0280・第三回公式イベント04
昼食を終えて再びログインし、マイルームから城へと転移する。状況は殆ど変わっていないようで、今も武器を作ったりなどをしているらしい。僕達も再び森の近くへと行き、他の人達と一緒に物作りを手伝う。
トモエは森の中へと入って行き、魔物を倒して素材を稼ぐそうだ。何と言っても1陣営で凡そ4000人分の武器だ。そうそう簡単には揃わない。前線で物作りを始めると、周りから話しかけられるので状況自体はだいたい分かる。
「何でも森を真っ直ぐ進んでたヤツが、敵の陣営の奴と戦闘になったんだってよ。何処のヤツかは分からないから何とも言えないらしいけど、それでも接触したって事は、そこまで遠くはないんだろうな。他の陣営まで」
「そうかな? 私はそうは思わないけど。だって相手も突っ込んできた可能性があるし、斥候が突っ切って調べてるなら、どれだけの距離を進んできたか分からないしね。もしかしたら朝からずっと進んでたのかもしれない」
「確かにそれなら距離は遠い事になるな。進めば進むほど魔物が強くなってるって聞くから、出会ったそいつも帰るに帰れなくなったんじゃないか? 武器も何も持ってなかったらしいし」
「でもそれは死んだ時用かもしれないだろ? 死んで失うなら最初から持たせないと思うけどな。オレだったら絶対に持たせないから、持ってなかった事に意味は無いだろ」
「そういう事を言い始めたら幾らでも言えるんだから、意味は無いんじゃない? 今大事な事は接敵したことだけだよ。敵に会ったのがどれぐらいの距離であり、真っ直ぐ行けてたかも不明なんでしょ?」
「ああ、コトブキ君の言う通りさ。そもそも森の中で真っ直ぐ進めていたかも怪しいし、それは相手も変わらない。もしかしたら南の斧の陣営の斥候だったかもしれないしね。そもそも真っ直ぐ移動してると思い込んでいただけの可能性は高いよ」
「まあ、マップも見えなければ方角も分からないしね。この森の道だってなるべく真っ直ぐにしているだけで、本当に真っ直ぐなのかは分かってない。何よりこっちは斥候じゃなかったんでしょ? 調子に乗って前に進んで行った奴等が敵に遭遇しただけ」
「その言い方は無いんじゃねえの? 一応オレのパーティーメンバーなんだけどな」
「なら言っておきなさいよ、情報ぐらいはしっかり上げろって。書き込みが適当すぎるし、自分達の位置の把握すらしてないじゃない。ただ敵に会った、倒した。それだけで何を判断しろっていうの? 今はまだ情報集めの段階でしょうに」
「そりゃあ、そうだけどよ……」
「どういう風に進んで、何処で敵に遭遇し、どんな武器を使う敵と戦ったか。せめてそれぐらいの情報ないと判断のしようがない。そのうえ、その敵が何処の陣営かなんて分からないし決め付けない方がいい」
「やられる前に平気で嘘を吐く可能性もあるしね。勘違いさせられて相手の術中に嵌まると危険だから、相手の言う事を鵜呑みになんてしないし、情報戦も含めてしなきゃいけないから大変だよ。そういう意味では、君のパーティーメンバーは駄目だね」
「というか、そもそもだけど貴方のパーティーメンバーって斥候じゃないでしょ? むしろ斥候職か斥候ビルドの邪魔をしてるんだから退かせなさいよ。情報が取れなくなったり錯綜したらどうするつもり?」
「いや、オレにそんなこと言われても……あいつら、すぐに勝手な事するし……」
「それってもうパーティー抜けた方がよくない? 勝手な事するヤツなんて、いずれ必ず揉め事を起こすわよ。その時は間違いなく連帯責任になるでしょうけど、とばっちり受けるのは覚悟しなさい」
「………」
「自分は何もやってないって言ったところで通用しないし、それを言うと勝手な事する連中から逆恨みされるんだよね。あいつだけ逃げようとしてる……って感じで。昔あったんだけど、その時から身勝手な連中とは絶対に組まなくなったよ。コトブキ君は?」
「僕は基本ソロだから何とも……。トモエと組んだり、知り合いと組んだりするぐらいかな。基本的にはソロで好きにやるし、そういうビルドにしてるよ。中途半端になりがちだけど、別に最強なんて目指してないからどうでもいいしね」
「「「………」」」
「何か言いたそうな感じで見てくるけど、僕は最強になれるビルドとか興味ないよ? 自分が快適に遊べるビルドにして、そのうえでどれだけ強くなれるか頑張るのであって、無理に最強ビルドとかにしたりはしないよ。それに関しては一度も無いね」
「一度も?」
「うん、一度も。そもそも最強の定義って人によって違うし、自分がやりたくもない事を、ゲームで強いというだけでやりたくないんだよね。ストレス溜まりそうだし、そもそもゲームが楽しくなさそうだからさ」
「まあ、そういうのは聞くわね。散々睡眠時間とか削ってやり込んで、でもプロには敵わない自己満足で終わるって。やってて凄く空しくなるらしいわよ。どのみちサービス終了したら無くなるんだし、何の為にやったか分からなくなるんだって。そういう人って、結局ゲームからも引退するみたい」
「そもそもゲームなんて娯楽ですしね。娯楽じゃなくなった時点で、きっとその人にとってはゲームじゃないんでしょう。しかもそれで手に入れたものが、他人にマウントがとれるだけ。それも一時的にです。それは空しくなるでしょう」
「………あいつらとのパーティー抜けるか。聞いてると1人で気ままにやってても楽しそうだし、他にもプレイヤー沢山いるしな。オレまでとばっちり受けるの嫌だし、それに何回か既に受けてるし」
「被害受けてるなら、もっと早くに決めたら? 私なんて<検証班>の一人だけど、ソロっぽい感じでゲームしてるしね。<検証班>で集まって突撃したりもするけど、基本はソロでも楽しめるし、ギルドに入ればNPCと共闘できるし」
「「「えっ!?」」」
NPCと共闘できるの? イベントでもなく? ……初耳なんで驚いたよ。まさか第三回の公式イベントで初めて知るとは……。まあ、僕もソロでずっとやってるし、他の人のプレイ内容なんて掲示板で読むぐらいだからなぁ。知らない事も沢山あるか。
「ギルドに登録して依頼を熟せば、そのうち誘われたりするのよ。何回か仕事を一緒にやれば、こっちから誘うとダンジョンについてきてくれたりもするの。もしくは稼ぎの穴場に連れて行ってもらえたりとか」
「予想以上にしっかり作られてるんだなー。依頼って事は傭兵ギルド? それとも狩人ギルド? ダンジョンなら探索ギルドだろうけど、それは違うみたいだし」
「私が登録してるのは狩人ギルド。そこの依頼に魔物の皮とかあるから、それを納品していったら指名依頼とか来るようになるの。複数のパーティーに対する指名依頼なんかもあって、そういう時に仲良くしておくと、強いNPCと知り合いになれる事もあるわ」
「「「へー……」」」
もしかしこのゲームのソロって凄く充実してる? 何だかそんな気がするけど、リアルっぽく考えたら普通の事かな。色々な人が居て、色々なパーティー組んで戦ったりしてる。
リアルを謳ってるゲームよりもリアルしてる気がするけど、このゲームってファンタジー”を”リアルにした感じだよね。ファンタジー”に”リアルを持ち込んでるんじゃなくて。
急所を突いても○○ダメージ! っていうゲームじゃなく、急所を突いたら回復されない限りは死ぬゲームだからそう思うのかな?。
まあ、【回復魔法】で回復する様子は実にファンタジーだけどさ。




