0234・魔刃と闘刃
大して強くもないホワイト系の魔物を倒して進む。碌な素材が手に入らないだろうと考えていたけど、その通りだった。ただし、オークは除く。ホワイトゴブリンとホワイトコボルトは、どちらも<魔石・中>だったので多少の儲けにはなると思う。
それよりもオークの方が問題だった。
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<食材> ホワイトオークのバラ肉 品質:7 レア度:2
沢山獲れる肉としては人気の食材。天然物は少ないものの、ダンジョンだと浅い階層に出てくる場合もある為、そこまでレアな物ではない。当然、普通のオーク肉よりも美味しい
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またもやバラ肉を始め、色んな部位がドロップしている。それもイルはサブ職業が<解体師・下級>の為、相当の部位が出ているようだ。中には<ホワイトオークの骨>まであったらしい。運営は出汁をとれとでも言う気だろうか?。
「お肉が沢山なのはありがたいけど、必要な物や美味しそうなもの以外はプレイヤーマーケット行き。そしてシャープホーンバッファローより高く売れない……」
「仕方ないわよ。ホワイトオークの肉って、それなりには供給される肉だからね。さっきも言ったダンジョンの50階、そこから先は一流の領域だけど、それより手前は行ける者も多いの。当然、供給量も多いってわけ」
「逆を言えば50階から下の素材は、そう易々と出回る物ではないという事です。稀人であれば、いずれ到達するでしょう。なんといっても復活出来るのですし」
「普通の奴の場合、駄目なら途中で諦めてお金を稼ぐ事にシフトするからね。それも悪くはないんだけど、下を目指せるのにって思う奴まで諦める事もあるのよ。あれを見てると何とも言えなくなってくる……んだけど、仕方がないというのも分かるしね」
「ですね。彼らにも暮らしがあれば家族も居ます。無理に戦うと命を失うという可能性を高めてしまいますし、それを無理強いする訳にもいきませんからね。でも、もう少し鍛えればワンランク先に行けるのに。そう思える者を見ると、何とも言えなくなりますよ」
「ホワイト系って結局そこまで強くないし簡単に倒せるけど、会話しながらはき、今の何!?」
「あー、ごめん。出来るかなーと思って練習してたら、出来ちゃったんだ。驚かせたみたいだね、本当にごめん」
ラスティアが言ってたので、【魔力転化】というスキルが無くても出来るかと思って練習してたら出来たよ。ただし2メートルくらいしか飛ばないけど。槍を薙いだら魔力の刃っぽく出たから間違ってないと思う。
今度は刺す感じで飛ばすとどうだろう? ……ああー、成る程。今度は貫通力のある感じで飛んで行くんだね。とはいえ魔力の色が付くのは避けられないので、見てから回避される可能性もあるな。これは奥の手として使った方が良いだろうか?。
「「「「「………」」」」」
「いや、そんなにジト目を向けられても困るんだけど? いつも言ってるように出来るからやってるだけで、出来ない事をやってる訳じゃないよ。少なくとも【魔力転化】というスキルは必要ないみたい」
「まあ、コトブキだし諦めようぜ。それより棍棒で出しても【魔刃】のように切れるのか? 確かコトブキは棒を持ってたよな、そっちで確かめてくれ。もし斬撃になるなら俺も使える様になりたいし」
ユウヤがそう言うので棒に持ち替えて敵を探す。魔力の刃が飛んだとしても、それで切れるかは分からない。だから的がないと分からない訳で……いた。ホワイトコボルトだ。ノーマルと変わらず鼻が良いので、こちらを見つけたらしい。
向かってくるホワイトコボルトに対して棒を薙いで魔力の刃を飛ばす。驚いたホワイトコボルトは慌てて腕で防ごうとするも、魔力の刃に切り裂かれた。派手に血は出たが、深い傷ではないようだ。とはいえ、棒でも変わらないらしい。となると……。
今度は右上から左下へ袈裟に振り下ろすと同時に、鋭くしない魔力を飛ばす。すると「ドゴッ」と鈍い音がした。どうやら魔力の形で切れるか切れないかが決まるようだ。つまり打撃にも斬撃にも出来るらしい。
「はー……便利だなぁ。しかも威力も高いみたいだし、思っている以上に使えるんじゃね? ただしMPを結構消費しそうな気がするんで、俺の場合はあまり多く使えなさそうだけど」
「それよりユウヤは魔力を上げてないから、使えても威力低そう」
「げっ、その可能性があるのか。俺魔力なんて上げてないんだぞ……何か他に………って、コトブキ。今の何だよ?」
「ああ。魔力で出来るなら闘気でも出来るんじゃないかと思ってさ、それでやってみたら出来た。【闘刃】って言えばいいのかな? こっちならユウヤも使えるんじゃない?」
「おお! サンキュー、コトブキ! ………どうやるんだ?」
「武器に闘気を流して、振ると同時にそれを飛ばす感じ? そうとしか言えないんだけど、練習したら出来るよ」
「練習したら出来るって言ってるけど、コトブキは【精密魔力操作】なのと【練気操作】なのを忘れないようにね。あんた達が出来るかは分からないわよ?」
「確かにそりゃそうか。非常識なコトブキだからできた可能性が高そうだな。それでも出来たら強そうだし、スキル数を増やさなくてもいいから、俺も練習しよう」
「魔力を飛ばせるなら、弓矢の意味が無い」
「そんな事はありませんよ。【魔刃】は強力に見えるかもしれませんが、魔力に対する防御力が高いとダメージが与えられなかったり、【魔力放射】を使って散らされたりします。思っている程の万能さはありません」
「それにコレ、結構魔力の消費が大きいよ。【ダークジャベリン】1回分と同じくらいかな? 闘気の消耗も激しいし、乱発は出来ないね。それでも奥の手として使う分には悪くなさそう」
「スキルの【魔刃】よりも自分で行う方が魔力を篭められるもの、ならそれだけ魔力の消費も増えるわよ。その分だけ威力も上がってるんだから仕方ないわね。ちなみに【魔刃】も【闘刃】もスキルとしてあるわ」
「聖人達が得意としていますね。私は使いはしませんでしたけど、スキルによらずに使えるなら今は学んだ方が良いのでしょう。使いどころはありそうですし」
「私もそうね。とはいえ【練気操作】にまではなってないのよ。だから練習するしかないんだけど……闘気ってそこまで練習した事ないから出来るかしら?」
「ひたすら練習するしかないんじゃない? イルだって短剣で使えたら便利だと思うし、弓矢とは別に有効活用できると思う。案外剣身を伸ばすように使った方がいいのかも……」
「剣身を伸ばす……? 短剣の先からラ○トセーバーみたいに?」
「そうそう」
弓矢の価値が無くなると若干凹んでいたイルだけど、どうやら短剣の事を考えたらプラスだと前向きになれたようだ。相変わらずだけど、会話しながらも倒されていくホワイト系の連中。本当に大した強さじゃないね。
皆と相談し、今のうちなら間に合うかもと蹴散らしながら進んで行く。今日中に31階に到達できれば明日からは楽になる。そう考えていたんだけど、29階には大量の魔物がいた。とてもじゃないけど突破は無理、そう思えるほど沢山居る。
僕達は目的を切り替え、お金儲けの為に沢山倒す事にした。オークは優先して倒し、それ以外はラスティアが踊って引き寄せたりしながら戦う。階段近くの奴等を殲滅して疲れた僕達は26階へと引き返し、ダンジョンを脱出した。
<魔石・中>と各種のホワイトオーク肉は稼げたけど、武器の消耗が思っていた以上に大きい。おそらく【魔刃】と【闘刃】の所為だ。
最後には全員が使えるようになっていたけど、皆も武器の消耗が激しかったと言ってる。魔力を篭めて強化する以上に劣化するので、そういう意味でも奥の手として使うべきだね。




