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0360・ドゥエルト町に到着




 女王様は特に不満を言う事も無くドースの上で揺られている。転移札を使った事によって予想とは随分と変わった形になってしまったし、何かしら思うところはあると思うんだけど……。



 「そういえば、予想と全く違う形になってしまったけど、そこはいいの? 上手く次女と三女の派閥の力を弱めたかったのでしょう?」


 「それはそうですけど、世の中とは上手くいかないものですよ。上手くいく事なんて殆どなく、こういう予想外の事が起きてそれに対応する。そんな事も、政の中ではよくある事でしかありません」


 「まあ、政治の場というのは魑魅魍魎が蔓延るところと言いますからね。そんな連中を相手にして、上手くいく事など早々ありませんか」


 「ええ、まったく。政の場を読むというのは、即ち魑魅魍魎の欲を読むという事。大変という言葉だけで伝えられるものではありません。汚い欲を理解しなければ、上に立つ事は叶わぬのですよ」


 「その点で次女と三女は能力不足という事ですか?」


 「ええ。後ろ盾がある事は心強い事です。ただ一国の主たる者、後ろの者の言いなりでは話になりません。しかし、あの子達には自らというものが無い。後ろの者の言いなりになっているようでは、トップとして相応しいとは言えません」


 「まあ、後ろ盾が私腹を肥やすなんて事になったら、最悪は怒った連中との泥沼の争いになるわね。女王なんだから一声言えば黙る……なんて事はありえないし、そんな事を考えてたら”病死”するわよ?」


 「まったくもって、その通り。我がサキュリアの歴史の中で、どれだけの女王が”病死”してきたと思っているのか。誰かの欲でそうなった事もあれば、これ以上生かしてはマズいとなった事もあるのです。それが政というもの」


 「一番上に立っているからと言って安泰とは限らないのですが、欲に濁っている者に唆されると、自身に都合の良い事しか見なくなるのでしょう。それに自身に都合の良い言葉しか聞かなくなってしまい、そうなると……」


 「終わりねえ。それでも女王が”病死”する方がマシ。だからこそ、今までの女王も”病死”してきたのよ。国が分裂するよりは遥かに良いし、誰もそんな事は望んでない」


 「それは間違いありません。欲に塗れた者どもでさえ、国が割れる事は望んでいない。国が割れてしまえば力が弱まり、他国に喰われる可能性が高く……いえ、他国に喰われるでしょう。それでは破滅です」


 「それが分からない者は欲望塗れですらなく、唯の愚か者ですからね。どんな強大な国家でも、内部から割れれば滅ぶのですよ。そんな事は長い歴史において証明されています」


 「次女と三女はそれが分かっていないのです。あの子達は後ろ盾の者達に甘やかされてしまっている。甘美な毒というべき物に浸っているようでは、上に立つ資格は無い」



 色々大変なんだなーと思うも、聞いている分には面白いので聞いている。魔物は出てくるものの、大した魔物ではないし、皆がすぐに倒すので脅威ではない。あっと言う間に殺されているくらいだ。


 女王も最初は驚いていたが、今ではすっかり慣れている。特に女王が気になっているのはギンらしい。メイの上でダラダラしていたり、リーダの足をペシペシしてちょっかいを掛けているからだろう。


 僕達にとってはいつもの光景だけど、女王にとっては違うのだろうか?。



 「それにしても、猫の支配モンスターというのは良さそうですね。城でも話しましたが、王城では城の中で飼えそうなものしか無理なのです。その点で言えば猫の魔物は優秀そうですし、シャルーファの契約に加えようかしら?」


 「……よく考えると、猫の魔物って珍しい? あんまり見ない気がするんだけど……天使の星はどう?」


 「天使の星でも珍しいですよ? 犬も珍しいですけど、それでも猫よりは居ます。大体は狼とか虎なんですよね。犬や猫は野生だと殺されやすいからでしょうか? それでも生き残ってはいますけど」


 「ギンはバイゼル山で契約したから、バイゼル山に行ったら見つかるんじゃない? 私もギン以外は見た事が無いから、もしかしたらバイゼル山でも珍しいのかもしれないけど」


 「そういえば、そうだね。僕もギン以外のマウンテンキャットを見た事が無い気がする。少なくとも戦った事はない……と思う」


 「猫だし、そこらの隙間にスルッと入って行くと見えないし難しいわ。魔力や闘気を頼りに探すしかないんじゃない? そこまでして契約したいのならね」


 「どうなのかしら……シャルーファなら頑張りそうな気がするけれど、迷惑を掛けるからといって断りそうでもあるわ。あの子は流されず芯があるのは良いんだけど、自身の事に関しては遠慮するのよねえ」


 「なかなか難しいのでは? 夫は男爵家の者と聞きましたし、家の位が低すぎます。何かを望めばそれが醜聞となり、攻撃される元だと警戒しているのでは? それなら仕方がないと思いますよ」


 「そうなんだけれど、それでも宰相に近衛騎士団長、それに内務卿や商務卿などなど、多くの者はシャルーファを支持してくれているわ。流石に国が傾きそうな者には仕えられないという事なのだけれど」


 「でしょうね。それぞれに欲はあるけれど、それは国が正常に運営されている事が前提よ。その前提を覆す可能性のある者は駄目でしょう。自分の地位が危うくなるような者に仕えるなんて、どう考えても無理に決まってるわ」


 「だからこそ裏に居る者達は暗殺などという事を考えたのでしょうね。それしか自分達が逆転する方法が無いから。となるとサキュリアが揺れる事は無さそうで良かったわ。一応の祖国だし、思うところが無い訳じゃないけど……」


 「嫌いになるほどでは無い、というところですか。問題というか、憎しみの相手は暗殺組織ですし、それは貴女が潰しました。そうなると国自体に思うところは無い訳ですね?」


 「元から殆ど無かったけど、更に無くなったって感じかな? そもそも私以外にも孤児は多かったし、訓練と称した暴力と虐めで多くの仲間が死んでいったもの。あれが復讐相手にならない筈がない」


 「「「「………」」」」


 「おっと、もう潰したんだから思い出す必要も無いんだけどねー。たまーに思い出すのよ。ま、許してちょうだい」



 一瞬だったけど、凄まじい殺気と殺意が漏れていた。あれが【色欲】のラスティア、その本性なんだなと思う。悪魔になるのは簡単な筈じゃないんだけど、ラスティアがなれた事にちょっとした疑問はあったんだよね。


 裏側にあれだけのものを抱えているなら、悪魔になるのも分からなくはない。他の悪魔もおそらくだけど、似たような部分があるんだろうね。闇というか、黒い部分を抱えてる筈だ。


 そんな事を考えつつ早歩きで進んでいると、ドゥエルト町が見えてきた。夕方よりは随分と早く到着したので何よりだ。


 入り口で入町税を払い中に入ると、僕達は真っ先に宿へと行く。3人部屋と2人部屋をとり、6500デルを支払った。それなりに広めの部屋なので仕方ない。広い理由は護衛を置いておく為だ。


 具体的にはラスティアとキャスティに、セナとフォグとフィーゴとシグマとセス。アンデッドは疲れる事が無いからね。瘴気をぶつけられると厳しいけど、その為に【浄化魔法】を持たせてるんだし、大丈夫だろう。


 今は全員をマイルームに移動させたけど、夜中の警備には呼び出す。これで女王の警備は問題ないだろう。


 それにしても、夜間警備ってサモナー系かテイマー系じゃなきゃ難しくないかな。他の職業の人はどうしてるんだろう……?。


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