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0361・セップト村に到着




 部屋を確保する事は出来たので、僕達はゆっくりと休む事にした。夕食の時間にはちょっと早いし、かと言って町を歩き回ると何処で見られるか分からない。まあ、囮なので出歩いても良いんだけど。



 「それは”王女”次第ね。町を出歩くのは良いんだけど、馬に乗ってるだけも体力使うから、外を回る体力が果たしてあるのかしら?」


 「難しいところですね。久しぶりなので気分は大変良いのですが、その気分で自分の体力を見誤りそうです。気分が高揚していると、疲れを忘れますから」


 「そうですね、それが自覚できているなら良いのですが、これも外に出たら分かりません。気分が高揚して忘れるかもしれませんし……今は体力を回復しておきますか?」


 「いえ、襲われずに見回れるのは今だけでしょうから、今の内に少しでも市井を感じておきたいです。自国ではないのが何とも言えませんけど」



 そう言って立ち上がった女王と共に、僕達は宿を出てドゥエルト町を見回る。一地方の町でしかないんだが、女王にとっては久方ぶりの市井の場なんだろう。


 特に自分が女王ではない立場で見回れるのは新鮮らしく、楽しそうにしながら色々なものを興味深そうに見ている。自国とは違ってアンデッドが多いからというのもあるのかもしれない。


 十分に見回り、食事も終えた僕達は宿へと戻る。女王、ラスティア、キャスティの部屋にセナとフォグとフィーゴとシグマとセスを召喚し、夜間警備を任せた。


 セナとセスは椅子に座って待ち、シグマは部屋の扉の前に立つ。フォグは窓の近くで寝そべり、フィーゴは部屋の中をフワフワ浮いている。これで夜間警備はバッチリだろう。



 「過剰な気もするけどね? 気にせず寝る事は出来るでしょうけど、ここまで過剰な警備は女王でもされない気はするわ。部屋の中にここまではね」


 「ええ、そうですね。そもそもアンデッドという、夜ずっと起きていても問題ない者達を警備に使える者は、そこまで多くないのですよ。ネクロマンサーはイメージがあまり良くない事もあり、ブラッディアを出る者は少ないのです」


 「理由としては分からなくもありませんが、間近で見ているとそんな事もないのですけどね? 至って普通ですし、特にどうこうと言うものでもありません。唯のイメージ的なものだけなんですよ」


 「死者をどうこうって言う奴も居るけど、そもそもネクロマンサーが呼び出してる召喚モンスターは死者じゃないのよね。コトブキが言ってたけど、図書館のような所の本に登録して、そこから呼び出してるって言ってたもの」


 「つまり召喚しているだけで、厳密には死者ではないと?」


 「そうですね、その解釈で間違っていません。どうも大元のようなものがあり、そこに己の魔力を用いて登録しなければいけないそうです。そして登録出来れば召喚できるという形ですね」


 「だから元々死者でもなんでもなく、登録された本から呼び出したという形になるわけ。その本のある図書館のような所には、ネクロマンサーしかアクセス出来ないみたいだけど」


 「それでネクロマンサーしかアンデッドを召喚出来ない訳ですね。おそらくは天使の星のサモナーも似たような者なのでしょうが」


 「僕達はそろそろ部屋に戻りますので、ラスティアとキャスティは後をお願い」


 「了解。任せておきなさいって」


 「今日は特に大きな問題も起こらないでしょう。なので安心していただいて構いませんよ」



 僕達は女王達が居る部屋を出て隣の部屋に入り、ファルとエストを呼び出すと一応僕達の警護を頼む。トモエの召喚モンスター達は眠る必要があるので、僕の召喚モンスター達とは違う。つくづくアンデッドって使いやすいと思うよ。



 「確かにね。夜も眠らなくていいし、お腹も空かないって、ある意味最強よ。その代わり瘴気に弱いっていう弱点があるらしいけど」


 「死んでも復活できるけど、瘴気に染まるとロストとなるんだ。そこはテイマー系とも変わらないと思う。失われる事が無いのは、多分だけどサモナーだけじゃないかな?」


 「サモナーか、あまり聞かないからどういうのか分からないのよね。眠らせたり食べさせたりが必要だとは聞くんだけど、それが必要ない召喚モンスターも居るらしいし」


 「魔隷師だってドールとかパペットとか、ずっと起きてて食事が必要無いのが居るじゃん。ゴーレムを支配できるかは知らないけど」


 「そういえばそうね。それぞれにそういう便利なのが用意されてるのかしら?」


 「おっと、時間が時間だから僕はログアウトするよ、話すだけなら現実でも話せるしね」


 「確かにそうね。ならさっさとログアウトしましょうか」



 そう言って僕達はログアウトし現実へと戻る。その後はゲームに戻る事もなく過ごし、そのまま就寝。本日はここまで。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 10月30日 月曜日 AM8:07



 本日は護衛2日目だから、早めにログインしなきゃいけない。急いで雑事を終わらせたけど、それでも8時までには終わらなかった。いつもより少し早いだけの時間にログイン。


 目を開けて起き上がると、トモエは横のベッドに転がったまま空中に向かって指を動かしている。おそらくウィンドウに何かしてるんだろう。僕はトモエに声を掛けてから部屋のドアを開ける。



 「ナツとイルとユウヤの3人にはメッセージ送っておいたから。ナツやイルは私達が居なかったから驚いてたみたい。護衛依頼の事をすっかり忘れてたらしいわ」


 「えっ、一昨日聞いたのに? ……まあ、誰でもド忘れという事はあるし、そこは言っても仕方ないか。それより魔隠穴には連れて行けないから、そっちの方が問題かな?」


 「そこは仕方ないんじゃない? 3人は個人で進めたいのがあるから、そっちを進めるって。運営ダンジョンとか、物作りにレベル上げね」


 「僕達もそっちをしたいけど、今は仕方ないからね。それより王女様の所に行ってから朝食だよ」


 「そうね、まずは朝ご飯にしましょうか」



 部屋を出て隣の部屋をノック、開けて良いか問うと許可が出たので開ける。召喚モンスター達も普通にしているし、ラスティアもキャスティも普通そうなので問題は無かったようだ。



 「特に問題は無かったわよ。そもそもコトブキがやらかした日だから、向こうは対応出来ないでしょ。いきなり王女一行が転移したら普通は分からないし、転移地点を当てるのは不可能よ」


 「ですね。だからこそ目的地の周囲に派遣するでしょう。少なくとも何処に行くのかは分かっていますので、そこさえ分かっていれば襲撃地点は幾つかある筈です。問題は何処で仕掛けてくるかですが……」


 「そこは考えても仕方ないわよ。それより朝食に行きましょう。お腹空いたし」



 僕は召喚モンスター達を一旦マイルームへと退避させ、その後は全員で食堂に行く。適当に食事を頼み食べたら、町の外へと移動。


 門番に不審者扱いされる事もなく出た僕達は、外で召喚モンスターと支配モンスターを呼び出し、女王をドースの背に乗せて出発する。


 今日はオルハ村とセップト村を越えてアットルマ町まで行かなきゃいけない。流石に宿泊は町でないと厳しい。なので今日も早足で急ごう。


 全員に声を掛けたら僕達は西へと進んで行く。オルハ村に着いて少し休憩したら、すぐにセップト村へと出発。そのまま進んで行き、セップト村へと着いたのは昼辺りだった。


 時間的には余裕があるが、そろそろこちら方面にも暗殺者が来る恐れがあるので、気を引き締めておかなきゃいけない。マイルームで買った昼食を持って来て食べた後、僕とトモエはログアウト。現実で昼食にする。


 雑事を熟してからログイン。ラスティアやキャスティに聞いたところ、特に怪しい人物も居なかったとの事。ログアウト中は何も出来ないからな、良かった。


 さて、午後からは気合いを入れて行こう。そろそろ出てくる筈だ。


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