0348・魔隠穴08
ディディの町で宿の部屋をとり、各々で食事をとる事に。ゲーム中の食堂などで食事をとるより、プレイヤーマーケットの料理を買って食べる方が美味しかったりするからだ。
ゲームの中に登場する料理は、時代に合わせたっぽい古い料理しか出てこない。それと比べてプレイヤーが作る料理は現代風だったりする。
料理人の中には味噌や醤油の作成に成功した人がおり、そういう人が美味しい料理を作っていて、プレイヤーマーケットに流してくれているんだ。
「仮にそういう料理じゃなくても、普通にハンバーガーとか売ってるしね。結局のところ手軽に食べられて、それなりに美味しいんだから十分でしょ。普通に売ってるのはサンドイッチ系ばっかりだし」
「まあ、手軽に食べられる物って考えたらそうなんじゃないの? 普通の料理を食べに行っても良いと思うけどね。別にそこまで不味い物でもないでしょうに」
「いやいや、別に不味いとは言ってないよ。普通に美味しい料理が食べられるんだけど、手軽に食べられる料理が少ないんだよね。別に無理して食堂に行かなきゃいけない訳じゃないし、それに今はお昼だし」
「ああ、言いたい事が分かりました。確かに昼時って、そこまで美味しい料理がありませんからね。夕食なら気合いの入った料理も注文出来ますけど、昼時にはそこまでの物は出ません」
「それはねえ。昼の客に豪勢な料理を用意は出来ないわよ。それは夕食に出す為に昼から準備しておかないと作れないし……。そういう意味なら、昼は美味しい物が食べられないというのは分かるわ」
「仕方がないんだろうけどさ、お昼はゆっくりマイルームでとれば良いんだよ。プレイヤーマーケットの料理もバカに出来ないし、味噌や醤油を使った料理なんて稀人しか作らないだろうしね」
「いえ、この味噌とか醤油という物はおそらくですが天使の星にありますよ? あれは何処の国でしたか……。ちょっと思い出せませんけど、昔どこかの島国で食べた記憶があります」
「あらら、そんな所があったんだ。まあ、そこには行けないし、そもそもここ悪魔の星だしね。結局は無いのと変わらないから、食べるにはプレイヤーマーケットしか無理だよ」
天使の星にあるって事は、誰か料理人がその国に到達したんだろうか? だから作れるようになった?。
……和食なんてっていう言い方はアレだけど、和食はリアルに戻れば食べられるから、ゲームでまで食べられなくても良いんだけどね。
それに和食って色々あり過ぎて、最早どう考えるべきか迷うジャンルでもある。ラーメンは? ナポリタンは? と考えたら、和食って何? っていう状態だし。
一応日本式ラーメンであり、日本で生まれたのがナポリタンだしねえ。
どうでもいい事は放り投げて、食事が終わったので一旦ログアウト。リアルに戻って昼食などを済ませておこう。
……トモエが五月蝿かったけど、お昼はうどんにした。お腹に優しいからとか理由を付けたけど、簡単に作れるから作っただけだ。何故かトモエはラーメンが食べたかったらしい。
体型とか色んな事を気にしてる癖に、たまにジャンクな物を食べようとするんだよね。まあ、我慢できないっていうのは分かるんだけどさ。それでも、それは夕食にして下さいって言っておいた。
昼食などを終わらせて再びログイン。囲炉裏部屋で準備を整えたら、置いて行く1人をどうするか皆と相談する。
訓練場で話し合った結果、置いて行くのはフィーゴになった。流石にファルには来てもらわないと困るから、ごめんな。
そう声を掛けておき、僕はスノートレウッドと魔鉄を使ってツルハシを作っておく。
―――――――――――――――
<槌・道具> 雪怪木と魔鉄のツルハシ 品質:7 レア度:4 耐久770
スノートレウッドと魔鉄で作られたツルハシ。武器としても使用できるが掘削道具である。魔鉄で出来ている為に耐久力が高く、硬い岩盤にも負けずに掘削可能
攻撃力24 破壊力6
―――――――――――――――
そういえばツルハシって槌に分類されるんだっけ? 採掘に使うだけなら特に問題ないんだけど、武器として使う場合は【槌術】スキルが要るんだ。
とはいえ、ツルハシをわざわざ武器に使う人って……居そうだなぁ。っと考え事をしている場合じゃない、全員分を作ってさっさと合流しよう。
………よし、出来た。それじゃあさっさと宿の部屋に移動してっと。皆は何処だろう? 宿の前かな?。
「おっ、やっと出てきたかコトブキ。何があったか知らないけど、随分遅かったな。問題か何かがあったなら連絡しておいてくれよ」
「いやー、ゴメン、ゴメン。実は皆の分のツルハシを作ってたら遅れたんだ。そろそろ魔鉄でツルハシも作らないとなーって思っててさ。で、買うお金ある?」
「あー、魔鉄のツルハシかー……。コトブキが魔鉄で武器を作ってるっていう書き込みは確かにあったけど、まさかツルハシを作ってくるとはなー。いや、買うんだけど」
「私も買うわよ。魔鉄の方が掘る速度が速そうだし、耐久力も高そうだしね」
「耐久は770だったよ。なかなかの高耐久だと思うけど、まだ品質7が最高だから納得はいってないね」
「それでも魔鉄の装備が作れるようになっただけ十分だろ。それに品質も7が出てるなら、そこまで大きな問題は無い筈だぞ。後はじっくり品質を上げていくだけだ」
「まあ、そうなんだけどね。それでも納得はいかないというか、何というか……」
「よし! 結構というか、思ってるより高かったけど、高かった分の性能してるし損は無いでしょ。硬い岩盤も掘れるって説明に出てるし」
「何か微妙に意味深っぽいね? 硬い岩盤の所があるのかな?」
「もしかしたら、硬い岩盤も掘れる物だと、採掘した場合の結果が変わるかも。掘る道具で出てくる素材が変わるとか、よくある事」
「午前中にそれなりに掘ったけど、まだ掘ってない所もあるかもしれないから探していこうぜ」
雑談しながらも魔隠穴の前まで来た僕達は、気合いを入れて進んで行く。3人も中級になって範囲が広がったからだろう、かなり気が楽になったようだ。
「ここまで見えるのは予想外。下級とは違いすぎるし、レミ○ラを超えてる!」
「まだ言うのかよ。とはいえ言いたくなる気持ちも分かるけどな。流石にここまで広がると、ちょっと異常に感じるわ。あまりにも広がりすぎで、これ本当に正しいのか?」
「でも中級なんだし、これで正しいんじゃないの? 下級とは違うんだよ、下級とは」
「ナツ、おそろしい子……!! 原作も知らないのに、あの伝説のセリフを!!」
「確かに伝説のセリフに似てたけどさー、その驚きかたはどうよ? 流石にナツの方がビックリしてないか?」
「あんた達、余裕ねえ……。真面目にやらないと上達しないんだから真面目にしなさいよ」
「午前中に苦労していたからこそ、でしょう。気合いを入れて入ったのに広い範囲が分かるので、気が抜けたのでしょうね。分からなくはありません。それに、慣れたのもあると思いますよ」
「そういう時が一番怖いんだけどねー。ま、こればっかりはしょうがないか。どんな者でも気が抜けるタイミングってあるし。簡単じゃないのよねえ」
「ですね。感情があるだけに、ホッとした瞬間崩れるという事はどうしても起こります。それが人間種という者でもありますし、感情があるという証拠でしょうからね」
確かにそうだな、と思う。ふとした時に「アレ?」って思うくらい気が抜ける事はある。あるんだけど……とりあえず戦ってくれないかな? 僕と召喚モンスター達しか戦ってないよ?。




