0028・【採取】スキルの事と友人達
何か色々あったものの、女王様一行は転移魔法で帰って行った。そのまま僕は師匠に促されるままに昼食を食べる。その昼食の席で、ある事を師匠に聞いてみた。
「師匠。【伐採】のスキルは得られたのですが、【採取】のスキルが得られないのは何故でしょう? 僕は<澱み草>を採ったり、石や枝を拾ったりしているのですが」
「コトブキよ、お主は採取活動というものを舐めておるのか? 草1つとってみても葉しか採ってはならぬ物もあるし、根ごと抜かねばならぬ物もある。それぞれの植物の特性を学ばなければ【採取】スキルが手に入る筈があるまい」
「ああ、そういう事だったんですね。という事は思っているよりも【採取】スキルの取得は難しいのかー」
「たわけ。そなたは【植物鑑定】を取得したであろう。それだけの知識があれば、後は様々な物を採取してくればよい。そなたにはまだ早いが、屍人の森の中層には薬草が複数生えておる。それらを採取すれば【採取】スキルも手に入ろう」
「あっ、中層なら今日行きました。2戦して即座に戻ってきましたが、しっかり準備すれば戦えなくはないという感じですね。おそらく進化個体だと思うのですが、よくあんな強いのが浅層に出てこないものです」
「妾が結界を張っておるからに決まっておろうが。それでもすり抜けるものはおるが、それはスケルトンに始末させておる。ここに妾が住んでおるのは<屍人の森>の瘴気を溢れさせぬ為よ。魔力が豊富で都合が良かったのもあるがの」
「ダンジョンスタンピードを押さえ込む為じゃなかったんですね? ゼット町でそんな事を聞きましたけど」
「そちらはついでじゃな。国との契約というか条件にも含まれておるが、<屍人の森>の瘴気の方が重要度は上じゃ。同時に発生した場合、妾は<屍人の森>を優先する。ここの瘴気が溢れ出しては困るからのう」
「そういえば、何故この<屍人の森>からは瘴気が溢れてくるんですか? 解決策が無い訳ではない気がするんですけど……」
「まあ、森全体を派手に吹き飛ばせば解決はするじゃろう。じゃが、何か理由のある物などがある訳ではない。様々な環境的要因でこうなってしまっておるのだ。仮に壊しても星の何処かに新たに瘴気の発生源が生まれるだけよ。だったらここで妾が監視しておる方がマシじゃ。妾は利用出来るしの」
「もしかして、それが薬ですか?」
「そうじゃ。他にもネクロマンスに必要な素材もじゃがのう……それは時が来たら教えてやる。今のコトブキにはまだまだ早い。それよりも、何かを買いに行くならそろそろ出発せい。それと良い物が買いたいならダンジョン街の方へ行け」
「はい。ゼット町の雑貨屋のお婆さんにもそう言われました。ダンジョンが西にあり、ダンジョン街の方が良い物があるって」
「ふむ、そうか。金を多く持つと狙ってくる者もおる。気をつけての」
「はい」
僕は師匠の家を出て、3体と共に森を出る。そのまま東西に伸びる道まで来たら、西へと歩きだした。こちらも似たような魔物しかおらず、然して何かがある訳ではなさそうだ。そんな道を歩いていると、フレンドコールが鳴る。
『急に鳴ったけど、何かあったの? こっちは特に何もなく過ごしてるけど?』
『トモエから聞いた。何か理不尽なイベントに巻き込まれて全部取られたって。流石におかしなイベントなら運営にクレーム入れる』
『いやいや、しなくていいから。既にレアアイテムも戻ってきたし、装備は無いけど、お金は上乗せで戻ってきたからね。だから差し引きではプラスかな。それに、生温いVRMMOの雰囲気に浸かってた僕も悪いし』
『うん。どうやら悪化したみたいだね。それはともかくとして、コトブキ君はどこに居るの? 相変わらずサッパリ?』
『いや。今日この国の女王と会ったから国の名前は分かったよ。ブラッディアという国名らしいんだけど知ってる? 女王は吸血鬼だったし、ここアンデッドの国みたい』
『ブラッディアって言えば、私達の居るダークフォレストから北に行った国だね。トモエの居るサキュリアはブラッディアの西だよ。私達は固まってるとも言えるね。ユウヤだけ未だに居場所が分からないけど……』
『アレは放っておくしかない。盾として優秀な巨人族を選んだばっかりに、山奥で師匠と「アッー」な修行をする事に……』
『ちげーわ! ちゃんと盾作りと盾の使い方の修行してるっての! 後、師匠は女性であって、男じゃねーよ。メッチャ筋骨隆々でシャレになってねえけどな! っていうかイルは知ってるだろうに』
『確かに画像が来てたけど、アレを女性とは言わない。女性としての胸は無く、あったのは大胸筋だった。そのうえ体がゴツゴツ過ぎて女性らしさが無い』
『いや、まあ……そうだけどな。それより、こっちは何もねえ。なんかプレイヤーマーケットで流すから買ってくれ。それ売って得たお金で何か買う』
『何か売って何か買うって適当すぎない? もし売ってくれるなら盾を売ってよ。今スケルトンが装備してるの木の盾なんだ。品質8だけど、それより良い盾をお願い』
『品質8以上なんて作れる訳ないだろ! っていうか、どんだけ品質高いんだよ。店売りの物って最大でも5までしかないって聞くぞ?』
『師匠のスケルトンが作ってくれた木の盾。品質が8で凄いんだけど、師匠が作ってくれた鉈は品質10だった。もしかしたらユウヤの師匠が作る物も品質は10じゃないかな?』
『確かに師匠の作る盾は品質が10だな。俺も見せてもらったけど、頭がおかしいとしか思えない出来栄えだった。意味不明すぎてアレは無理だわ。今なんて最高でも品質4だぜ? 師匠持ちが師匠に扱かれてコレだからなぁ』
『それなら良いじゃん。僕なんて棍棒作っても品質3だよ? 自分の槍なんて、ようやく品質が2になったばっかりだし。とてもじゃないけど、まともには使えないよ。壊して作っての繰り返し』
『自分で作れるだけマシ。私なんて弓矢を使ってる所為で、なかなかお金が貯まらない。ナツはそれなりに稼いでいるけど、私が足を引っ張ってる』
『別にそこまでじゃないよ。私の場合、町中とかでお仕事あるし。そういうのを熟してお金を稼いでるだけだしね。後は一緒に戦闘かな? 運良くイルと同じ所から始まったけど、そうじゃなかったら戦闘が大変だったと思う』
『おっと、そろそろダンジョンが見えてきたから一旦切るね。僕の居る国はブラッディアで、そこのスカルモンド地方にある<屍人の森>の師匠の家に居るよ。今は近くのダンジョンに移動中』
『ダンジョンが近くにあるって羨ましい場所に居やがって、俺なんて近くには山と温泉しかねえよ』
『……師匠と2人。裸の付き合い』
『ちげーし! そもそもこのゲーム、風呂場では専用の湯着に強制的に着替えさせられるっての。そのうえ男湯に入ってるんだから師匠が居るわけないだろ。一緒に入ってるのは熊とか鹿とか虎だよ。襲われないけど、スゲー怖いんだぞ?』
『おっと、本当にダンジョン街の前まで来たんで切るよ。じゃ』
そう言って切り、僕はダンジョン街の門番の人に話しかける。ダンジョンに入るのにお金なんかは必要ないらしい。国としてはスタンピードが起きないように間引きしてほしいらしく、誰でもタダで入れるそうだ。
とにかく中に入った僕達は、一番最初に防具屋へと行く。欲しいのは靴だ。そろそろ木靴は卒業したい。実は壊れかけてるんだ、スケルトン・クラフターに貰った木靴。
僕のダメージソースの1つがストンピングだから、仕方ないんだろうけどね。




