0287・第三回公式イベント11
リヤカーの量産を頼まれた僕はリヤカーを牽いで森まで移動、森の近くまで進む。そこには僕以外にも物作りに精を出す人達が居た。素材も色々あったので木と銅と錫を使って伐採用の斧を作り木を伐っていく。
木をある程度伐って運び、リヤカーを作成していると、ユウヤ達がこちらに来た。そういえば今日はログインする日だったんだっけ? 1日中授業を受けて次の日はログイン。そんな生活だけど大丈夫なのかな?。
「まあ大丈夫だ。両親や爺さん婆さんの頃に比べればマシだしな。無駄な授業をダラダラ聞きに、いちいち学校まで毎日登校してたらしいからさ。今のカリキュラムは必要な知識を詰め込むだけって言われてるし、爺さん達の時代なんてどんだけ無駄な時間を過ごしてたんだろうな?」
「昔は教師が生徒の気を引く為に雑学を話したり、授業に関わる面白い話とかしてたみたい。そう聞いたけど、私達からすれば無駄な話なんて要らないとしか思わないよね。要点だけでいいし、勉強時間は短い方がいいよ」
「長い時間、学校に拘束されるうえ、無駄な話を聞かされるとか地獄よね。正直に言って、昔に生きてなくて良かったとしか思えない。学校に通うという時点で苦痛でしかないし」
そんな話をしつつユウヤとイルは木を伐りに、トモエとナツは魔物を倒しに行った。今は森の手前から多くの木を伐っているので、そこまで戻ってくるのに時間が掛かる訳じゃない。1日目に作った道を広げている感じだ。特に青銅もゲットしなきゃいけないからね。
木を伐る為の斧とか、武器にする為の木が足りてない。石でも良いんだけど、森の中で石を拾うにしても限りがあり、そこまで大量に落ちている訳でもない。幾らでも手に入るのは、ゴブリンが落とす青銅の方だ。なので本部はこちらをメインに考えている。
そう、昨日の重要な話を掲示板に流した辺りから、僕達の陣営では指示する本部を置いてはどうかという話になり、現在は本部が指示を出す形で色々な事を進めている。実際に情報を纏める部署はどうしたって必要だ。1陣営で4000人だからね。
本来なら1日目に設置するべきだったんだけど、1日目じゃ言う事を聞かない連中が多すぎるんだ。今は聞くみたいだけど、それは<死王>の事があるからでしかない。アレに関しては最新情報が皆欲しいし、それぐらいないと話を聞かないのが多いんだ。
持ってくる木をリヤカーにして、多くの人が魔物を倒して手に入る素材を持って帰れるようにする。<石工師>や<木工師>に<錬金術師>がフル稼働してリヤカーを量産してく様は圧巻だし、ピストン輸送している人員も凄い。
火曜日という通常の曜日にも関わらず多くの人がログインしているけど、それでも全体からずれば1割が居るかどうかでしかない。そんな人数でもやるべき事をやり、僕達は量産をひたすら続けた。
お昼になったので城へとリヤカーを牽いて戻ると、本部からリヤカーの量産は終わりにするように指示が来た。どうも置く場所に困り始めたらしい。なので午後からは素材集めの方に回ってほしいそうだ。
僕達を代表してユウヤが返事をし、僕達は城の隅からマイルームへと戻る。囲炉裏部屋で昼食を食べているとラスティアとキャスティが来たが、<死王>に関しては何も無かった事を言うと安堵していた。
僕は昼食の後、すぐにログアウトして現実へ。雑事を終わらせ昼食を食べた後、やるべき事を全て終わらせてログイン。マイルームから城へと転移し、ユウヤ達が来るのを待つ間に準備を行う。
木を貰って棍棒と盾を作り、石と木でメイスを作る。鳥の羽が無いので弓を作ってもしょうがない為、石と木で短剣を作り、皮を貰って鞭を作成。最後に石と木で槍を作ったら、既にログインしていた皆と出発だ。
リヤカーを牽きながら皆で移動しつつ、武器の話をする。
「鳥の魔物がいない所為で矢が作れない。今回の戦争は弓士にとっては活躍する場所が無い可能性もある。私は盗賊だけど、弓をメインに使っている人の素材も出してもらいたい」
「言いたい事は分かるけど、そもそも今回の戦いに弓の聖人は含まれてないんだよね。だから難しいんじゃないかな? 素材的には作れるけど、作れるのはクロズボウだね。ウィリアム・テルにでもなってみる?」
「息子の頭の上にリンゴを置く気も無いし、頭のおかしいゲスラーも居ない」
「頭がおかしいって……あー、そうだ。確かウィリアム・テルって代官か何かに難癖をつけられて、息子の頭の上のリンゴを射る事になるんだっけ? それが、ゲスラー?」
「そう。オーストリアが置いた代官で、確かスイスだったと思う。弓で有名な人物の事は多少だけど勉強した。もちろん鎮西八郎の事も」
「鎮西八郎って源為朝のことだっけ? 何か身長2メートル以上とか残っている人だけど、古い時代でも大きい人って居るからねえ……ない訳じゃないか。それよりも5人張りの弓を引いたって事の方が驚きだけどね」
「5人張りって、確か5人の大人で弦を張るって意味だったよね。それほど強い弓を引けたって事?」
「そう。5人張りの弓なんてそうそう引けない。そもそも和弓は世界最大の弓と言われる程に大きいうえ、その和弓の5人張りだから尋常じゃないぐらい力が要る」
「とんでもないわねえ……っと、着いた。午後からは素材集めだけど、コトブキが言ってた<死王のオーラ>を持つ魔物が居る可能性があるし注意ね。それと別の陣営の奴を見つけたら倒すわよ」
そう言ってリヤカーを置き、気合いを入れて森へと分け入って行く。浅い部分の魔物は狩られているので殆どおらず、僕達はどんどん奥へと入っていく。多少の魔物は居るので倒していき、ドロップした素材は背負い鞄の中へ。
そうやって進んで行くとオーガが出現し始めたので、倒して鉄を入手していると、近くから襲ってくる連中が現れた。僕が近付いてくる者が居るってユウヤに伝えていたからか、ユウヤは敵が投げてきた石を盾で防いだ。
「森の中とはいえ、奇襲とか面倒な事をしてくれるじゃねえか。槌か斧かどっちの奴等だ?」
「言うかよ、バカが! ここで死ねぐぇっ!?」
「ここで死ねって言いながら死んでいくって斬新だなー。何しに来たのか意味不明だけどさ」
「あっさりとブッ殺したわねえ。流石はコトブキとしか言い様がないけど」
「ゲッ!? ネクロ氏が居るぞ! 何でこんなに運が悪いんだよ!? 朝の占いでは今日の蟹座は一位だったのに!!」
「そんなもん見てるからだろ! あんなもんは当たらねえんだよ!! 大抵は自分じゃない誰かの運が良いだけだ。蟹座の誰かは一位でも、お前は最下位なんどぅぇっ!?」
「背を向けて逃げちゃ駄目だろ。頭をカチ割ってくれと言ってるようにしか見えないぜ?」
「クソッ! こうなったらオレ達の本当の強さを見せやるごぉっ!?」
「見せられちゃったね? 残念」
皆も割と気楽にボコボコにしてるけど、そこまで強い相手は居ないね。おそらく2陣か3陣だろうと思うけど、慣れてる感じからして2陣かな? 流石に1陣って事はないと思う。僕達と同じタイミングで開始してるんだし、もっと苦戦しなきゃおかしい。
それはともかくとして、森の中の戦いは始まったばかりだ。どこからどれだけ攻められるか分からないので、できるだけMPやOPは温存しておきたい。何より、【魔刃】や【闘刃】が使えるところは見せたくないんだよね。
まあ、碌に使う事は出来ないんだけど。




