0274・運営さん達19
2000年 10月5日 木曜日
『プレイヤー<コトブキ>が盗賊に襲われていたプレイヤーを助けましたが、そのプレイヤー達をブラックリストに入れました』
「彼の気持ちも分からなくはないかな? せっかく助けたのに感謝の言葉もなく、それどころか盗賊を倒した彼らを微妙そうな顔で見てたからねえ。まあ、誰が誰をブラックリストに入れるかは個人の勝手だ。そこは関与できない」
「ブラックリストにポンポン入れるのも良くないんだけど、かといって何かしら感じる事があったんだとは思うわ。絡んできそうなのか、それとも寄生してきそうなのか分からないけれど」
「その可能性はあるかもね。彼は何の根拠も無くブラックリストに入れるタイプじゃないし、他人を排除するタイプでもない。何かしら彼のセンサーに引っ掛かったんだとは思うけど……」
『プレイヤー<コトブキ>が助けたのは第3陣であり、1陣などに声を掛けて利用しようとする行為を何度もしています。いわゆる寄生行為をしようとしているのでしょうが、一度も成功していません』
「あー……彼はそれを感じ取ったか見抜いて、ブラックリストに入れた訳だ。何か理由があると思ったけど、そういう事だったとはね。ま、彼は色んなゲームをしてきているみたいだし、そういう輩に絡まれた事も一度や二度じゃないんだろう」
『スカルモンド領のダンジョン21階で、海に向かって使い魔<ラスティア>を踊らせています。その後、石球で倒しているようですが、おそらく安全確保の為だと思われます』
「特に問題の無い倒し方だし、魔物を集めるのは自己責任の部分もあるわ。周囲の者の迷惑という意味でも問題ないわね、そもそも彼ら以外いないんだし」
…
……
………
『プレイヤー<コトブキ>がマイルームに農地を購入しました。使い魔<キャスティ>のサブ職業のレベル上げの為でしょうが、随分遅れて購入しています』
「単に知らなかったか、それともタイミングが合わなかったか。大凡そんなところじゃない? そろそろサブ職業のレベルも上げなくちゃいけないし、そのタイミングでの購入だと言えるわね」
『サブ職業が農家のプレイヤーのように、土地を購入する気は無いようです。<破滅>の家を拠点にしている為に可能性は低かったのですが、やはりマイルームのみのようです。<破滅>がケチな所為でしょう』
『そんな訳あるか!! 妾はコトブキが何も言ってこんから放置しておるだけじゃ! 言うて来たら妾の薬草畑の手入れをキャスティにやらせるついでに許可しておるわ!!』
「それでも自分の薬草畑の手入れはさせるのねえ。【純潔】の天使は農業の専門家と言ってもいいから気持ちは分からなくもないけど、そもそも貴女の召喚モンスターに【農業】スキル持ちは居るじゃない。持たされてる知識などは全く違うけど」
『だからこそキャスティに薬草畑を任せるんじゃろうが。その結果、薬草の質も上がるし妾は楽が出来る。これほど良い事などあるまい。ついでに薬の質が上がるが、それはどうでもよいしな』
「まあ、それはそうだけどね。それはともかくとして、マイルームに持ったんだから何を言ったって遅いと思うけど? 彼も今さらワールドに農業をする為の土地が欲しいとは言わないでしょう」
『プレイヤー<コトブキ>は農業に必要な物を作り、手渡しているようです。<破滅>の薬草畑はスケルトンの役目です』
『別に今までと変わらんから何とも思わんぞ? セントラルは何か言いたいみたいじゃがのう』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2000年 10月6日 金曜日
『プレイヤー<コトブキ>達に対し、使い魔2人がランクアップの話をしています。そろそろプレイヤー<コトブキ>が一度目のランクアップであるレベル40に近くなってきたからでしょう』
「レベル的には少々早いけど、別に早過ぎるという事もないね。……ランクアップで能力値が下がる事も伝えたかー。とはいえ彼は掲示板に書き込む事もしないし、他のメンバーが書き込んでもそこまで影響の無い情報かな?」
『ランクアップでの能力値ダウンは必要な事です。ランクが上がる事によって根本的な補正が変わる以上、能力値を落とさないとおかしな事になります。召喚モンスターは変わりませんが』
「彼らの補正値もそれなりには変わってるけど、プレイヤーや使い魔ほどは変わらないからね。代わりに進化しても能力値が下がるなんて事は無いんだけどさ」
『プレイヤー<コトブキ>とその仲間達が、スカルモンド領のダンジョン25階に到達しました。現在休憩中です』
「25階………あー、こりゃ大変だ。だってここのボス、彼のデータが元になってるじゃん。しかもホワイトゴブリン10体。かなり面倒臭いけど、彼らは突破できるかな? 彼のデータを元に集団戦に適応させたタイプだからキツイし大変だとは思うけど、脱落する事なく突破してほしいね」
『魔法が避けられた事に驚いているようです。一定以上の強さの魔物は魔法を避けたり防いだりしてきますが、先行してプレイヤー<コトブキ>のアバターデータを持つ魔物には適用されています』
「厄介だろうねえ。このレトロワールドには魔法防御が高くて無視して突っ込んで来る奴と、魔法を受け流したり防いだり避けたりするプレイヤーと変わらない連中がいる。先行して戦う事になったけど、結局は乗り越えなきゃいけない相手だ」
『プレイヤー<コトブキ>が【ダークジャベリン】の後に一気に近付き、首を突き刺しました。回復されないように刺したまま引き摺りこんでいます』
「相変わらず彼は容赦ないね。回復させない為にそこまでするとはさ。ゴブリンの体が小さいから出来るんだろうけど、それにしても頭数を減らすという事の意味を理解してるね。これがコピーとオリジナルの差だよ」
『1体は減りましたが、依然として連携を崩せずに攻めあぐねています。……プレイヤー<コトブキ>の【ダークジャベリン】で隙を作り、他の者が隙を狙う形で討ち取り始めました』
「そうそう。相手が連携をしてくるというなら、彼らも連携して戦えばいい。彼が攻撃の起点になるのは仕方ないけど、他の者達がそれについて行かないとね」
『戦闘後、【魔力転化】スキルと【魔刃】スキルの話をしています。プレイヤー<コトブキ>ならば【魔力転化】や【魔刃】のスキル無しに【魔刃】を使う可能性は高いと思われます』
「【魔刃】スキルねー……あれも後の方になればスキル無しで発動出来るのが前提だし、別にどうって事は無いと思うよ? 彼等がそれを知ったところで使い熟せるかどうかは別だし、耐久力が大幅に減るしねえ。それも相手の魔法防御や闘気防御が高ければ高いほど削れる」
『今使えるようになっても、敵と武器の関係上そこまで大きな問題にはならない可能性が高いでしょう』
「彼らはすぐに使いそうだけど、他のプレイヤーはそうはいかないだろうしね。練習期間だと思えばちょうどいい。それに一部の突出した者に合わせると、難易度が高くなりすぎる。我々はプレイヤーの平均を常に意識しておかないといけない」
『ボス戦のホワイトゴブリンと、通常のホワイトゴブリンの実力の乖離に驚いているようです。ボス戦の魔物を強くしすぎでは?』
「それはねー、散々議論になったんだよ。彼のアバターデータを使えば、必ずこういう事になると。とはいえボスは次の階への門番だ。例外的に強くても許される者でもある。更に言えば能力値が高いんじゃない、連携が上手いだけだ。彼らは苦戦したが、その実、能力値は通常のホワイトゴブリンとほぼ変わらない」
『ここで慣れさせるという事でしょうか?』
「うん。そういう結論になったんだよ。いきなりだと厳しいからね」




