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0306・ウェズベア森




 城砦都市セロンヴラドを出て西へと歩いて行く。


 既に遠くの方に森は見えているので遠くはない。そんな思っているよりも近い森に移動し、近付いていく。多分距離としては1.5キロぐらいだと思うけど、こんな近さなら伐採したりしないんだろうか?。


 とりあえず近付いてみるものの、特に魔物が出てくるという感じはしない。どうしたものかと思いつつ、止むを得ず慎重に森へと踏み込んでいく。特に何かがある訳でもない、何の変哲も無い……違う! これトレントか!?。



 ―――――――――――――――


 <グリーントレント> 魔物 Lv21


 木の魔物であるトレントの1種。吐く息には毒が含まれており、更には異様な程に臭い。その為、トレント系の魔物の中では断トツで一番嫌われている。出来得る限り近付かずに倒そう


 ―――――――――――――――



 「とりあえず一旦森の外に出るよ、急いで!」



 皆も僕の言葉に従って慌てて出た。まだトレントは反応してなかったけど、流石にアレが反応する前に森から出ておきたい。アイストレントも臭かったけど、その比じゃないんだろうし試す気にもならないからね。さっさと離れるに限る。



 「どうしたんだコトブキ、変なのとかあったのか? それとも何か見つけたのか?」


 「何かも何も、グリーントレントが居たんだよ。師匠も一番臭い息を吐く奴だって言ってたし、森の中だとヤバいと思ってね。だから一旦外に出たんだ。この森はグリーントレントが居るよ、師匠はジャングルのような所に生息してるって言ってたのにさ」


 「いや、それは間違ってないわよ? ここは……ジャングルみたいな蒸し暑さは感じ無いわね。とはいえグリーントレントが生息できない訳じゃないんだし、仕方ないんじゃない? それよりも倒し方を考えるのが先ね」


 「一番良いのは森の外から魔法を放つ事でしょう。調査に来ていますが、流石にグリーントレントが居る森をまともに調査する事なんて出来ませんよ。まずは奴等を殲滅するべきですし、それをしなければ調査なんて無理です」



 2人の力説もあり、僕は森のギリギリにまで接近してから【ダークウェーブ】を放つ。すると、結構な数のグリーントレントが動き出す。慌てて森の外へと退避し、とにかく毒の息からなるべく離れる。


 皆も見ているけど、グリーントレントは動く毎に口のような場所から緑色の息を吐いている。明らかに毒だという事は分かるのだが、それ以上に臭いを嗅ぎたくないので近寄ったりはしない。


 僕達は森の端近くに出てきたグリーントレントに魔法を放ち、少しずつ倒していく。流石にグリーントレントの臭いは来ないから助かるが、その代わりに時間が掛かってしかたない。出てくるまで待たなきゃいけないけど、トレント系って植物だけあって足が遅いんだ。


 それでも倒していき、ようやく誘き出したグリーントレントを倒しきる。グリーントレウッドが手に入ったので臭いを嗅いでみたら、ドロップされた木材からは臭いを感じなかった。これは助かる。



 「確かグリーントレウッドって、鍛冶師が一番喜ぶヤツじゃなかった? 魔力金属を使う際に一番質が良くなるとか何とか」


 「すみません。魔力金属を使った事はあっても、作り方までは知らないんです。とはいえ臭いものにも使い道があるのなら良かったです。臭い上に役に立たないとか、戦う気も失くしますし」


 「鍛冶に役立つなら、なるべく欲しいとこだな。アイストレウッドもそうだけど、布製のマスクでも作って少しでも臭いを防いだ方がいいかもな。一度来なきゃ分からないけど、来たら臭いトレントが居るって分かったんだしさ。何らかの対策は要るだろ」


 「そうだね。マスクが一番良いかな? とはいえ何の素材で作るのかって考えたら困るけど、布ってイマイチよく知らないし。何か適当なマスクでも出てないかな? プレイヤーマーケットに」


 「どうだろうな? 出てないような出てるような………無いな。検索してみたけどマスク系統は見当たらない。おそらく需要が無いんだろうと思う。臭い息を防ぎたいって状況に出くわす奴って、そんなに多くないだろうしな」


 「まあ、グリーントレントなんかと戦う事でもなければ、臭い息を防ぐという発想すら無いでしょうからね。それは仕方ないんだじゃないかしら? 帰りに城砦都市を覗いて調べてみましょうよ」


 「トモエの言う通りマスクは後回しで、調べるのが先。そもそもここへは調査に来ているのであって、グリーントレントを狩りに来た訳じゃない。そもそもグリーントレントが居る事が異変の可能性もあるけど」


 「臭すぎて魔物が逃げ出した……とか?」


 「あり得ない訳じゃねーのが、怖いところだな。ま、とりあえずは森の中に踏み込んでみようぜ。1体か2体ぐらいなら一気にボコれば毒の息を吐かれる前に倒せるだろう」



 方針が決まったので、僕達は森の中へと入っていく。グリーントレントを見つけたら集まり、一気呵成に攻め立てて倒していく。そうする事により、毒の息を吐かれずに済んでいた。しかし、それゆえに油断してしまったんだろう。


 たまたま3体並んでいる所に出くわしたが、遠間から一気に攻めれば倒せると思い込んでしまったんだ。


 僕達は合図を出して一気に攻めたんだけど、それだけで3体が簡単に倒せるほどトレントも弱くない。1体は倒せても残り2体が毒の息を吐いてしまい、その息が森の中で薄れずにこっちに向かってきた。



 「「「「「「「ヴォォォエェーーーーッ!!!!」」」」」」」



 信じられないほどの臭さであり、これはオーク玉より少しマシ程度でしかなかった。毒を受けるとか以前の問題で、この臭いを受けちゃいけない。そもそも毒とかどうでもいいレベルだ。臭いがおかしい。


 慌てて距離をとり、【浄化魔法】の【クリーン】と【回復魔法】の【クリアポイズン】を使う。それで何とか臭いも無くなり助かったけど、鼻が曲がるというような次元ではなかった。鼻が腐り落ちるっていうレベルじゃないかな、アレは。


 僕達は何とか回復してからも、出来るだけ遠い距離から攻撃していく。ダメージが出ないけど、それよりは距離をとる事の方が大事だ。しっかしここまで臭いとは思わなかった。天然? でオーク玉に近い臭さを発揮するヤツが居るなんてさ。



 「何とか倒せたけど、3体が並んでるっていう事実を甘く見てたね。まさかオーク玉には届かないけど、それに近い臭さを発揮するとは思わなかったよ。信じられない程に臭かった」


 「本っ当にな! あそこまで臭いなんて思ってもみなかったぜ。こりゃマスクの事を本格的に考えた方がいいな、臭いって事を軽く考えちゃ駄目だ。おそろしい攻撃だと心の底から理解したわ」


 「信じられないほどに酷い臭いだったよ。毒とかどうでもいいね、あの臭いってだけで既にダメ。なんとしてもマスクか何かをゲットしなきゃ、まともに調査も出来ないよ。明日には復活してるかもしれないし」


 「ゲッ!? 確かにそうだ、明日には復活してるかも……! ここの調査って普通に考えて地獄じゃない? 流石に臭いが原因で調査が進まないとかメチャクチャでしょ」


 「言いたい事は分かるけど、今は調査を続けよう。せっかく倒したのに帰るのは流石にね、色々と勿体ないよ。明後日来た時にまた倒さなくちゃならなくなるだろうし」



 次に来た時もまた倒さなくちゃならない。この言葉を聞いた瞬間に皆がゲンナリした表情になった。気持ちは分かるけど事実だし、解決するまでは通う必要がある。


 そもそもクエストである以上は解決しなきゃいけないし、時間が掛かり過ぎると失敗になるのは間違い無い。それに鍛冶には魔力水が必要だし諦めるしかないね。そう言うと、ユウヤはガックリして項垂うなだれた。


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