0037・運営さん達02
2000年 7月26日 水曜日
「弟君がプレイヤーマーケットを使おうとしてるけど、それを覗くんじゃない。特別なキャラクターだってバレるだろ。許しているとはいえ、一応はキャラクターを演じてくれないと困るんだがな」
『分かっておる。なのでチラ見しただけであろう。別に見えたところで然したる問題などあるまい。妾達には使えぬしな。まあ使う気も無いが……』
「成る程、ウサギ耳を姉の方に売ろうとしていたのか。全部のレアアイテムを手放されたら、イベントの整合性がとれないところだった。まあ、ゾンビーナが着けてるから問題はないが」
『あのゾンビーナが手放すようにはしておりませんので、問題はありません。確実に装備している一つはプレイヤー<コトブキ>の手に残ります』
「あーらら……イベント前に大量に購入してるなあ、後で奪われるとも知らずに。まあ普通は大量にお金を持ったら装備を整えるわな。2日目で良い装備が買える事を怪しまなきゃ駄目だろう?」
「普通は怪しみませんよ、自分で盗賊倒して得た報奨金なんですから……」
「まあ、そりゃそうだ、っと始まったか。これがバカンド子爵? えーっと、ああ! よく居る、イケメンだけど顔だけのキャラね。何かイケメンへの呪詛を感じなくもないけど、古い時代なら顔も立派な武器だわな」
「その立派な顔で取り入って、後は真面目にしてりゃあ良いんですけどねえ。唯の小悪党という設定で、はい逝った! 流石に騎士には勝てなかったなー。黒い騎士に序盤で殺される。何処かにそんなイベントで始まるゲームがあったな」
「パクリでもオマージュでもありませんよ? そもそも内容が違いすぎるでしょう。アレは黒い騎士にやられてから物語が始まるんです。こっちは唯の貴族の護衛。全然違いますから一緒にしないで下さい」
「お、おう……。別にそこまで怒らんでも。それはともかくとして、凄く悔しがってますね」
「彼にとっては良い薬だ。<BUSHIDO>と比べればヌルいからといって、斜に構えているからこういう目に遭うんだ。いつでも何処でも緊張感を持って<常在戦場>の心持ちで居てもらわないとな」
「それって何処の武士ですか? 今の時代にそれが必要なのか大きな疑問がありますけどね。それより本当に凄い悔しがりようで、こっちまで若干悪い事したって気持ちになりますよ」
「まあ、気持ちは分かるが、後で金は上乗せで返ってくるんだろ? だったら何の問題も無い。一連のイベントだと理解してくれるだろ」
「イベントだって出した方が安全だと思いますけど、やっぱり出さないんですか? 好評と不評の両方があるんで難しいですけど」
「イベントだって出すと身構えるだろう? それじゃ素の反応が出ない。このゲームは情報収集の場でもある。告知からの反応なんて幾らでもあるが、告知無しの反応は殆どない。今や先に知らせてくれるのが当たり前だからな」
「分かりやすいですけど、似た様なのばっかりですしね。同じ様なイベントでも告知されていない状態での反応はやっぱり違いますし、正直に言ってこのままで良いと思いますよ?」
「まあ、言いたい事は分かるんですけどねー。とはいえ、途中からはプレイヤーも気付くでしょうから悪い部分は解消されますか。そもそもイベントだから善く行動するっていうのもアレですし」
「そうそう、普段の行動が見られてるっていうのは普通の事だしね。古いゲームでも、選択肢の結果で仲間の好感度が大幅に減るとかあるし」
「後はしっかり躾をしなきゃ言う事を聞かないとかな。まあ、それでも幸せそうなのが山ほど居るが……」
「アレはどんなゲームにでも居ますから。……モフモフ好きは本当に根強いですし、あれらは自ら下僕と名乗るぐらいですしね。ゲームが進まなくても幸せでしょう。そして必死になって徒党を組んで、新たなモフモフに突撃するんでしょうね」
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2000年 7月27日 木曜日
「<破滅>の殴りこみも終わり、戻ってきたが……うん。彼の雰囲気が良くなってるな。あれは殺し合いをする者の眼だ。<BUSHIDO>を好む以上はそうでないとな」
「むしろ<BUSHIDO>を好む異常じゃないかと……」
「何か言ったか? ……うん? 【魔物鑑定】か。という事は鑑定系を学ぼうとしてるな」
『【総合鑑定】の事を<破滅>が話したので、プレイヤー<コトブキ>は本を読み始めたようです』
「ああ、そういう事か。鑑定系スキルは職業にするか随分悩んだんだが、あまり不便過ぎると今の子はやる気を失くすからなぁ。鑑定屋とか格好いいと思うがねえ……」
「言いたい事は分かりますけど、引っ張りだこになるうえに強くなれるイメージが無いですからね。これがビショップなら強くはなれるでしょうけど、司教が鑑定できるって意味が分かりませんし」
「まあな。それはともかくとして、今日は【総合鑑定】に掛かりっきりだろうな。彼なら2日か3日で何とかするだろうが」
「アルファチームは最短で4日掛かったんですけどね。あれ、実は脳波チェックとかしてるんで地味に厳しいですし」
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2000年 7月28日 金曜日
「おっと、弟君やっと【総合鑑定】になったみたい。それでも始めて2日なんだからビックリするレベルで早いんだけど、よくこの速度で本を読めるよね。脳波チェックをクリアしてるんだからさ」
「まあ鑑定系は覚えてからが本番だから、これぐらいは早くても構わないとはいえ、それにしても早いなあ。後は知識を溜めこんでいくだけなんだけど、それに気付く人が出てくるかな?」
「鑑定スキルを覚えたら後は何もしない人ばっかりだろうねえ。まあ、そうすると魔物が鑑定出来なくなっていくから気付くだろうけど」
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2000年 7月29日 土曜日
「んー? 弟君、自分で武器を作り始めたけど、下手だからかボロいねー。それでも多少なりとも戦えてるのが驚きだよ。普通はもっと早く壊れるよねえ、セントラル?」
『はい。プレイヤーの平均的な武器の使い方では、2度か3度の戦闘を行うと壊れます。曲がりなりにもアレだけ使えているのは本人の技量によるものです。今のところ、同じ技術力のプレイヤーは存在しません』
「おぉう、そこまでだったとは……。おかしな事に目がいきがちだけど、基本のレベルが尋常じゃなく高いわねえ。流石は異常ゲームの愛好家」
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2000年 7月30日 日曜日
『プレイヤー<コトブキ>が<屍人の森・中層>に入りました』
「おっと、中層に入り込むなんて何を考えて………マジで? 普通に倒してんじゃん。あれって進化済みだよね? 何であんな簡単に倒せてるの?」
『壊れかけの石球を投げつけて大ダメージを与えています。称号【破壊魔】のおかげで、壊れる際の破壊力は2倍となっています。そして【身体強化】を使って投げつけていますので、更に威力が上がった結果でしょう』
「【破壊魔】かー……。これは上にあげてナーフしておいた方がいいかな? 流石に99個スタック出来るものでコレは駄目でしょう。彼が槍玉にあがって攻撃されても困るしね」
『ナーフされるのでしたら、戦闘中一回だけにすればどうでしょう。一度の発動だけにするなら、大した手間でもありません』
「ああ、成る程ね。頑張って称号も獲得してる訳だし、威力が低下するのもアレだもんねえ。その辺りが一番良い落としどころかなぁ……」
『プレイヤー<コトブキ>が呪いの短剣を投げて使い、呪いを受けずに使用しています』
「そうなの? それは想定されていた使い方だから問題なし。わざわざ切りつけてって書いてあるんだから、切り付けなきゃ大丈夫って思うよねえ。その通りだけど、壊れた時が楽しみ。この短剣の呪いは?」
『発情ですので、封印されているのはサキュバスとなります』
「おお! ショタvsサキュバスのお姉さんの戦いかー。ある意味で胸アツな戦いだけど、弟君は普通に勝っちゃうかなあ?」
『普通に勝つと思われます。プレイヤー<コトブキ>は【魅了耐性】を持っていますので』
「……あっちゃー、本当だ。これじゃあサキュバスのお姉さんは噛ませ犬で終了じゃないの、もったいない。………あれ? 彼ってネクロだよねえ」
『はい、ネクロマンサー・下級です。ですのでギリギリ使役できる可能性があり、サキュバスが屈服した場合、早々に古代の悪魔の1柱がプレイヤーの物となります』
「それは構わん、彼の好きにさせろ。それとナーフの件は先ほどの通りにな。彼には一週間後のイベントで派手にお披露目してもらおうか」
「良いんですか?」
「当初の予定よりも芳しくないんで、早めのテコ入れだよ。どのみちイベントは一週間後の日曜日だし、用意は既に終わっていたろう? それに、イベントが過ぎないとレベルは20で頭打ちだしな」
「まあ、それもそうですね」




