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0299・運営さん達22




 2000年 10月15日 日曜日



 『8時になりましたのでイベントフィールドへの転移許可を出します。………滞りなく許可を出し、現在プレイヤーがイベントフィールドへと転移中。バグなどは見られません』


 「今回のイベントは将来へ向けての布石でもある。ラスボスのチラ見せはともかくとして、城取りがどの程度進むか、プレイヤー達が上手く戦略を立てて戦うのかをしっかり確認しないといけない」


 「場合によってはコレ系のイベントがお蔵入りになる可能性もありますし、これからの事を考えると、プレイヤーのニーズを確認する必要がありますからね。この系統のイベントが苦手な人が多いと、流石に続ける訳にはいきませんし」


 「限度はあるけどね。半分だとちょっとキツいのよ、出来れば8割、駄目でも7割は喜んでくれないと無理。半分だと、もう半分のプレイヤーはストレスを溜めるだけになってしまうわ」


 「このイベントはそこまで珍しい訳でもないですし、他の会社のゲームでも行われるイベントですから……そこまで嫌いな人の多いイベントでは無い筈です。城を取りあうだけですしね」


 「装備が無く、インベントリも禁止なのはウチだけでしょうけどね。インベントリ程度は許可しても良かったと思いますけど、そうすると素材を大量に得てしまい、早くイベントが終わりすぎますし……難しいところですか」


 「そうだな。今はワールドを精査している。できれば最短でも2日は稼ぎたい。それだけの時間があれば、最低限の精査は終わる。時間を掛けても仕方ないが、時間が少なすぎれば2日はメンテナンス期間と称して、時間を得る必要もあるだろう」


 「ワールド全体の精査ですからね。それだけ時間が掛かるのは仕方ないんですが、早々に終わるイベントでもありませんよ?」


 「分からないわ。開始してすぐに戦争を仕掛けるバカが出かねないという予想もあるの。実際、戦争を起こすには1人で済むのよ。誰かが敵陣に突撃して宣戦布告ボタンを押せば、城取りフェーズに移行する仕様だから」


 「何でそんなクソ仕様にしたんですか? せめても一定数の者が行かないと戦争開始できないようにしておけば……」


 「そういうのも含めての城取りだからなぁ……。色々な社がやっているイベントとはいえ、ウチの個性を出さないと企画が通らん。これで通ったのだから諦めろ。それよりプレイヤーがおかしな事になってないか調べるんだ。特に持ち込み禁止だからな、何か持ち込めてないかは詳しく調べてくれ」


 「それとインベントリですね。ちゃんと使用できない状態になっているかも調べる必要があります」



 …

 ……

 ………



 「どうやら特に問題はないようだ。既に各勢力が動いているが、槍の勢力は早くもやるべき事に気付いたか。というか弟君は早かったな。何を置いても、まずは輸送手段だと気付くところは流石だ」


 「他の勢力も徐々に気付いてきたようですけど、リヤカーという発想をしたのは弟君だけですね。あそこに住んでるのにリヤカーをすぐに発想するとは……普段どういう暮らしをしてるんでしょうか?」


 「こら、プライベートの詮索は御法度でしょ。お金持ちが多く集まる町だからといって、必ず合理的や機械的な町じゃないでしょう。特に本当の金持ちほど、普段は田舎的な所に住みたがるっていうしね」


 「あの伝統的な家屋なのに、中は最新の機械で溢れてる家ですか? 何かの動画で見た事ありますけど、無駄な事してるなーと思ってましたよ。とはいえ景観を損なわずに最新式の家にするなら、アレが一番良いんでしょうねえ」


 「余計な話をしてないで、しっかり監視しろ。おかしな挙動をしても困るんだからなー。後、そんなに暇ならワールド精査班に協力してくれても良いんだぞ?」


 「「真面目にやります」」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 10月16日 月曜日



 「昨日は何処の陣営も素材を集めて武器を作るのに終始していたね。多少先行して余計な事をするのも居たけど、あの程度なら予想の範疇だし問題はなし、と」


 『特に行動を起こしてはいませんが、一部の者が森の中心部分に気が付いたようです。<死王のオーラ>持ちの魔物の情報が、それぞれの陣営に広まるかもしれません』


 「それに関しては問題無いし、そもそもあれ爆弾だしね。持って帰って加工しても碌な事にならないし、聖人は持つのを絶対に断るから。その時点でヤバい物って分かるだろうけど、それでも持つ奴は居るだろうさ」


 『ワザと出来上がる物の性能は良くしてあります。なので他人より良い物を持ちたいという欲を刺激できるでしょう。その結果、しっかりと報いを受ける仕様ですが』


 「それはね。きっちりと受けてもらわないと困るし、<死王のオーラ>が利用してはいけない物という宣伝にもなる。それでも使う馬鹿は出るだろうけどね」


 『公式イベント後のワールドには<死王のオーラ>持ちが出現し始めます。それらの倒し方も、今回のイベントでレクチャー出来るでしょう』


 「ここからがゲームの本番だからねえ。<死王のオーラ>持ちを倒して有名になったり、伸し上がったり、成り上がったり。10万人になるのと同時に解禁だから、ちょうど良かったのかもしれない。プレイヤーが少ない中で成り上がりを解禁しても盛り上がらないからさ」


 『プレイヤー<コトブキ>が鋼鉄の槍を作成しました。使うでしょうが、ログアウト後に奪われる可能性が高いと思われます』


 「だろうね。あえてそうい風にしてあるから、隠したって誰かが奪っていくよ。内部で揉めてギクシャクするか、それとも諦めてスルーするか。彼の場合は慣れてるみたいだし、スルーして終わりかな?」


 『プレイヤー<コトブキ>が襲われたようですが、1人で難なく打ち倒しています。上手く範囲魔法にも対処していますので、そう簡単には倒されないでしょう』


 「1人なんだけどねえ。この場合は襲った側が不甲斐ないのか、弟君が強すぎるだけなのか。若干悩むところではあるけど、襲い方も稚拙だったし当然の結果かな?」


 『<死王のオーラ>を持つビッグハンマークラブが出現しました。現在プレイヤー<コトブキ>もそちらの方向に進んでいます。どうやら戦闘音で気付いたようです』


 「まあ<死王のオーラ>を持って出てくる魔物はランダムだから、強力な魔物の事もあれば簡単に勝てる場合もある。どのみち手に入れても使ってはいけない素材だから、倒される事も込みで出してるんだけど……」


 『プレイヤー<コトブキ>が【魔力隠蔽】と【闘気隠蔽】スキル持ちのプレイヤーに襲われましたが、ギリギリで回避しました』


 「あーあー、駄目だったら一目散に逃げないと殺されるよ。お、おお! 上手く弟君をかわした……これ弟君は気付いてるよね? 真っ直ぐ行ったから絶対に気付いて、また槍を投げてるし」


 『槍を投げつけられた側は痛みで硬直したようですが、その隙に股間を蹴り上げられ、倒された相手の首を圧し折ったようです。あれはリアルでも可能な事と推察します』


 「いや、うん……多分できるんだと思うけど、一瞬たりとも躊躇する事なく圧し折ったね。いやー、いつも以上にとんでもないのを見た気がするよ」


 『プレイヤー<コトブキ>がビッグハンマークラブに【浄化魔法】を使った後に【回復魔法】を使いました。最大のヘイトを向けられた為、現在自陣営の方角に逃げています』


 「逃げているというより、何処まで引っ張れるかを調べてる感じかな。そして随分引っ張った後に倒したか。これで彼は<死王のオーラ>持ちの倒し方を理解したろう」


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