0354・運営さん達25
『プレイヤー<コトブキ>の使い魔である、ラスティアとキャスティが【血式魔法】の事を説明しています。イベントが捩れた場合の対策かもしれません』
「名前はなんだったか忘れたが、ここの領主と戦闘になるパターンもあるんだった……よな。そうそう、このパターンだよ。一番悪いパターンだと領主と戦う羽目になるんだが、コイツ思ってるより強いんだよなー」
「まあ、ドラコっていう名前ですしね。そりゃ強いでしょう。一応の元ネタはヴラド2世ですし。3世はネタにされ過ぎているから、我々は2世だ! とか言ってテンション高かったんですよねー……」
「まあ、吸血鬼の伝承とヴラド3世の事が混ざり合って、今のヴァンパイアの大元みたいになってるからなぁ。実際は実体の無い伝染病とかが始まりだし、それは我が国も変わらん」
「麻疹とか疱瘡とかは、鬼が病気の元を云々とか言われてたんでしたっけ? だから仏様の絵とか貼ってたら病気が退散するとか何とか……。今の時代だとおかしいって思いますけど、当時はそれが当たり前だったんでしょうね」
「まあなあ。そもそも何故病気になるかすら分かってなかったんだから、恐怖だろうさ。理由が分からないって事は、自分がいつ病気になって死ぬか分からないって事だ。つまり、いつか弾の出るロシアンルーレットだな」
「そう言われると、伝染病でパニックになるのがよく分かりますね。誰だって自分の番で弾が出るのは嫌でしょうし、そうならない為に何とかしようとするのは当たり前ですよ」
「それが古い時代の流行り病なんだし、仕方ないとは言えるけどな。それに全国で薬が底をついたら、我々だって治療を受けられずに死ぬ可能性はある。今の医療体制だって安心出来る訳じゃないさ」
『プレイヤー<コトブキ>一行がウェズベア森に到着し、グリーントレントとの戦闘を開始しました』
「おっと、問題児との戦いが始まったか。さてさて、彼らは大丈夫なかね? 臭いに負けそうな気もするが、どっちになるか楽しみだ。まあ、間違いなく1度は臭いを喰らうだろうがね」
「戦闘になる以上、一度は喰らうでしょう。問題は二度目から対策をとるかどうかですけど、彼らはどんな対策で戦うんでしょうね?」
『プレイヤー<コトブキ>が【ダークウェーブ】を使いました。この魔法を受けたグリーントレントが動き始めましたが、プレイヤー<コトブキ>一行はウェズベア森の外に撤退していきます』
「あらら、これは予想外でしたね? まさか最初から臭いを避けて戦うとは。トレント系は臭いと知ってたんでしょうけど、ここまで避けますか……?」
「まあ、森の中に踏み込まず、遠くから魔法を連打していれば勝てるが……。それでは森の中に入る時に困るぞ? ちゃんと対策を考えんと山の方に行く時にどうするつもりだ?」
「とにかく今は離れるって事ですかね? 順調に倒してますけど、あくまでも今は倒せるってだけですし……。おっと、森に踏み込んで行った」
「ああ、一斉攻撃か。確かに息を吐かれる前に滅多打ちにしてしまえば、臭いをうけ『3体からブレスを受けて悶絶しています』なく……」
「あーあー。調子に乗って3体まとめて倒そうとするから臭いを受けるのよ。そうそう、私達もその地獄を何度も味わったの。貴方達も受けなさい」
「いやぁ、しっかり受けてくれたな。素晴らしい! 感動した!!」
「感動はしませんけど、きっちり受けてくれたので苦労した甲斐がありましたよ。私達だけが喰らうなんていう、喰らい損にならなくてよかったー」
『プレイヤー<コトブキ>がウェルズベアーを倒し、毛皮を入手しました』
「??? ……セントラル、その報告は必要ないと思うけど?」
「……いや、待て。ウェルズベアーって確か、魔法防御力が高い熊じゃなかったか? 特殊な方法で倒さないと毛皮が手に入らない熊だった筈…………やっぱりそうだ」
「あー、何かそんな熊が居ましたね。……えっ? 弟君、一回で毛皮出したの? 偶然?」
『おそらく偶然だと思われます。ウェルズベアーが立ち上がり威嚇したタイミングで、プレイヤー<コトブキ>は【闘刃】を使って首を貫いています』
「首への一撃で死亡。その結果、毛皮の確定ドロップとなった訳だ。これ、このままだと確定ドロップの方法まで割り出されそうだな」
『プレイヤー<コトブキ>が出していますので、毛皮が出ないとなると、ドロップ方法を探ると思われます』
「その可能性が高いと私も思う。最初の一度は偶然でも、その後で手に入らないとなれば怪しむだろう。最初から手に入らないなら考えもしないのだろうが……」
「それでも毛皮を手に入れようとするプレイヤーに対する御褒美みたいな物でもありますからね。それが最初から手に入れてしまうとは……」
「彼は相変わらず、こっちの想定を上回ってくれるね。実際サービスが始まると運営である我々の想定を上回る事はあるが、彼のように飛び越えていく事は殆どないのだが……」
「愚痴っていても始まりませんし、それ、あーあー。弟君が2枚目の毛皮を手に入れました。これでもうバレましたね。更に実験するようですよ?」
『プレイヤー<ナツ>が四つ足に移行した直後を狙って倒しましたが、レアアイテムの肝がドロップしました』
「なんでそうなる? 四つ足だったら普通のドロップテーブルだろうに、そこでレアを引くのか? 本当にこの高校生達は意味が分からないな」
「まあ、あれは通常のドロップテーブルなんですから、いいじゃないですか。運良く手に入っただけですよ」
『プレイヤー<コトブキ>がスケルトンバードを召喚出来るようになりました。種族が【魔闘仙】ですので、もしかしたら関係のある進化先にするかもしれません』
「関係……スケルトンバード………コレか。これは有名だから入れておいた特殊進化先だが、彼なら選びそうだな。何となくこちらの思惑というか、ノリも分かってきてるようだし」
「だったら止めたら良かったじゃないですか。よくあるパターンだから止めようって声もありましたよね?」
「鉄板ネタだから入れるべきって声も多数あったがな」
「まあ、それはそうですけど……」
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2000年 10月20日 金曜日
『プレイヤー<コトブキ>がスケルトンバードをゾンビバードへと進化させました。そのうえで<破滅のエンリエッタ>がヒントを出した為、特殊進化先を選ぶ可能性が高くなりました』
「「「「「………」」」」」
『ちょっと待て、セントラル! ゾンビバードを選んだ以上コトブキならば十中八九、次はゾンビ・クロウを選ぶ筈じゃ。そうなればもう後は一直線であろうが!』
「まあ、確かにそうだけど……流石にヒントを出すのはどうかな? セーフよりのアウト……」
『いやいや、セーフよりのセーフじゃろ!』
「まあ、言っちゃった以上は、しょうがないと思いますよ。いちいち引っ張ってもしょうがないですし、前向きに行きましょう。弟君がウェズベア森に行ったみたいですし」
『召喚モンスター<ドース>が【疾走】【突撃】【吶喊】と3重のスキルを駆使しています。このまま許可しますか?』
「は? ………うーん、微妙。これ相当のダメージを叩き出してるけど、相当のダメージも受ける自爆技だよ。だから総じて言うと、微妙としか言えない」
「本当ですね。思ってる以上にダメージを受けてます。ここまでダメージがあるならセーフでは? まともには使えなさそうですし、そのうえ使うのが難しそうですよ?」
『急激に加速するので、バランスをとるのが難しいようです』
「なら問題ないでしょ。情報が出回っても流行るとは思わないしね、ここまで反射ダメージがあるとさ」




