0246・再びのブルーオーガ戦
【傲慢】の悪魔の話は止め、朝食を終えた僕達は各々のマイルームへ行き、防寒具などの準備を整える。今日もユウヤと一緒なのでバイゼル山で合流し、豪雪山へと転移。いつも通りに素材を集めていく。
「それにしてもコトブキが種族進化一番乗りかー。まあ、納得ではあるんだけど、ランキングに乗るだろうから面倒臭そうだな。さっき聞いた<ダークマター>とかいう厨二病も絡んで来そうだし。ちゃんとGMコールして潰さないとな」
「ちゃんと2度通報したよ。最後は師匠が<深淵の魔女>の所に転移させたけどね。真っ黒な服を着て闇を抱えて生きてそうな感じだったからだと思う。師匠いわく<深淵の魔女>も影とか闇とか好きらしいから」
「あー……そういうタイプかぁ。魔女の中にもそういうのが居るんだな。魔女だから分からなくもないけどさー、それもどうなんだよ。本当に紙一重って感じな気がするぞ?」
「ギリギリセーフじゃなく、ギリギリアウトだと思う。魔女だから分からなくもないけど、他の魔女はそうじゃない。ならどうしてもアウト側に転ぶ。魔女だからという部分を考慮しても、ギリギリアウト」
「まあ、それは仕方ないよ。魔女が<深淵の魔女>だけなら、魔女ってそういう者って思うけど、他の人達は全く違うからね。それだと<深淵の魔女>だけがおかしいってなるから、やっぱり厨二病の扱いしかされないと思う」
魔物と戦いながら、素材を収集しながら会話をしている僕達。本当にここ豪雪山の魔物はザコになってしまった。僕の能力は落ちてるし戦い辛いんだけど、それでも種族ランクが上がった事による恩恵は大きい。
魔力や闘気の身体強化は前よりスムーズだし、【魔刃】や【闘刃】も使いやすい。こういった細かい部分で変わってくると、錬金術にも影響が出るのは確実だ。より良い物が作れそうなので、早く能力値を上げたい。
反対側の鉱床も掘り、スマッシュタイガーもセナに一撃で倒される始末。やはり自分の手で【魔刃】や【闘刃】が使えるようになったのは大きい。耐久力の消耗が激しいが、コレばっかりは諦めるしかない事だし割り切れる。
それだけ威力の高い攻撃だから、その分のデメリットは十分許容範囲内だ。
―――――――――――――――
使い魔:ラスティアの種族レベルが上がりました
使い魔:キャスティの種族レベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:シグマのレベルが上がりました
召喚モンスター:セスのレベルが上がりました
―――――――――――――――
豪雪山での素材収集が終わった僕らは、一旦それぞれの拠点に戻って物作りを始める。僕はナツに聞き、必要な素材をプレイヤーマーケットに売り出す。ナツに優先権を付けているのでナツしか買えない。
その野菜などを購入したナツは台所へ行き、料理を始めたようだ。イルは相変わらずの矢作りをしており、僕はそれを手伝わされている。今の所は作る物もないから良いんだけど、矢羽をくっ付ける作業を延々としてるんだ。
本来なら膠を始め、接着剤でくっつけるんだけど、僕の場合は錬金術の【融合】があるので接着剤は必要ない。僕の経験にもなるので協力してるけど、矢の作り方も分かったし、仲間に持たせてみようかな?。
<BUSHIDO>においても<ナイトロード>においても、怖いのは鉄砲じゃなくて弓矢だ。実際に竹束の盾で防げたという記録は残っている。忍者は水に塗らした布で防いでいたっていうし、滑空銃の威力はそこまで強力じゃない。
それよりも怖ろしいのは弓矢であり、特に高所から落ちてくる矢の威力は尋常じゃない。そもそも西洋でもロングボウでプレートアーマーを貫いたと言われるぐらいだし、弓矢って思っている以上に強力なんだよね。
ただし猛烈にコストが掛かる武器でもある訳で……だからこそ、お金の無い弓使いは悲惨だとしか言えない。このゲームでは弓使いが棍棒を使っても問題ないから良いけど、職業以外の武器は持てないゲームとかだと厳しいんだよね。
僕もVRでは弓矢を使えるけど、弓道をやっている人と比べると劣るから、あんまり弓を使う気にはなれない。でも召喚モンスターは別だ。だからこそ持たせようかと思ったんだけど、持たせるなら強力な物にしたいし、今は止めておこうっと。
矢の作成を手伝ってたら昼食に呼ばれたので、食べた後にソファーの部屋へ行ってログアウト。リアルでも昼食を食べて雑事を熟す。終わったらログインし、少し待っていると皆がログインした。
連絡を入れて集まり、今度はスカルモンド領のダンジョンへ。皆と一緒に26階からスタートし、ホワイト系の魔物を倒していく。階段の位置は知っているのでさっさと進み、29階ではラスティアに踊って貰う。
【魔刃】や【闘刃】を使ってどんどん倒し、終わったら30階へ。ボス扉の前で休憩し、その間に中のボスの情報を話しておく。ブルーオーガと聞いて驚いているが、そこまでメチャクチャ強い訳じゃない。皆がいる分、前より楽だし。
そう説明してからボス部屋に入り、ブルーオーガ3体と戦う。1体はユウヤが戦い、それ以外の2体は盾組で抑える。前回はなかなか大変だったが……と思った瞬間「ドォン!」という音がして、ユウヤが後ろにのけ反った。
慌ててイルが矢を射って事無きを得たが、ユウヤはブルーオーガのパワーに驚いている。おそらくは上のランクな所為だろうね。迂闊に受け止めると痛い目を見るんだけど、ユウヤは防げると思ったのかな?。
「くっそ! 思ってる以上にパワーがありやがる。まさか盾にアッパー喰らってバンザイ状態になるなんて思ってもみなかった! 援護が無ければヤバかったぜ!!」
「敵と戦うのに油断する方がおかしい。敵はどう考えてもパワー系、だからちゃんと流す! おそらくこっちが下のランクだから、普通より不利になってるんだと思う」
「そういう事か。相手のパワーもあるけど、それ以上にランクの差が大きいのかよ」
「しかもこのブルーオーガはボスだよ? 普通のブルーオーガと同じじゃない筈。そう考えたら余裕なんて持っちゃダメ!」
同じ魔物に見えて、ボスの場合は非常に強かったりするしね。気をつけておかないと、普通の魔物とは全くの別物である可能性もある。師匠もダンジョンのボスは試練とか言ってたし、見た目に騙されちゃいけない。
今度は盾で流したユウヤ、しかしそれでもブルーオーガの攻撃が強く反撃は出来ないみたい。その隙にイルが顔に矢を放ち、それが頬に突き刺さった。目を狙ったらしいけど、簡単に当たるような場所じゃないからしょうがない。
「グォォォォォ、ゴッ!?」
ブルーオーガが怒って叫んだ瞬間、ユウヤが【闘刃】を使いながら首に棍棒を叩きつける。すると真ん中ぐらいまでザックリと首を切られ、ブルーオーガの鮮血が噴出した。上手く切り裂けたらしい。
既にユウヤが相手をしていたブルーオーガ以外は倒し終わっていたので、これで終わりだ。「お疲れー」と言っていると、ユウヤが青リンゴが出たと言い出した。
前に僕が出した物と同じみたいだけど、アクセサリーじゃないから2人はスルー。とはいえ取られなくて済むも、オーガにしか効果が無いので売る事しかできない。僕もそうだけど悲しい結果だ。
ユウヤを慰めながら下へと進み、魔法陣を登録させる。ここからようやく砂漠だ。ラスティアが踊るって言ってたけど、面倒な事にはならないでほしい。頼むよ、本当。




