0300・運営さん達23
『プレイヤー<コトブキ>が<死王のオーラ>を持つビッグハンマークラブを倒しましたが、ドロップしたハンマー部分は持ち帰るようです。今までのプレイヤー<コトブキ>の行動からすると迂闊にも思えますが……』
「言いたい事は分からなくもないけど、彼だって必ず最適な行動をとる訳じゃないよ。それにアレを持ち帰ったとて、必ず何かに使うとは限ってないだろう? ……ほら、聖人に聞きに行った。何か分からなかったから聞きに行ったんだとしたら普通の事さ。こちらは知っているけど、プレイヤーは知らない訳だしね」
「普通はそうなんだけど、彼は知ってたかのように最適な行動をとる事があるからしょうがないわよ。セントラルもそう思っての疑問なんだし、悪い事では無いわ。むしろ良い事よ」
『現在、槍の聖人オルテーが<死王>についての話をしています。これで少なくとも、ストーリーのメイン部分についての情報が出ました。今後の展開を予想する者が多く出ると思われますが……』
「どのみち今のところはどうにもならないし、星核を含めてプレイヤーには何も出来ない。想像するのは自由なんだから好きにさせればいいさ。それよりも聖人同士の戦いはいまだ行われないな」
「それは仕方ないんじゃないかしら? 武器も確保出来ていないみたいだしね。せめて魔法で戦う者以外の武器が充実してからでしょ、城取りが始まるのは。ある程度の装備は整いつつあるけど、まだ足りてないわね」
『木製の武器が大半ですが、それなりの数が揃えられつつあるようです。ウェーブ系魔法の有用性も知られていますので、使える者の武器は後回しにされている傾向にあります』
…
……
………
『剣の陣営が棍の陣営に突撃し宣戦布告しました。多少先行した者が勝手をした感はありますが、剣の陣営は準備を大凡整えられていると言えます。棍の陣営も多くの者が棍棒を持っていますので、準備は出来ていると言っていいでしょう』
「準備としては互角かな? 棍棒が多い分、棍の陣営の方が有利と言えるかも……どっちもメインは棍棒じゃないか! これじゃ、どっちが剣の陣営だか分かりゃしない!!」
「仕方ないでしょ。木で簡単に作れて高威力の武器。武器種ごとに分けてあるとはいえ、基本的には聖人の陣営よ? あくまでも聖人の得意武器で分けられているだけなんだから、棍棒が多くても仕方ないわ」
「それはそうなんだけど……しょうがないか。これで武器の持ち込み有りなら違ってたのかな? そこまで許可すると好き勝手な武器を持ち込みかねないし……次に生かすには、どうしたものか」
「そこは後でよ。今はこのイベントを恙無く終える事を考えなさい。反省会で幾らでも提言したらいいわ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2000年 10月17日 火曜日
『現在、未だに膠着状態であり、双方共にかなりの死亡者を出しながらも戦い続けています。剣の陣営も棍の陣営も素材が無く苦しい状況に追いやられていますが、【格闘術】スキルを持つ者は活躍しているようです』
「まあ、該当のスキルが無いとダメージ1だからしょうがない。武器があれば活躍出来るんだけどねー、壊れたらどんどん素材が無くなるし、4000人分の素材なんてある訳ないのよ。最初からこの姿を描けていたかどうかで話は変わるわ」
「ですねー。最初から敵の総大将狙いか、それとも一塊で突撃でもしてたら変わるんですけど、流石にそれをする事は無かったですね。どれだけ頑張っても4000人の内3500人は武器無しなんだから、その事実を前提にした編成をすれば有利に戦えるのに」
「それは無理よ。一度は城取りを行わないと見えてこないでしょう。……あらら、剣の方は打破する為に、罠に嵌める決断をしたようね。棍の陣営はどう出るのかしらねえ。性格設定上あっさりと引っ掛かりそうな気がするけど、プレイヤーが諌めればあるいは……」
「突っ込んでいきましたね。そして案の定、集中砲火を受けて不利になりましたよ? ここから一対一だと、どう考えても……負けるでしょう、当然」
『聖人は本来の能力ではなく一律同じ能力になっている為、一度ついてしまった差は覆せなかったようです。これが元の能力であれば一発逆転もありえたのですが、現在の能力では不可能です』
「という事で剣の陣営の勝ちね。これで多少なりとも状況が動くわ。他の陣営も座して見ていた訳でもなく、素材を集めたりして虎視眈々と狙っているでしょう。何より、剣と棍の陣営は随分と色々失っているもの、他の陣営から狙われる可能性も十分にあるわ」
『剣の陣営が槍の陣営に宣戦布告しました。これより城取りフェーズに移行します。槍の聖人オルテーは前線に出る事を選びました。人数差がありますので、篭もっても勝てないと判断したのでしょう』
「「………」」
「何を考えてるの、あの陣営は?」
「頭がおかしいんですかね? 完全に狂ってるとしか思えませんよ、この行動は。あまりにも予想外ですし、勝てる可能性をわざわざ減らしてるとしか思えません。勝った事で調子に乗ったんでしょうか?」
『青銅のプレートアーマーを着ているプロゲーマー<剣刀士>に対し、プレイヤー<コトブキ>と<イル>が引き摺り倒しての刺殺を敢行しています。上手く機能しているようで次々に倒していっています』
「あらら、棍の陣営との戦いでは猛威を振るったけど、弟君相手じゃ何の役にも立たなかったわねえ」
『棍の聖人カムランがプレイヤー<コトブキ>に稽古をつけているようです。その間に槍の聖人オルテーが、剣の聖人セイディアスを倒しました』
…
……
………
『斧の聖人アスクードが、槌の聖人メイディアを倒しました。これ以降は最終フェーズに移行します。………全ての魔物に<死王のオーラ>を付与しました。一定数が討伐されると、<死王の欠片>が出現します』
「ようやく最終フェーズというべきか、それとも一気に駆け足で進んだと言うべきか……判断に迷うわね。ま、ここまで来たら、後は聖人の仕事で終わるわ」
「聖人が<死王の欠片>を倒して終了。ラスボスのお披露目も終了ってところですね。他にはあったかな?」
「特に無いよ。流石に最終フェーズだからこっちに来たけど、途中から怖ろしい速度で進んだね。あれは予想できないけど、一部のバカの暴走だったみたいだし、あれは次に活かせるような情報じゃないよ」
『<死王の欠片>が出現しました。聖人達が集まります。……聖人達と<死王の欠片>の戦闘が始まりました。現在の設定では近くにプレイヤーが居れば巻き込むようになっています』
「プレイヤーが死ぬと強化されて回復する。このボス戦はプレイヤーが聖人の邪魔をしてしまうようになっていて、公式イベント後の聖人とプレイヤーの在り方に影響を与えるんだけど……殆ど意味無かったね」
「弟君があっさり情報を広めたからだけど、城の防衛から移動してきたにしては速いわねえ」
「というか、槍の陣営の城以外が全て破壊されてますよ。相変わらず、ここでも弟君は活躍かぁ。何かログインしてきたら防衛する羽目になってたみたいだけど……運が良いねえ、本当」
「おっと、そろそ、ああ! ちょっと、何で使えるのよ!? おかしいでしょ!?」
「あー……まあ、弟君だもんねえ。彼って物真似が得意だから。……これは【精密魔力操作】の時と同じパターンかしら?」
「既にあんまり驚かない自分がいるね。何だか彼に毒されてる気がする。あの【生命力操作】は普通、何処かで弟子入りしなきゃ駄目なんだけど、どうして見よう見まねで使えるんだか?」
『第三回公式イベントが終了しました。これにて全てのプレイヤーのアバターをマイルームへと送ります』




