0283・第三回公式イベント07
2000年 10月16日 月曜日 AM8:26
本日もいつも通りにログインではあるんだけど、昨日と違って月曜日である以上、そこまで人は多くないだろう。とはいえ居ない訳ではないだろうし、プロゲーマーなどはログインしてる筈。どこの陣営に居るのかは知らないけど。
トモエは授業を受けるって言ってたから今日は居ない。なので僕一人フリーなのだが、公式イベント中なのでダラダラする事もできないし……物作りくらいしかする事が無いかな? とりあえずログインしてから考えよう。
囲炉裏部屋で起きたら倉庫に近付き、プレイヤーマーケットの売り上げを倉庫に入れる。公式イベント中だけど、それなりには売れてるね? キャスティの野菜は特に売れてるから、料理の為に買ったんだろう。マイルームでの食料が居るし。
まあ、公式イベント中は飢餓度と渇水度を回復させるアイテムは販売されているので、安く手に入れられる。味は驚くほど不味いらしいけど、お金の無い第3陣用だろうと思う。1陣や2陣なら不味い物を買う必要ないし、お金持ってるからね。
囲炉裏部屋で準備を整えたら城へと転移する。疎らに人は居るものの少ない事を確認しつつ、僕は城を出て森の近くへと移動した。周囲を確認するも誰も居ないので、石を拾い集めて石だけ斧を作り、木を伐り倒す。
木を錬金術で斧の形にしたら、石だけ斧を石の塊に変え刃の部分を被覆する。石木斧になったら、木を伐り倒していきリヤカーを作成していく。昨日散々作ったからそこまで苦労せずに作れるけど、これに慣れるってどうなんだろうね? そんな気持ちになってくる。
リヤカーが完成したら、木の槍を作って穂先に石を被覆して武器の完成。昨日は碌に戦闘もしていないので、今日は自分の手で鉄を手に入れようと思う。ただし炭がないと鋼鉄に変えられないんだよね。そこは城の人達と交渉かな。
リヤカーを牽きつつ魔物を倒し、適当に素材を載せていく。【精密魔力感知・下級】と【練気感知・下級】を使い、魔力や闘気を感知しながら敵を倒す。それなりに数は居るが、おそらく殆どが魔物だろう。
僕は森に多少入りつつゴブリンだったり蜘蛛だったりという弱い魔物を倒していく。素材を得たらリヤカーに載せ、ウロウロしつつ次々に倒して一杯になったら戻る。身体強化で牽くので、それなりに速い速度で戻る事が出来た。
城に着いたら素材が置かれている倉庫に置いていき、リヤカーを殆ど空にしたら再び森へ。その時に炭を貰う約束も出来たので良かった。
再び前線へと行き、森の中の道をリヤカーを牽きながら進んで行く。出てくる魔物や近くの魔物を倒し、素材を載せつつ進んで行くと、木が伐られていない場所まで来た。昨日はここまでで終わったんだろう。
実際、ある程度の広さの道を作っているので、それなりの木を伐らないと道にはならない。このまま真っ直ぐ道を切り拓いていけば、最後には棍の聖人の城へと到達するとは思う。もちろん真っ直ぐに進んでいれば、だが。
ここから木を伐っていくべきか、それとも伐らずに突っ込むべきかと悩んでいると、魔物の声と戦闘音が聞こえてきた。この声は……どうやらオーガと戦っているらしい。さて、この状況において僕はどうするべきだろう。
1つ目はこのまま近付かずにスルーする。2つ目は介入して両方倒す。3つ目……は、こっちにちょっかいを掛けようとしている奴等だけ殺す。うん、3がベストだね。とりあえず拾った石を持って……と。
【精密魔力感知・下級】と【練気感知・下級】には、しっかりと近くに潜んでいる奴等が感知できている。たまに揺らぐので、おそらく何がしかの隠蔽スキルを使っているのだろう。感知できていない可能性は否定できないけど、今のところは大丈夫な筈。
「ガッ!?」
木が邪魔しないルートに居た相手に石を投げると、即座に周囲の奴等が襲ってきた。僕は【ダークウェーブ】を連発して相手の魔法を潰し、闘気バインドを使って身動きがとれないようにしていく。
隙があれば素早く喉下を刺して抉りこみ、あるいは鎧を着ていない心臓を突き刺して抉り殺す。あっと言う間に形勢が不利になった相手は逃亡しようとするが、それすら追いかけて殺害し、僕の周りから敵の反応は完全に無くなった。
オーガの方がどうなったのかは分からないが、既に戦闘音はしていない。おそらく倒した後でさっさと逃げたのだろう。僕は追う事もせずにオーガを探して歩く。何度か遭遇したので殺害するも、あっさりと武器が壊れた。
これに関しては諦めるしかないが、どうしたものか……。そう考えている間もオーガを魔法で倒しつつ、鉄を入手していく。皮で作った背負い鞄は持っているものの、一纏めにした鉄がいっぱいまで入れられる程の耐久力は無い。
仕方なく千切れそうな量の鉄を入れ、更にオーガを倒した分は抱えてリヤカーへと戻る。誰にも壊されておらず無事だったリヤカーに全て載せ、僕は身体強化を駆使して城へと戻る。もちろん周囲の反応を入念に探りつつ、安全を確保しながらだ。
城まで戻った僕は鉄を渡して炭を分けてもらい、鋼鉄を作ったら笹穂槍の穂先と石突などの部品を作る。後は置いておいた木で柄を作って組み立てれば完成。久しぶりに鋼鉄の笹穂槍が持てるよ。
とはいえ装備は持つしかないし、同じ陣営の誰かに奪われる可能性も十分にあるんだよね。何とかしたいんだけど、誰も良い案が浮かばなかった。何か意図的に問題が起きるようなルールにしてあると思うんだ、今回の公式イベント。
何をさせたいのか知らないけど、面倒な事だよねえ。……とりあえず、昼食の際には誰かに預けておこう。そう思った僕は余った鉄を鍛冶師に預けて、再びリヤカーを牽いて森の中へと進む。
魔物を逐一狩っているからか、そこまでリポップしていないらしく快適に進んでいく。そんな中、再び何処の陣営の者か知らないが襲ってきた。棍棒を持ってるからといって、棍の聖人の陣営とは限っていない。
僕は【精密魔力感知・下級】で探りつつ、魔力が高まると【ダークウェーブ】を使って攻撃する。範囲魔法を使われたら確実にダメージを受けるので、早めに潰したいんだ。ホラね。
「ガァッ!?」
「クソッ! 範囲魔法が潰された!! 魔法は使うな、何故かタイミングがバレてるぞ! 囲んで殺せ!!」
それは無理じゃないかなー、と思いつつも着実に急所を突き刺して殺害していく。今は鋼鉄の笹穂槍なので、相手の首を刎ねる事も不可能じゃない。鋼鉄なので魔力や闘気で強化は出来ないが、十分な切れ味を誇っている。
ハッキリ言えば、鎧が無い相手なんて容易く殺す事が出来る程度には強い。それが鋼鉄製の武器だ。相手は石と木の武器だったり青銅製の武器なので、僕の方が終始有利なまま戦闘は終了。ま、僕が負けるような相手じゃないね。
「しっかし、棍棒はこんな状況でも役に立つんだなぁ。本気で侮れない武器だよ」
そう、棍棒の威力は絶大で、当たらなかったものの威力自体はマズいものではあった。たぶん喰らえば一撃で死ぬか、良くて体の何処かが壊れていたと思う。腕が折れるか足が折れるか。どのみち棍棒は舐めちゃいけない。
蛮族武器などと言われるが、相対すると怖ろしいのがよく分かる。そもそも打撃系の武器って強力だし、プレートアーマーでも衝撃は殺せない。喰らって凹んだら手足が動かせなくなる攻撃だし、そうなったら隙間から突き刺されて死ぬだけになる。
原始的な暴力ではあるものの、後世まで侮れない武器である事は間違いない。どう対処したものか……。




