0365・カームト町に到着
宿は簡単にみつかり3人部屋と2人部屋をとったものの、この町からは更に気をつけなければいけない。王都近くに配していた連中がこちら方面に向かってきている可能性は高く、いつ襲われるか分からないからだ。
本当なら食事に出るのも避けた方が良いと思うが、そうも言っていられない。流石に食事にも出ないのは不自然だし、ここに王女様が居ますよとバラす行為をしなければいけないからだ。
「囮的に考えても外に食事に出た方が良いし、そうなると外での食事一択なんだけど、迂闊に手を出さないようにお願いします。場合によっては毒などが入れられている可能性がありますので」
「ああ、確かにそうですね。町中の食堂でも買収するか脅せば……」
「当然、毒の混入ぐらいやるでしょうね。そういう搦め手というか、面倒な方法を使ってくる可能性はあるわ。何度も襲撃して失敗してるし。このままだと王女様が王都トゥーラに着いてしまうもの」
「それを阻止するしかありませんからね、相手側は。流石に王城に到着すると手は出せない。となると、それ以前に殺害するしかありません。王都の町中が一番危険でしょうか?」
「いや、王都に入るまでの道が一番危険でしょうね。もちろん王都の町中でも狙ってくるでしょうけど、リスクがあまりにも大き過ぎるわ。ほぼ確実に捕まるでしょうし、そんな危険は冒せないものよ。幾ら裏の連中とはいえ」
「となると一番危険なのは王都に入る前という事ですか。大勢で魔法を放ったりとか、何でもありの荒い方法で殺しに来そうですね。ゴロツキを雇う方法も失敗していますし、次はどう出てくるのか……」
「まずは食事に行こう。毒も含めて警戒しながらになるけど」
僕がそう言い、皆と共に外へ出る。召喚モンスターも支配モンスターも居ないけど、周りに目を光らせながら食堂へ。毒が入っていないかと何度も調べたが、異常は無かった。
食べても問題ないみたいだけれども、僕達の鑑定もまだ下級だから本当に大丈夫かどうか……。
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※スキル:【総合鑑定・下級】がランクアップし、【総合鑑定・中級】となりました
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言ってる傍からというか、思った傍からこれだよ。再び食事を鑑定するものの、毒などは混入していなかった。となると安心だろうと思う。というより、これ以上調べる事が出来ないのだから疑い続けても仕方ない。
怪しいと思い始めたら何でも怪しく見えるし、そうやって疑い始めると際限が無い。ここはさっさと切り替えて、周りを警戒した方が良いね。
結局、怪しい人物などは見当たらず、僕達は宿に帰って女王の泊まる部屋に皆を呼び出す。後を任せたら僕達の部屋に行き、残りの皆を呼び出してからログアウト。トモエもマキを呼び出していた。
ずっと起きていても問題ないからだろうが、何か気になる事でもあったのかな? とは思ったものの聞かなかった。本日はここまで。
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2000年 11月1日 水曜日 AM8:12
今日は昨日よりちょっと早いだろうか。本日も護衛任務だけど、今日で王都トゥーラに到着する。つまり今日が一番危険な日であり、一番警戒しなきゃいけない日でもある。
昨日と同じようにトモエが部屋に居ないが、女王の泊まっている部屋に行ってるんだろう。僕も仲間をマイルームに送って部屋を出たら、女王の泊まっている部屋のドアをノックし、許可が出たので中に入る。
異常が無かった事を確認したら、労った後で部屋の中の皆をマイルームに送り、トモエの話に耳を傾けた。
「正統派の暗殺者って本当に居ないのね? 馬車で突っ込んで来た連中も正統派とは言い辛かったし、ゴロツキというかチンピラと変わらなかったし」
「何の話をしてるの? 正統派の暗殺者が居ないって、こっちにとっては都合が良いしありがたいんだからさ、珍しい正統派が来たらどうする気? 全く居ないわけじゃないだろうから、口には出さないでよ」
「ごめん、ごめん。何かフラグになりそうよね。でもその場合、王都トゥーラに入ってからの気がするけど? 正統派の暗殺者なら、必ず町の人に扮して近付いてくるでしょうし」
「そうね。基本的にはそういう暗殺方法になるわ。特に人混みがあれば都合が良いんだけど、ブラッディアで作るのは難しいでしょうね」
「作る……のですか? 人混みを?」
「そうよ。何かの安売りを急に始めたり、客が寄ってくる商品を出して周りの一般人にアピールするのよ。すると客が群がってくるから一時的に混雑を作り出せるの、で暗殺担当が標的に近付く。という方法よ」
「成る程。そうやって意図的に人混みを作れば標的に近付いても分かり難い。暗殺者も商品に群がる一人に見えますからね。で刺したりしたら、すぐに離れると」
「暗殺者にとって現場なんて一番居たくない場所だからね、終わったらすぐに離れるわよ。1秒たりとも長く居たくないの、言い訳をし辛いから。どうしてもボロが出る可能性があるから、混乱している内に逃走するわけ」
「そろそろ宿を出て朝食にしよう。ここでダラダラ話していても仕方ないからね」
僕達は宿を出て、昨日とは別の食堂に入る。注文して出てきた食事を調べるも異常は無し。食事を終えて町を出ると、いつものメンバーを召喚。女王をドースの背に乗せて出発する。
今日はオレイ村、カームト町、そして王都トゥーラと移動していく。いつも通り早歩きで移動するも、どうしても気分が急いてしまう。深呼吸して落ち着こう、先は長い。
順調に進んでいき、オレイ村で休憩をとった後はカームト町へ。ここまで一度も襲撃が無い。もしかしたら一度の襲撃に人員を集中させる気だろうか? 流石に人数が多いと対処に限界が出てきてしまう。
「多勢に無勢という方法をとられると、どうしようも無くなるのよねえ。そこまでの大人数は流石に用意出来ないでしょうし、用意した段階でバレると思うけど」
「流石に人数が多過ぎると不審ですからね。それに中途半端な多数だと、むしろ相手が戦いにくいでしょうから、そこを上手く利用できるとは思います。人数も多過ぎると邪魔になりますから」
「そうだけど、王都近くで待っている連中がそこまでマヌケとは思えないけどね。流石に攻められてからしか評価できないけれども、優秀なやつが待ってると仮定しておくべきよ」
「敵が想定より低ければ対処は楽ですが、想定より高ければ慌てる可能性もありますし、敵の予想を高めに出す事は間違っていません」
話をしながらも昼食と休憩を行うカームト町へと到着。ある意味この町が最大の山場だ。僕達をずっと監視している奴がもし居たら、昼休憩で僕達が離れる事も知っているだろう。
となると、一番守りが薄くなる時間がバレている事になる。最後に狙うならここしかない。町中だという事が唯一の救いだけど、ゴロツキなどで人の壁を築かれると厳しいかな。
さて、カームト町の門番に入町税を払って入ろう。ラスティアもキャスティもここを山場と思っているのか、かなりの警戒をしている。
この町と王都に続く道は相手にとってラストチャンスみたいなもの。警戒しすぎるくらいで丁度良い。僕達は周りを警戒しながらも、聞いた食堂に入り料理を注文。
出てきた料理を鑑定するも問題なし。食事をとった後、町にある公園へ。そこで皆を召喚してログアウト。
雑事を熟して昼食を食べたら、部屋に戻ってログイン。果たして皆は大丈夫なんだろうか? 自分が居られないと色々心配してしまうけど、皆なら何とか上手くやってくれている筈。




