低いと思うがな。それはともかくとして、<破滅>が想定を出しているが、あれは良いのか? 結構なヒント……という訳でもないか。魔隷師に関する事しか言ってないし、基本ではあるな」
「ですね。支配モンスター……というかテイムモンスターに対する基本的な対処を語ってるだけなんで、別に答えを言っている訳ではありませんし」
『そんな事をする訳がなかろう。どのみちコトブキならば放っておいても普通にクリアする。そもそもなのだが、コトブキと召喚モンスター達の連動がおかしな事になっておらんか? あやつら殺意が高すぎるぞ』
「それなー。サモナーとネクロマンサーの配下だけは、マスターの行動を学習する仕組みにしてある。それは知ってるだろう? そうやって最適化されるんだが、マスターが異常だと召喚モンスターも異常になるって事だろう。そうとしか言えん」
「トンファーで急所を貫くのもアレですけど、ヌンチャクで首を刎ねるって想定してませんしね。あの子は何処に向かって進んでるのか、こっちも想定し辛くなってますよ。行動がおかしくて」
「最近、格闘界隈が画像を見たからか、真似る者が出始めた。それ自体は歓迎するべき出来事なんだが……何だか妙な事になってるなー、という印象だ。格闘系は手数の多さが醍醐味の筈なんだが」
「……コレですか? 一撃必殺を狙ってますねー。ま、別に悪くない気はしますが、そう思うのは見慣れたからでしょうか」
「見慣れたからじゃないか? 今まで想定していた闘士の戦い方じゃないぞ。とはいえ悪いわけじゃないんで、このまま放置するけどな。闘士の攻撃力アップは武器で、と想定していた筈なんだが……」
「ま、彼が動いた事で色々起きるって事ですね。そういう、っと、そろそろ王城を出るみたいです。ここから護衛ですけど、今のところ転移札に気付いた様子はありません」
「気付いても黙ってるだけだろ。そもそも転移札で飛びましょう、なんて提案しないだろうしな。やるならサプライズでやるに決まってる。知ってる者が少なければ少ないほど効果は高いんだ」
「まあ、そうなんですけどね。………あーあ、やっぱり気付いてたかぁ。<支配>が居なくなった直後に提案したよ。本当にギリギリまで黙ってたんですね」
「そりゃそうだろ。そうすれば暗殺者も煙に撒けるんだ。誰だって想定外の行動をするならギリギリまで知らせないさ。特に護衛任務なんだか、はぃぃぃぃ!?」
「セントラル!? 王女じゃなくて女王だ! 何がどうなってるのか調べて!!」
『………調査した結果、ブラッディア国内が安定している為、王女護衛ルートではなく女王護衛ルートに変わっています。これはビスティオが、ブラッディアからエルフィンにターゲットを切り替えた影響です』
「ああ、そういう事か……。あー、ビックリした。想定していないイベントというか、知らないイベントが始まったのかと思ったぞ。………これか。一応作られていた、確率の低い別イベント。まさかこっちが始まるとは」
「………王女護衛イベントではなく、サキュリアの貴族の成敗イベントですか? 次女と三女の後ろ盾となっている貴族を懲らしめる……という感じですね」
「だな。王女の命を守るんじゃなく、女王と一緒に暗殺者やゴロツキを叩き潰すイベントだ。王女護衛と違って緊迫感が無いなー」
「仕方ありませんよ、この女王ってすっごい高レベルですし。暗殺者如きじゃ倒せないでしょ。各国の王は殆どが高レベルですけど、ここは女王が魔隷師ですからね。更に隠してる支配モンスターも居ますし」
「だな。そのうえ女王と知らずに転移したもんだから、懲らしめイベントも大半カットになってしまってる。まあ、護衛イベントじゃないんだし、ショートカットされても問題は無いか。長引かせるようなイベントでもなし」
「そうですね。おっと、ここからは早歩きで進んで距離を稼ぐみたいですよ」
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2000年 10月30日 月曜日
「午前中は襲われなかったが、ついに午後からは初の襲撃かー……どう考えてもギャグだよな? これを暗殺者と私は言わんぞ。どう考えてもギャグ要員だ。誰がこのイベントを企画したのか知らんが、ギャグイベントにしてるだろ」
「いやいや、彼がやっているのは逆走ですからね? そっちから来た場合にギャグになるようにしていたのでは? サキュリアからブラッディアへのルートでは、ちゃんとしたのが用意されてるでしょう」
「ああ、そう言えば逆走ルートと言えるのか。それなら……となるか?」
「猪に乗って突撃してくる。どう贔屓目に見ても蛮族ですかね? ギ○ートルズにこんなのあったような?」
「古いのを知ってるな? 確かに私も朧気ながら、こんなシーンがあったような気がするが……っていうか、ギャ○トルズなら普通にギャグだろ。もう終わったから今さらだがな」
「あーあー、煉獄の枷を使ってる。確かに天下の往来を猪で突撃してきたバカだけどさ、流石にやってる事が酷くないかな?」
「彼だから、あんなものだろ」
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2000年 10月31日 火曜日
「馬車ごと突っ込んで来るって、何かのアクション映画みたいにダイナミックな連中だな。昨日のギャグはいったい何だったんだと言いたい」
「アレ一回きりですしね。緊張を緩和する意味では良かった気がしますけど、危うくギャグ時空に転移したのかと思うほどでしたよ」
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2000年 11月1日 水曜日
「流石に王都前だと連続で襲われますね。とはいえ彼らの言っている通り、3台纏めて襲ってこないところに甘さがありますけど」
「彼の予想通り、足の引っ張りあいをしているという設定だからね。本来ならそれでも厄介な筈なんだけど、彼らは逆走なんだ」
「それは聞いてるし、今さらだと思うわ。それでも最後はちゃんとボスが出るらしいから、それで綺麗に終わるでしょ」
「まあね」
………
……
…
「王都の中まで来たし、そろそろ……出てきたわね。こいつらがラストだけど、さて彼らはどうするのかしら?」
「ホワイト・デスだけが突出してマズいからね。早めに何とかしなきゃいけないけど、敵の魔隷師と連携されると厄介だよ」
「…………えー、そんなのアリ?」
「【生命力操作】で呪いを解除できたのか……急に出オチキャラになった気がするなぁ。おっと、噛み付こうとしたけど彼が助けたね?」
「弟君の言い分は真っ当ね。負けた以上はガタガタ言うな、という風にも聞こえるけど」
「事実だからしょうがないよ。というか、最後まで妙に締まらない形だったなぁ。彼らは大変だったろうけど」
『プレイヤー<コトブキ>は、今回のイベントもクリアしました。内容を考えるに成功判定で良いと思われます』




