0366・王都への道
ログインした僕が見たのは、特に変わっていない皆だった。
「あれ? 僕達が離れている間に襲撃があると思ってたんだけど、もしかして無かった?」
「まったく無い……というか、そういう雰囲気すら無かったわね。唯の食休みだったというくらいかしら? 私もコトブキが言うように襲ってくると思ってたんだけど、もしかしたらこっちを把握している者は居ないのかも」
「油断はしない方がいいです。とはいえ何度か襲撃を受けている以上、こちらの事は把握されていると想定していましたが……。妙ですね? 絶好のチャンスを潰しています」
「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった。皆は無事? だれか襲ってきた?」
「それが、全く無かったみたいなんだよ。僕とトモエが居ない間はチャンスの筈なんだけどね? これで襲ってこないなら、益々ここから王都までの道に集中してるって事に……」
「ですね。人数を大量に掛けての襲撃でしょうけど、範囲魔法を上手く使えば捌けるでしょう。おそらく大半はゴロツキでしょうし、その程度の者ならば問題ありません。私達は王女の周りで護衛です」
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。ここでダラダラしていても始まらないし、さっさと王都へ行って王城に滑り込みましょう」
僕達はカームト町を出て、女王をドースの背に乗せると王都トゥーラに向けて早歩きで進んで行く。ちょこちょこと馬車などは見えるが、商人の馬車のようで僕達を襲ってくる気配は無い。
他にも徒歩で移動している旅人なども居て、こんな中で襲撃してくるんだろうか? という思いはある。人数は掛けられるかもしれないが、目撃者が必ず出るし、暗殺という状況じゃない。
強襲というか襲撃というか、静かに標的を殺すとかいう状況じゃないんだ。それでも殺せればいいと襲ってくる可能性は高いんだけど、何だかなぁ……という気はする。
正統派の暗殺者は居ないって聞いてるけど、その所為なのかな? そんな下らない事を考えつつも、【精密魔力感知・中級】と【練気感知・中級】と【精神感知】は切らしていない。
そのうち【精神感知】に悪意の反応があったので、すぐに皆に注意を促す。何か嫌なモヤモヤを感じるというか、悪意って分かりやすいんだよね。
「こっちに悪意を向けている馬車が来る。おそらく襲ってくるだろうから、全員戦闘態勢」
即座に女王の周りに居るシグマ、セス、リナ、リーダが盾を構えて女王を守る態勢になる。前から来ていた馬車は突然こちらに進路を変えると突撃してきた。
僕やラスティアが【ダークジャベリン】、キャスティが【ライトジャベリン】を放った後、フォグが【アースウォール】を立てて防ぐ。
馬車が勢いよくぶつかったものの、壁の後ろに再び【アースウォール】を立てたフォグ。この隙間のある2枚の【アースウォール】で完全に馬車の勢いを殺す事に成功。
その後は馬車の中から出てきた者達との戦いとなるが、出てきたのはチンピラやゴロツキのような風貌の連中ばかりであり、僕が【ダークウェーブ】を放ちつつ、エストが【フラッシュ】を使って戦う。
「「「「「「「「「「ぐぁっ!?」」」」」」」」」」
チンピラ達は一斉に目を眩まされた為、碌に目を開ける事も出来ず次々に倒されていく。敵に使われると厄介だけど、味方が使えるとありがたい魔法だね。キャスティは立ち位置もあって滅多に使わないけど。
前に出ている者じゃないと、味方の目まで眩む可能性があるんだよね【フラッシュ】は。なので微妙に使いづらい。エストは飛べるから上手く使ってくれるし、だからこそこうやって簡単に敵が倒せるんだけど、ね!。
「グ、ゴブ!?」
ゴブリンの鳴き声みたいな声が聞こえたけど、あれは【二連突き】というアクティブスキルで、同じ場所を連続で突くものだ。
その所為であんな声が出たんだろうが、こんなチンピラどもでなければ、アクティブスキルなんて使えない。普通のプレイヤーは使って戦うんだろうけど、僕の場合は【闘刃】を使って戦うから、むしろ邪魔なんだよね。
でも今まで結構な頻度で武器を使ってるのに、全く中級に上がる気配が無いし、となるとアクティブスキルの使用が少なすぎるからだとしか思えない。おそらく予想は外れていないと思う。
最初の頃は色々やってたのに、最近は素早く敵を倒す事ばかりしてるからなー。少しは工夫して戦わないと駄目だね。
「オワッタ……ケド、ムコウカラクル!!」
セナが言う王都方面からは再び馬車がやってきたが、今度は二台だった。一応僕達は馬車の進路では無い左に寄るが、その左に馬車は移動しつつ速度を上げてくる。
この2台も突撃してくる気らしく、フォグが再び【アースウォール】を使い、僕も【ダークウェーブ】で攻撃を仕掛ける。エストも御者に対して【フラッシュ】を使ったり、【ライトウェーブ】を放つ。
馬車という重量物が突撃してくるのは厄介で、今回は止めた一台目の馬車に二台目の馬車がぶつかる事で、敵に結構な被害を与える事が出来た。その後は馬車からチンピラやゴロツキのような連中が下りてきて、襲いかかってくる。
一台目と何も変わらないが、何故こいつらは2回に分けて来たんだろうか? ……もしかして一度目と二度目で派閥が違うのかな? 一度目は次女の、二度目は三女の派閥って感じで。
今までの襲撃でも妙な事があったけど、そもそも次女の派閥と三女の派閥は連携してない? 何かそんな可能性が出てきたな。それどころか、内々で相手の邪魔をしろという指示まで出てるんじゃ……。
おっと、今は戦闘中だった。しっかり集中して戦わないといけない、と思うんだけど皆がボコボコにしてるし、僕はアクティブスキルを使ってるしでグダグダだなぁ……。
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召喚モンスター:エストのレベルが上がりました
召喚モンスター:エストのレベルが上がりました
召喚モンスター:エストの【浄化魔法・下級】に【セイントジャベリン】が追加されました
召喚モンスター:エストの【光魔法・下級】に【ライトジャベリン】が追加されました
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敵が多いからか、それともイベント戦闘だからか、レベルが低かった所為もあるんだろうけど一気に上昇したね。まあ、そのレベルまでは、仲間にも使える者が居るからだろうけど。
「おつかれさまー。何か結構な数が来たね、予想以上だった」
「おつかれー。何と言うか、次女と三女の派閥が連携してないどころか、足の引っ張りあいをしてるんじゃないかと思ったよ。わざわざ馬車一台と二台に分ける必要なんてないのに分けてたしね」
「あー、それは確かに。三台なら三台で一斉に襲いかかった方が得なのに、何故かそれをしてないもんねえ」
「コトブキの言う通り、相手は連携できていないどころか、足の引っ張りあいをしているのでしょうね。次女にとっては三女が、三女にとっては次女が敵でもありますので。王女を殺した後を見越して動いているのでしょう」
「頭が悪いにも程があるけどね。とりあえずこいつらは放っておいて、さっさと進みましょう。ここで話していても時間の無駄だしね」
ラスティアの言う通り、僕達はすぐに出発した。今は出来るだけ早く王都に着くべきだし、さっきの戦闘でそれなりに時間をとられた。やはり戦いは数なんだと実感するね。唯のザコだといっても数が多いと厄介だよ。
皆も早歩きで進んでるし、このままなら夕方までには王都に着けると思う。問題は王都に入ってからだけど、周りを召喚モンスター達で囲むしかないね。そうすれば無事に送り届けられるだろう。
町中が最後の勝負どころか。……おそらくだけど一気に走り抜けた方が良いだろうなぁ。
280話の誤字報告、ありがとうございました




