0247・踊った結果
魔法陣の登録も終わったので31階へと進む。ようやく昨日来た砂漠の階にやってきたけど、ここの面倒臭さを先に伝えておく。正直に言って面倒臭いのが連鎖する可能性が否定出来ないし。
「サンドドッグという普通の魔物がいて攻撃してくるけど、そのサンドドッグに噛み付いて血を飲もうとするラクダが居る、と。そのうえ上を通ると誰彼構わず突き上げてくるサソリも居る……」
「面倒臭いねー。更にはその魔物が互いに襲い合うんでしょ? 正直に言ってメチャクチャになった状態ってよく分からないけど、少なくともちゃんと戦えないって事だけは分かるよ。私、大丈夫かなぁ?」
「とはいえ闘気に耐性のある甲殻ってなると有用だし、戦って慣れるしかないだろうなー。どんな魔物だってそれは変わらない訳だしさ、それは最初からずっとだろ?」
「まあ、そうだね。今までやってきた事の繰り返しで済む……のかな? 今まで戦闘がメチャクチャな事になった事ってあったっけ? 記憶に無いんだけど……」
「とにかく進もう。ここで喋ってても暑いだけだし、戦っていれば慣れるよ」
僕は皆を誘導して先へと進む。立ち止まって喋ってたって意味無いし、時間の無駄にしかならない。そのまま進んで行くと、早速ブラッディキャメルが遠くに見えた。昨日とは違い、僕は石球を投げてブラッディキャメルの気を引く。
すると思っていた通りに僕達に狙いを定めて走ってきたが、その途中で突き上げられた。ブラックスコーピオンが出てきたので、慌ててバインド系魔法を使い、動きを強引に止める。そうしないとブラッディキャメルが毒で殺されてしまう。
慌てて僕達はブラックスコーピオンを倒しに行くも、面倒なブラッディキャメルが血を欲して噛みついてきた。予想通りの行動をとるブラッディキャメルの足を切り捨てて、そのままブラックスコーピオンの所へ。
ブラックスコーピオンのバインドは解けていたが、こちらに向くのに時間が掛かっている。その隙に背後に回って尻尾をつけ根から切り落とした。ブラックスコーピオンの絶叫が響くが素早く側面に回る。
側面に回った僕に反応して更に回転し、僕に正対しようとするブラックスコーピオン。しかしその横からセナがヌンチャクを使って、左の鋏をつけ根から切り落とした。再び絶叫をあげるブラックスコーピオンの側面から、今度は僕が右の鋏を切り落とす。
昨日と同じように鋏と尻尾を失くしたブラックスコーピオンは逃げ出そうとするが、そこにシグマが片手斧を振り下ろす。その一撃はブラックスコーピオンの頭を叩き割り、中身を撒き散らしながら死亡。僕達の勝利となった。
ユウヤ達の方はブラッディキャメルとの戦闘を終えているが、アレは僕が足を切ったからだし、たぶん厄介さを理解してないだろうなぁ。
「コトブキ、お疲れー。ブラックスコーピオンっていう蠍はそこまでじゃないのか? えらく簡単に倒してたけど、そんなに簡単な相手じゃないよな?」
「蠍だからね、やっぱり尻尾の一撃が怖いよ。最初はバインド系魔法で止めて、早めに尻尾を落とさないと駄目だろうね。昨日ブラックスコーピオンの毒を受けてたブラッディキャメルは割とすぐに死んでたし」
「そんなに強い毒なのかよ。そいつはマズいな……蠍系のモンスターの尻尾攻撃って上から来るんだよなー。正直に言って盾役からすると死角から来るから避けるのが難しい。そのうえ毒持ちが大半だから、驚くほどに厄介だ」
「尻尾は顔や鋏の動きで判断するしかありませんね。必ず前に体を倒しますから、それを見て素早く左右に動く必要があります。盾で防ぐのは良くありません。その後に鋏で攻撃される可能性が高いですから」
「ありがとう。しかし、やっぱり正攻法でどうにかするしかないか……いっつもそうだけど、虫系の魔物って本当に厄介だよなー」
「しかたないよ。虫って元々生命力強いしなかなか死なないし、変な体液撒き散らすし、それが毒だったりするし。仕方がないんだろうけど、嫌がらせのオンパレードみたいな生き物だからねえ、大半が」
「蝶もそう。見てると綺麗かもしれないけど、蛾の仲間と思えば好きにもなれない。鱗粉とか撒き散らすし」
「愚痴はもう止めて先に進むわよ。ここで喋ってても時間の無駄だし暑いだけだから」
再び僕達は歩きだし、敵を探しては倒していく。最初で慣れたからか多少は楽に、かつパニックにならずに戦えている。昨日の僕達は酷かったから、あれに比べればマシだけど、何の前情報も無かったら誰だってああなるだろう。
サンドドッグも出てきたが、ブラッディキャメルが居なかったので然したる障害にはならなかった。やはり暴れ回るヤツが厄介なのであって、サンドドッグはそこまでの魔物じゃない。
それなりに順調に戦い続けていたら、やはりその時がやってきた。最初は少しずつ踊って引き寄せていたラスティアが大胆に踊り始めたんだ。その時点で嫌な予感がしたんだけど、案の定、無差別に引き寄せていた。
その結果、サンドドッグだけじゃなくブラッディキャメルを引き寄せ、そして走って移動するものを突き上げて出てくるブラックスコーピオン。完全に乱戦状態へと移行してしまった。昨日、嫌な予感がした通りの結果だよ!。
僕は出来るだけ素早くブラッディキャメルの足を切りつつ、ブラックスコーピオンをバインド系魔法で拘束していく。必要なのは鋏と尻尾と割り切り、逃げるなら追わない事に決めた。この乱戦じゃ全てを倒すのは難しい。
手当たり次第に必要な事をやっていき、とにかく敵の数を減らす。ラスティアも既に踊っておらず迎撃しているが、戦っている場所を遠くから視認したり、サンドドッグの鳴き声で敵が増えてしまっている。予想外の面倒臭さだ。
昨日は小規模な乱戦でしかなく、この階では今日が初めての大規模な乱戦なので勝手が分かっていない。サンドドッグを先に潰した方が良いのか、あれは放っておいてもそこまで増やせないのか。その辺りも分からないので、見通しが立たないんだ。
それでも戦い続け、何とか倒し終わった。短いながらも濃密な時間だったので、皆もかなり疲労している。それでも勝てたので良かったよ、さっさと入り口へと走ろう。僕がそう言うと、皆は一斉に走り始めた。
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
使い魔:ラスティアの種族レベルが上がりました
メイン職業:暗殺者・下級のレベルが上がりました
サブ職業:踊り子・下級のレベルが上がりました
使い魔:キャスティの種族レベルが上がりました
メイン職業:盾士・下級のレベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:シグマのレベルが上がりました
召喚モンスター:セスのレベルが上がりました
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「ビックリするほどレベルは上がったけど、嫌になるくらい大変だったぞ。あの犬、絶対に仲間を呼んでたよな? 周りに居ないのに、吠えると遠くからやって来るんだぜ? 間違い無いだろ」
「疲れた……レベルが上がったのは良いけど、その分だけ矢が無くなった。また矢を作らないといけないけど、このレベルアップなら許す」
「本当に疲れたねー。まさかあんなに魔物が多いとは思わなかったよ。ラスティアさんが魅了したのもあるけど、途中から止まらなくなってたね。血を飲んだラクダはおかしな動きをするし」
「血を飲むと暴走するけどさ、あれブラックスコーピオンの居る方向にワザと行ってなかった? ブラックスコーピオンが単体としては一番強いじゃない? だから誘い出そうとしてた気がするのよねえ」
ラスティアの言うように、そんな感じには見えた。どのみち甲殻が欲しい僕としては出てきてもらって問題は無いんだけど、覚えておいた方が良さそうだ。




