0237・運営さん達16
2000年 9月22日 金曜日
『本日から新しいPVが流れるようになりましたが、概ね好評のようです。一部の女性プレイヤーが、繰り返しイベント鬼面武者の戦いを見ていますが』
「それは間違いなく戦闘を見てるんじゃなくて、弟君を見てる連中だから放っておけばいい。見てるだけなら無害だし、ゲームの楽しみ方は人それぞれだ。関わりたくないと言う本音もあるんだけどさ」
『先日、プレイヤー<コトブキ>が<ブラッディア血聖勲章>を下賜された為、後日ラギル伯爵イベントが発生します』
「ラギル伯爵…………ああ、あのイベントか! 開発の連中が腐の要素も入れないと人気が出ないとか何とか言って、無理矢理に突っ込んだイベントね。この系統は悪魔の星にしかないけど、よりにもよって弟君が絡むかー……」
「開発の方にはそれを期待していたバカな連中も居たみたいだが、本当にそうなった今は困っているだろうな。こういう地方の単発イベントでは殆どの連中は見られない。なので連中の同士の目には触れる事が無い」
「ああ、成る程。それは確かに凹むでしょうね。奴等はやたらに共有しようとしますから、殆どの人はそんなイベントがあった事すら知らないでしょう。しかも戦争が起こる方の国境近辺じゃありませんしね」
「一応辺境伯の領地のすぐ近くだが、こちらはビスティオとの国境に山があるからな。越えられなくはないが、魔物だらけの山を越えて進軍するバカは居ない。山道はあるが、そこまで頻繁に使われるものではない。そういう場所だ」
「それでも隣国から攻めてくる可能性のある場所ですから辺境伯なんですけど、ここから攻められる可能性は低いですからね。プレイヤーが多くビスティオに協力していて、かつ提案したら採用される可能性がある。という程度ですから」
「ま、普通はサーヤ辺境伯の方から攻めるだろうな、そっちが常道だ。とはいえ、あっちはあっちで厳しいのだがな。そもそも【探知結界】始め、様々な技術が使われているし、<破霊の巫女>の本分は軍用バッファーだからな」
「エゲツないですよ、本当。こういったレトロゲームのキャラが多く居るのがブラッディアの強みですからね。もちろんビスティオにも居るんですけど」
「あんまり好きじゃない者が多いみたいだな、私が子供の頃には人気だったのだが」
「ダ○大のクロ○ダインですか。好きな人は未だに好きなんじゃないですかね? それよりも西遊○の○悟空の方が設定的にマズいんじゃないですか? だって元は猿の神様でしょうに」
「それは問題ない。そもそもビスティオには西○記の三○法師以外は全員居るだろう。しかも往年のドラマに似せた奴等が。アレもそれなりに美化したから大丈夫だが、開発の連中は最初そっくりに作ってきたからな」
「本人にソックリだったので逆に新鮮でしたけどね。自分達の年代じゃ、年老いた姿しか知りませんから。他のキャストも同様ですし、豚なんて大河やってたイメージしかないです」
「豚っていうなよ。事実だけど、その言い方だと演者の方が豚になってしまうだろう。とはいえ元々は天界にいた人物が地上に落とされ、豚の子として生まれただけだぞ?」
「へー……」
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2000年 9月23日 土曜日
『プレイヤー<コトブキ>の召喚モンスターであるセスが、前に出ながら魔法を使うという珍しい戦い方をしています。どうしますか?』
「………どうするもこうするも無いんじゃない? だって盾を持って前に出るってだけの戦い方だし、別にルール違反をやってる訳でもないし……。確かに非常に珍しい戦い方だけど、想定されていない訳じゃないわ。ただ……召喚モンスターだから出来る戦い方ね」
「ですね。流石に魔法のみという戦い方は、このゲームで許容するプレイヤーは少ないでしょう。MPが無くなった時の為に、近接武器ぐらいは持っておくように言うでしょうし、盾オンリーは流石に……」
「一番前で防いでくれるし、今みたいに範囲魔法が使えるっていう利点はあるのよね。敵も強くなっていくと、単体魔法をかわしたり流したりするようになるから。そういう意味では、範囲魔法で着実に削るっていうのは間違ってない」
「あれだけ積極的に前に出る魔法使いも珍しいですけどね。タンク系マジシャンってどうなんでしょう? 有りと言えば有りですけど、難しいところですかね?」
「プレイヤーだったら厳しいでしょうね。継戦能力が低すぎるし、パーティーでも嫌われるわよ。流石に武器を持って戦ってる間に回復してくれないと。このゲームでは簡単にMPを回復させないし」
「そういえば、MP回復薬って未だ殆ど出回ってないんでしたっけ?」
「レトロゲームではこんなものよ。そもそもMP回復薬を大量に使って戦う事自体が間違いでしょう。ゴリ押しにも程があるし、そんなゲームこそフィクションでしょう。どれだけ飲める胃袋してるのよ」
「言いたい事は分かりますし、だからこそレトロワールドには渇水度が設定されてるんですしね。渇水度がゼロの時に飲む事は出来ないのは、他のゲームでもある設定ですけども」
「別に良いのよ、大事なのはバランスだし。魔法撃ってジッとしてMP回復。魔法撃ってジッとしてMP回復。そんなの面白くないでしょ? 自分だってそんなゲームしたいとも思わないわよ」
『プレイヤー<コトブキ>が、運営ダンジョンの16階に転移しました。攻略を開始するようです』
「あらら。攻略するのは勝手だけれど、弟君のレベルじゃ無理ね。ランクアップしないとどうにもならないから、行くだけ無駄でしょうけど、今の内に進めるだけ進んでおくのかしら?」
「ランクは結構大きな差ですからね。そもそも上のランクのイベントエネミーに対して、味方の死亡なく勝ててる弟君がおかしいんですよ。ランクが変わるだけで大変な筈なんですが……」
「彼の場合は武器を強化しているのに加え、的確に敵の邪魔をしたりしているし、隙あらば問答無用で急所を狙うからでしょうね。他のプレイヤーが真似できない基礎的なレベルの高さがあるわ」
「流石に急所はクリティカル扱いですから、防御は低めに設定されてますけど……。本当に容赦が無いのと同時に、戦闘中によくピンポイントで狙えると思いますよ。普通は無理でしょ、それって」
「だって”あの”ゲームの愛好家よ? 普通のプレイヤーと同じ扱いしちゃ駄目でしょ。色々な意味で他のプレイヤーとは違うわよ。明らかにプロゲーマーを押し退けて別格なんだもの」
「まあ、開発がわざわざ彼のアバターデータを色々な所に使い回すくらいですからね。でも彼以外のプレイヤーにとっては最悪でしょうね、戦闘狂が襲ってくるって」
「そこはどうにも……ああ、無限召喚系のボスか。逃げ回って仲間を無限に呼ぶタイプねえ。キッチリと自分の役目を果たす部下と上司……って感じに考えていたんでしょうけど」
「まさかのメイン武器を放り投げてくるという荒技。その後に棒手裏剣2本を突き刺して逃げられないようにし、素早く喉と心臓を突き刺して終了。やっぱり色々とおかしいですよ」
「普通のプレイヤーなら、メイン武器を放り投げるという発想をしないわね。彼は有効だと思ったら躊躇なくやるうえ、キッチリと止めを刺すまでの道筋を描いてからやってる。そこが違うのよ」
『プレイヤー<コトブキ>の使い魔2人が、コボルト・ジェネラルやゴールデンコボルト・キングの話をしています』
「まあ、それぐらいなら問題ないわね。他の場所でも仕入れられる情報だし」




