0289・第三回公式イベント13
僕達が見ている前でそれぞれの陣営が争ったり、水色の毛の黒いオーラの虎を攻撃している。ただ怪我を受けても治っている感じがするので、自動回復持ちなのだろう。面倒なタイプだが、あの黒いオーラを持つのは全てそうだと考えた方がいいね。
倒し方を知らないのか、他の陣営のプレイヤー達は必死に攻撃しているが、そんな攻撃をものともせずに噛み付いて殺害していく。そして殺される毎に黒いオーラが増え、動きが速く強力になってる。間違いなく、昨日のビッグハンマークラブと一緒だ。
僕はフレンドコールでユウヤ達にそれを教えつつ、数が減ってきた他の陣営のプレイヤーごと叩き潰す案を説明する。
『ここまでプレイヤーが減って黒いヤツが強化されてるなら、少々の攻撃では問題ないだろうし、ユウヤが盾で防いでくれれば勝てるよ。黒い素材は碌なものじゃないし、オルテーさんの話を聞いても嫌な予感しかしないからね。できればここで潰したい』
『コトブキの言いたい事は分かる。後で何らかの干渉とかがありそう。具体的には乗っ取られるとか、アンデッドみたいにされるとか……』
『もしくは大爆発とかな? どう考えてもトラップとしか思えねーし、使える素材だって言われたっていうのが引っ掛かる。使わせようとしてんじゃねーの?』
『で、イベントの後半というかラストで更なるボスが出てきて、その時に黒い素材の武器で悪い事が起こるって訳ね。そういうパターンもあり得るから厄介よねえ』
『とにかく危険な物には近付かない方がいいし、使わない方がいいね。陣営全体に悪い効果とか起きたら目も当てられないよ』
『とりあえず減ってきたんで、一気に片付けてしまおうか。ユウヤはあの魔物の攻撃をいなしててくれる? その間に処理してしまうから』
『了解! とはいえ早めに頼むぜ』
そう言って僕達は一気に襲いかかる。槍は素早く急所を狙って突き、必要ならば手放して【ダークジャベリン】で攻撃。素早く槍を拾って、再び素早く突く。出来るだけ早く殲滅する事を目指したからか、あっという間に倒し終わった。
「ぐっ! くっそ、思ってるより強いぞコイツ。早くなんとかしてくれ!!」
ユウヤでも止めるのが精一杯みたいなので、僕達は素早く【浄化魔法】を使い<死王のオーラ>を減らす。そうする事によって敵を弱体化させていったからか、多少だけどユウヤに余裕が出てきた。
【回復魔法】は相当のヘイトをとってしまう為、まずは【浄化魔法】で<死王のオーラ>を減らすのが先だ。ここまでは皆と相談して決めているので、特に連携が崩れたりはしない。【浄化魔法】を持たないトモエとイルは周囲の警戒をしてくれている。
<死王のオーラ>が明らかに減り、そこまで強くない魔物になり下がったので一気に【回復魔法】を叩き込む。それによってヘイトを大きく稼いでしまうが、シールドバッシュなどでユウヤが立ち塞がる。
その間に【回復魔法】を連発し、水色の毛の虎を倒す事が出来た。すると黒い素材をドロップしたので確保しようとしたら、近くから襲ってくる者達が現れた。どうやら魔力や闘気を隠していたらしい。
僕は素早く素材を確保し、襲ってきた奴等の目の前で【粉砕】してやる。襲ってきた連中は驚いたが、今さら退けないのか攻め立ててきた。僕達も応戦し、ある程度の数を倒すと徐々に離脱していく。
流石に多勢に無勢は困るので、【精神感知】を併用しながら敵の居場所を調べる。ユウヤとトモエも調べているので、おそらく2人も生き残れば手に入れられるだろう。
敵を倒しつつ後退を続け、トモエとユウヤを先に逃がす形で僕らは撤退をする事が出来た。リヤカーの所へ戻った僕達は、城に牽いて行くリヤカーに手に入れた素材を載せていく。
「いやー、生き残れてよかったぜ。おかげで【看破】のスキルがゲット出来た。とはいえ、隠れている敵を見つけたりしなけりゃ手に入らないっていうのは、習得条件キツくないか?」
「仕方ないんじゃない? 【看破】っていうくらいなんだし、何もない所とかで手に入ったりはしないでしょ。もしかしたら隠れている魔物がいる場所があって、そこで見つければ【看破】は習得できるのかも」
「もしそうなら天使の星と悪魔の星で分けたりしないだろうから、運営ダンジョンかな? その可能性が……いや、どのみち隠れている魔物が居れば習得可能か」
「だから隠れている魔物を探すのが先だと思う。そこで見つけ出そうとすれば手に入るんだし、無理をする必要は無い。もちろん無理じゃなければ手に入れておくべきだけど」
再び僕達は森の中に入る。本来なら素材集めがメインであり、黒いオーラの奴を倒す必要なんて無かったんだ。無駄に時間を使ったけど、<死王のオーラ>持ちの倒し方も間違ってなかったので意味はあった。
それから昼まで素材を集めた僕達は、リヤカーに素材を載せて城に戻る。リヤカーの素材を預けたら、城の隅からマイルームへ転移して昼食をとる。それを終えたらログアウト、リアルへと戻った。
リアルで雑事と食事を終わらせたらログイン。マイルームから城へと転移し、午後からの活動を……って何? なんだか騒がしいね。
「おっ、ネクロ氏が来た。もしかしてリアルに戻ってたか? さっき公式からアナウンスがあって、剣の陣営が勝って、棍の陣営が負けたんだってさ! 棍の陣営が吸収されちまった」
「おい! 掲示板見ろ! 剣の陣営の奴等が攻めて来たって書いてるぞ。このまま宣戦布告する気じゃないだろうな!?」
この公式イベントでは敵の陣営に近付いた後で、<宣戦布告>ボタンを押すと戦争状態に突入する。そして戦争に突入すると、素材が全く入手出来なくなる……んだけど、何で連続して攻めて来るんだろう?。
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剣の聖人の陣営が、槍の聖人の陣営に攻め込みました。これ以降は城取りフェーズに以降します。両陣営は頑張って下さい
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「ああ! くっそ! あいつら碌に素材が無い筈だし、武器だって壊れてる筈だろ? 何で攻めてくんだよ!!」
「そんな事しるか! 敵に言え! 敵に!!」
皆が混乱する中、屋敷から出てきたオルテーさんが一喝する。
「静まれ!!! ここで騒いでも意味は無い! それよりも迎撃の為に出陣するぞ! 私に続け!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
五月蝿いなー。公式イベントだしテンション上がるのは分かるけど、そこまで声を上げなくてもいいと思うよ。それに本番は夜でしょ? 流石に昼の時間じゃそこまでログインしてる人は多くないし、総力戦となれば夜からだろうしね。
雌雄を決するのは夜だから、僕達は敵の数を削る事からするべきか。……いや、昼の時間に決めてしまわないとマズい。夜なら2陣営の数と戦わなくちゃいけなくなる、明らかにこっちが不利だ。
僕は近くに居た人にその事を話し、掲示板に書き込んでもらう。周りがオルテーさんと出陣していく中、何故か見た事のある人達が近くに来た。そのついでにユウヤ達も来たけど。
「近くに居るのは<検証班>の面々よ。<おすこい>とか<スターライト>も居るけどね。槍の陣営には、その2つのプロゲーマーチームしか居ないみたい」
「それでも居るだけマシだとは思う。でも剣の陣営にはおそらく<剣刀士>が居る。戦争を起こしまくってるのはコイツらかも」
「ああ。殺戮キチの連中なら可能性は高そう。もしかしたら連中は暴走してる?」
何だかありそうな出来事だね。<剣刀士>は殺戮大好きな連中で構成されてるから。




