0285・第三回公式イベント09
「うん? 死んだ人のエネルギーを星核に注ぐ事で封印を強化しているけど、<死王>という者の力の源も死んだ人なんですよね? それっていったいどういう事ですか?」
「ああ、その事は私も大天使に聞いた事がある。人が死した際の生命エネルギーを浄化して注いでいるらしい。死のエネルギーというのは、いわゆる負のエネルギーだ。そうではなく正のエネルギーとして星核に注ぐそうだ。そして正のエネルギーは<死王>が最も嫌がるものだと聞いた」
「成る程、そういう事だったんですか。【浄化魔法】を使うと黒いオーラが減りましたし、【回復魔法】を使うと激しく敵対してきました。アレはそういう理由からだったんですね」
「<死王のオーラ>を持つ以上、少なくとも<死王>のオーラが何処からか漏れているのだろう。神々が作られた場所なのに漏れているのはよく分からんが、少なくとも神々が行なわれているのだ、何かしらの意味はあるのだろうな」
「まあ、僕達にはよく分かりませんが、次に出てきたら【浄化魔法】と【回復魔法】で戦います。対処の仕方が分かれば、何とかなると思いますので。それで、この素材はどうしましょう?」
「ふむ。まあ、使えなくもないが……あまり良い物とは思えん。使うのは大丈夫だとは思うが、なるべくなら破壊しておいた方が良いだろう。<死王のオーラ>に乗っ取られるかもしれんからな」
「それは嫌ですね。分かりました、責任を持って破壊しておきます。他にも色々あるかもしれませんし、普通のビッグハンマークラブも居るかもしれません。あれなら重量もあって良い武器の素材として使えるでしょうし、他の陣営に奪われる前に確保しておきたいですね」
「なら、オレ達が書き込んでおくよ。後、さっき聞いた話も含めて。結構ヤバ気な情報だったし、オレ達の陣営だけでも拡散しておかないとマズいかもしれない。その1匹だけとは限ってないからさ」
「だな。定期的に掲示板を覗いて調べておいた方がいい。知らずに突っ込んで敵を強化するんじゃ目も当てられないからな。むしろ強くなる前に倒すか、強いなら他の陣営に押し付けた方がいい。そしてドロップを拾ったヤツを倒せば手に入れられないだろ」
「そうだな。その方向で掲示板に書き込んでおくか」
オルテーさんの所を辞し、掲示板の事を他の人達に任せた僕は、鍛冶師の所へいって槍を預けておく。城の隅に行って黒いハンマー腕を【粉砕】して壊し、マイルームへと転移。そのまま囲炉裏部屋でログアウト、現実へと戻る。
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雑事を終わらせ昼食作りをしていると、シズが下りてきて愚痴を零す。どうやら公式イベントに参加したいようだが、そろそろ授業も熟しておかなければいけないらしい。
「といってもさ、私も結構なコマ数を終わらせてるから、そこまででもないんだけどね。このまま先を考えると、公式イベントの間に進ませておきたいのよ。他のプレイヤーも公式イベントの間はそこまで強くもなれないだろうし、新しい発見もないでしょ」
「ああ、そういう事。要するに他のプレイヤーが進まないであろう間に、授業の方を終わらせておこうと。この後のゲームの進み方を考えると、確かにシナリオが進んでいくと加速度的に強くなってく……かな? レベル制限かかってるけど」
「今は仕方ないけど、これから先どこまでレベル上がるか分からないし、カンストまで行っても終わりそうにないのよねー。だって隠しパラメータがあるもの」
「そっちはどこまで成長するか……確かに分からないか。元々出てこない数値だし、何を隠しパラメータにしているかも分からない。それこそ本人の反射速度とか記憶力とか運動センスなんかも隠しパラメータだったりして」
「それを記憶しておいて、そこから補正をかけてるって事? ……無い訳じゃなさそうなのが何とも言えないわ。実際どんなパラメータが隠されていたって、私達には分からない訳だし」
そんな事を話しつつ、僕は午前中にあった事を話しながら配膳する。今日は冷凍のピラフとコンソメスープだ。さっと火が通ったら食べられる野菜とウィンナーを入れただけの、簡単お手軽スープだけど。
「別に良いじゃない、家で食べる物なんだし。それより<死王>っていうのが怪しいけど、もしかしてラスボス? 何かラスボスの顔見せって感じがするのは気のせい……? よくあるじゃない、そういうパターン」
「徐々に顔見せしてくる感じ? 分からなくもないけど、どうなんだろうね。わざわざ星を2つに分けて封印したって言ってたくらいだし、最後は星を1つに戻して最終決戦?」
「そうそう。それまでは2つの星で戦争しながら封印を強化して、プレイヤーが強くなるにつれてラスボスのちょっかいが増える感じ。で、ラストに封印が解けて1つの星になってから色々やって、ラストバトル」
「最初は天使の星と悪魔の星で戦争して、とか言ってたけど、それは生命エネルギーを集める為の嘘だったって事かな? 勝つ為の何かを見つけるって、まんま星核の事だろうし。あれ? 元の目的のままだったら星が1つになってるね?」
「アレじゃない? 最初に示された目的すら、<死王>ってヤツに乗っ取られてた何かのメッセージだったって感じ。実は勇者が頼りにしていた情報はラスボスから齎されていた!? ってたまにあるし」
「いや、まあ、うん。何だっけ? どっかで聞いた事があるけど、出てこないや」
「私もどっかで聞いた事があるけど出てこないのよ。まあ、ゲームタイトルとかどうでもいいし、重要なのはそれっぽいのはあるって事。<死王>とかいうヤツが流した情報とか、もしくは<死王>を崇めている奴等がいるかも」
「秘密結社って感じで暗躍してそうだね? それらと戦うというか、色々なイベントで振り回されそう。……あれ? ブラッディアに<影の栄華>とかいう組織があった筈だけど、もしかしてアレもそうなのかな?」
「そんなのあったの? まあ、コトブキが知ってるくらいだから、そこまでの組織じゃないんだと思う。本当に<死王>とやらが絡んでるなら、こんなに早くは出てこないでしょ」
「それは確かにそうかも」
昼食を食べ終わり部屋に戻ったら、再びログイン。午後からもイベントの為に素材集めだ。月曜日だからね、普段の曜日じゃ人が集まるのはむしろ夜になる。なので夜に向けての素材集めと、武器作りがメインかな。
午後からの予定を立てつつ囲炉裏部屋で起き上がると、ラスティアとキャスティが居た。どうしたんだろうと思っていると、イベントの進捗が聞きたかったらしい。今までと違い、急に暇になったので困ってるみたいだ。
なので話すも、2人とも険しい顔をしている。どうも2人とも<死王>の事を知っているみたいだ。
「私達が生まれる遥か前の事だけどね、でも大悪魔から聞いてるわ。かつての星は人間種が完全に滅んでしまったらしいのよ、<死王>とやらの所為で。大悪魔いわく、<死王>というのは死に向かうモノなんだそうよ」
「私も大天使様から聞いた事があります。かつての星に居た人間種は死に絶え、それでも<死王>は暴れ続けていたそうです。そもそも<死王>とは死という概念でもあるそうで、滅ぼす事は不可能なのだと仰られていました」
「私もそう聞いたわ。神々と大天使と大悪魔がやったのは、<死王>に正のエネルギーを叩き付けて相殺する事だったそうよ。そうやって弱らせたうえで封印したらしいわ。あれは死を撒き散らすだけ。大悪魔はそう言ってた」
つまりラスボス君は倒せない訳ね。そういうラスボスが出てくる作品もあるなぁ。




