表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
284/563

0284・第三回公式イベント08




 棍棒という原始的な暴力に対する対抗策は横に置いておき、僕は再びオーガを倒していく。五芒星の中心部分がどれだけ広いのかは分からないけど、それなりに広いのは間違いないみたいだ。結構オーガが湧いている。


 そんな中、この場に不釣合いな魔物を見つけた。それはたまたま聞こえてきた戦闘音に近付く事で発覚した事だ。



 「クソッ! また殺されたぞ! お前ら魔法でもっと攻撃しろ、ただしアイツをやるんじゃないぞ!!」


 「分かってるし、やってるだろうが!! てめぇも口だけじゃなく、もっと戦えや!!」


 「お前ら喧嘩してる場合か! 他の陣営の奴等が集まってるぞ! 早く倒せ!!」


 「倒しても拾った奴が殺されたら無くなるだろうが!! まずは他の陣営の奴等を排除しろ!!」



 彼らが戦ってる魔物は蟹だ。それもビッグハンマークラブ。レベルは高いものの倒すのにそこまで苦労はしないと思うんだが、何故かそのビッグハンマークラブは真っ黒なオーラを噴出している。鑑定には真っ黒なオーラの事は出ていないし、どういう事だろう?。


 僕は敢えて出る事もせず、隠れて様子を窺う事にした。もちろん周囲の事は調べているので襲われる事は無い。更に言えば、少し離れた所で様子を伺っているので、ここまで来たりはしないだろう。複数の陣営が入り乱れて、おかしな事になっているし、そんな混乱に踏み込んでもしょうがない。


 観察していると蟹の事が多少は分かった。誰かが死ぬと黒いオーラが増えてるように見えるし、動きが速くなっている。左腕のハンマーの威力も上がってる気がするし、どうにも嫌な予感がしてならない。アイツの近くで死ぬのって駄目なんじゃないの?。


 しかも魔法が当たっても碌に効いていないような気がする。何で!? ……チィ! 危なかった!! まさか後ろからナイフが飛んでくるとはね! やってくれるよ、まったく!!



 「チッ! 失敗したか。調子に乗ってるネクロ野郎を殺すチャンスだったんだがな」



 そう言って覆面男は逃走したけど、僕は全力の身体強化で一気に追いかける。相手はビックリしているが、僕にとっては遅い。しかし相手は左手に持っていた砂を投げつけてきた。僕は咄嗟に顔を庇うも、相手との距離を離されてしまう。


 追いかけるも相手は適当にジグザグ動き、途中で魔力反応と闘気反応が消えた。僕は仙力を練りつつ感知してみるも何も起こらなかったので、心力を練り感知しようとする。すると、見つからなかった敵を発見した。



 ―――――――――――――――


 ※スキル:【精神感知】を習得しました

 ※スキル:【看破】を習得しました


 ―――――――――――――――



 どうやら敵は魔力や闘気を隠せても。精神を隠す事は出来ないらしい。そして隠れて息を潜め、僕をやり過ごそうとしている。ここは森の中だ、一度追えなくなった相手を再び探すのは難しい。先ほどまでなら。


 僕は真っ直ぐ先程のヤツの所に走り出す。向こうも居場所がバレてると悟ったんだろう、慌てて動き出すも遅い。相手は再び何かを投げようとしてきたが、それより速く僕は持っている槍を投げつけた。


 流石に武器を投げてくる事は予想していなかったのだろう、当たった槍の柄で痛みが走ったらしく当たった所を押さえている。戦闘中に余計な行動をするマヌケが調子に乗るな!。


 僕は素早く相手に近付くと股間を全力で蹴り上げる。もちろん爪先で相手の股間を潰すようにだ。そして前に倒れる相手を上から押さえつけ、側頭部と顎に手を回して捻って折る!!。


 「ボギュ」とも「ゴギュ」とも聞こえる音と共に相手の首は折れ、その一撃で死亡判定になったのか相手は消えた。隠れて潜んでるだけのヤツが、何故調子に乗るのか理解出来ないね。せめて僕を倒せるだけの実力を持ちなよ、下らない。


 槍を拾った僕は、再び先程の蟹の所へ行く。すると、プレイヤーとおぼしき人達は居なくなっており、黒いオーラを噴出する蟹だけが残っていた。どうやら全員殺されたらしく、魔力も闘気も精神も見つからない。


 僕は蟹を見ながら幾つか思いついた事をやってみる。まずは魔法だけど、この蟹には碌に効いていないどころか吸収されてたっぽいんだよね。それと黒いオーラという事で、僕は【クリア】を使ってみた。


 多少黒いオーラを減らせた気がするのと、蟹があからさまに僕をターゲットとして攻めてきた。さっきまで動かずにジッとしてたのにだ。という事は多少の効果があるって事だね。しかしそこまでじゃない……と。


 という事は、もしかしてこっち? そう思い放った魔法は覿面てきめんの効果を発揮し、蟹は本気で僕を追いかけてきた。



 「ギジッ! ギジュジュギィッ!! グジュブジュルギチグジュギィ!!!!」



 何だかよく分からないけど、激怒している事だけは分かる。そんな蟹を連れて、僕は自陣営の方へと誘導していく。その間も絶えず【クリア】と【ヒール】を使い、一度【リジェネレイト】を使用した。


 何故か【リジェネレイト】は効かず、【ヒール】だけが効くみたいだ。僕を追いかけてくる蟹だが、不思議な事に槍の陣営の領域に入っても追いかけてくる。僕は更に【クリア】と【ヒール】を連発し、敵を誘導し続けた。


 途中でリヤカーを回収し、牽きながらも追いかけられ続ける。更に逃げながら【クリア】と【ヒール】を使うと、徐々にだが速度が落ちてきた。どうも黒いオーラが減ると弱るらしい。黒いオーラで動いてるんだろうか?。


 城が見える所まで追いかけさせたが、そこまでだった。最後は【ヒール】を受けて動きを止め、倒れたらそのまま消えていく。残ったのは黒いオーラが付いて真っ黒になったハンマーだけ。これがドロップらしい。


 奇妙ではあるものの持っても大丈夫だったのでリヤカーに載せ、そのまま城へと戻る。気付いたら昼前だったので、ちょうど良いタイミングだったと思おう。


 このハンマーをどうするか困った僕は、いったん持ち帰ってオルテーさんに使うかどうかを聞く事にした。これも結構良い素材ではあるし、使えるなら使いたい。勿体ないしね。


 リヤカーを牽いて中に入ると、周りから素材を楽しみに生産職が集まってきた。皆がリヤカーの中を見て頭の上に疑問符を浮かべているが、僕はオルテーさんに使うか聞いてからだといい、持って屋敷へと行く。


 ゴーレムに事情を説明すると屋敷の中へと案内されたので、僕は黒いハンマーを持ってオルテーさんの所へと行く。僕を覚えていたのか笑顔で出迎えてくれたが、すぐに険しい顔に変わった。



 「それをいったい何処で手に入れた?」


 「何処と言われても……森の中を進んでいたら戦闘音が聞こえたので近付くと、真っ黒なオーラを噴出するビッグハンマークラブと思わしき蟹と戦っている集団がいました。これはその蟹のハンマー腕です。何故か【回復魔法】で倒せましたけど」


 「!? ……その蟹の魔物は、真っ黒なオーラを噴出していたのだな? 【回復魔法】で倒せたのだな!?」


 「はい。【回復魔法】で倒せましたけど……あの真っ黒なオーラに何かあるんですか?」


 「………それは多分だが<死王のオーラ>だろう。神話の中の話だが、かつての星は<死王>と呼ばれる死を操る者に滅ぼされたのだそうだ。その死王に対し神々は大天使と大悪魔を創造、死王を二つに分けて封印する事に成功したらしい」


 「はあ……それが神話に書かれている事なんですね」


 「そうだ。星ごと2つに分けられて死王は封印され、星核と呼ばれる物を使って半分の星でも崩壊しないようにしたと書かれている。そして大天使の司る半分の星と、大悪魔の司る半分の星が出来たのだ。絶えず争っているのは生命エネルギーの為だと聞く」


 「「「「「生命エネルギー?」」」」」


 「人々が死した際の生命エネルギーを星核に注ぎ、死王の封印を強化しているのだ。私も大天使から一度しか聞いた事がないが、その所為で争いを無くす事は出来ないと言われた。そして<死王>の力の源は死だ。何かが死ぬと、その力を取り込む形で強くなるという」



 それで蟹が強化されてたのか。


27話の誤字報告、ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
FF5の無の力を封印した方法と似たようなかんじ?ですかね。
ゾンビ蟹だったのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ