0232・スカルモンド領のダンジョン25階
昼食を食べたらユウヤが来るのを待ち、やってきたら一緒にダンジョンへ。3人共シャープホーンバッファローの出る階層までは一緒に進んでいるので、今回は再び16階からだ。
16階から始め、シャープホーンバッファローを倒して肉をゲットしつつ進む。全員が肉をゲットしていく様は色々アレだが、角はゲットせずに進んでいる。今はビッグハンマークラブの甲殻の方が優秀だと知ってるからね。わざわざ角を折る必要は無い。
そのまま先へと進んで行き20階のボス戦。オークどもの連携など物ともせずに叩き潰し、さっさと21階へと進む。ビッグハンマークラブの大きさに驚きながらも、皆で戦っていく。とはいえ、既に攻略法は知っているので苦戦もしない。
「流石に2メートル近い蟹は驚くわ。もしかしたら今後これ以上の蟹が出てくるのかもしれねえけど、何だあのTの形した腕先は。本当にハンマーそのものじゃねえか。しかも振り下ろしの威力が強烈過ぎる」
「ある意味でよくいるタイプの魔物。やたらに物理攻撃力が高いタイプは、魔法に弱いか属性を含めた弱点ありの場合が多い。雷魔法とか良く効きそう」
「残念ながら然程効かないね。氷属性もそうだったから、どちらかと言うと物理的な弱点タイプだと思う。僕達は面倒だから魔法でゴリ押ししつつ、比較的柔らかい腹を攻撃してる。魔力強化すればいけるからさ」
「成る程な。とはいえコイツは斬撃か刺突の方がいいな。ここの敵もそういうタイプだし、武器を変えるか」
そう言ってユウヤが取り出したのは戟だった。柄の先が槍の穂先であり、その根元に直角に付いた両刃。どこからどう見ても戟だね。ユウヤは鋼鉄でとはいえ、戟を作ったようだ。通りでここ最近連絡もなかった筈だよ。
「それはコトブキ君が説明してた戟って武器? ……成る程、そんな形の武器だったんだ。ツルハシみたいに使えそうだし、面白い武器だね」
「御蔭で【長柄術】のスキルを習得する羽目になったけどな。それはそれで良かったとは思う。【長柄術】って結構幅広い武器を網羅してるみたいだしさ。色々と考えてみると、長柄の武器ってそれなりに多いんだよなー」
「まあ巨人族の筋力なら長柄武器でも片手で扱えるでしょうけどね。他の種族には難しいわよ? 特にドワーフとかは無理な事も多いの。あいつらパワーはあるけど手足が短いから、長柄の武器って合ってないのよ」
「代わりに彼らはとんでもない重装甲でも気にしませんけどね。動きといいますか、足は遅いですけども、それを補えるだけのパワーがありますから強いんです。まあ、速さで翻弄されると厳しいんですけど。後、ドワーフの強弓兵は極めて厄介です」
「高い筋力で射出してくる癖に、ドワーフの足の遅さをカバーできる。ただ一旦始めるとカカシになるのが難点……らしい。どれだけ強い弓を作れるかをプレイヤーのドワーフが競ってる」
「稀人じゃなくても、やってるわよ? 基本的にドワーフの連中の考える事は、重装備で防御か、強弓で一方的に攻撃だもの。考えれば当たり前なんだけど、ドワーフの戦闘での利点って筋力と安定性だし」
「安定性……ああ、ドワーフって足が短い代わりに重心は低いからな。あれは簡単にはコケないだろ。俺の場合は巨人族の身長を活かして、上から棍棒を叩きつける感じだな。対ドワーフは」
「もしかしてユウヤは闘技場に行ってる? ………やっぱりそうか。でないと、わざわざドワーフと戦う事は無いし。僕はブラックリストに入れてる連中とも遭う可能性があるって書かれてたから、行った事ないや」
「ああ、あそこは誰とでも戦えるようになってるからしょうがねえ。試合場の上でしか相手に触る事はできないけど、その所為でコトブキみたいに闘技場に来ないのもいる。それが理由なのかは分からないけど、実際の最強が決まらないって嘆いてるな」
「別に最強なんて決めなくてもよくない? だって強い人居るし、まだレベル低いみたいだよ? だって私達ハイクラスにもなれてないし」
「そう。種族レベルも結構上がってるのに、ここまでクラスが変わらないのはおかしい」
「そもそも勘違いしているかもしれませんが、ランクが上がるのには才能が必要ですよ? どれだけ頑張っても位階が上がらない人も居れば、私達のように位階が上がり天使にまで到達する者も居ます」
「そうそう。必ず同じじゃないのよ。最低の位階で頑張ってるのも居るし、諦めて上を目指す事を止めてしまう者も居るわ。ハイクラス以上に上がれない者も居れば、グレータークラス以上に上がれない者も居るわ」
「稀人は神の加護を持ちますから、おそらく位階は上がるでしょうけどね。コトブキが後2つで40ですから、そろそろじゃありませんか? ハイクラスに上がるのは」
「ただ【魔闘仙】のハイクラスが何かは全く分からないけどね。後、位階が上がったからって強くなる訳じゃないわよ。鍛えていって強くなるんだしね」
「もしかして……弱体化する?」
「ええ。コトブキの言う通り、クラスが上がると弱体化します。それを嫌がる者も居ますが、仕方ありません。それこそが位階が上がるという事なのです」
「位階が上がるという事は、生き物としての質が上がるという事なのよ。一時的に弱体化したとしても、位階が上がった事による強さは得ているから気にしなくてもいいわよ?」
「「「「へー……」」」」
会話をしながらでも、この人数なら簡単に敵が倒せる。僕達はどんどんと進み、遂に25階のボスまで来た。ボス扉の前で休んだ後、全員で中に入り少し待つ。
地面に魔法陣が現れて、せり上がりながら現れたのは白い肌のゴブリンだった。それも10体も居る。これって2人に聞いていた次のクラスの奴だよね!?。
「敵はホワイトゴブリンです! しかも10体。向こうはきちんと連携してきます! 気をつけて隊列を組んで戦って下さい!!」
「相手をゴブリンだと舐めちゃ駄目。こいつら本当に連携してくるから注意!」
キャスティとラスティアが大きな声を出すほどだ、今のレベルじゃなかなかキツいんだろう。盾組が前に出て構えるも、ホワイトゴブリンは牽制をしつつ、狙った者だけを連続攻撃してくる。
右からの攻撃が終わったら素早く左、それを防いだら再び右から。そうやってキッチリ連携して攻撃してくるので、盾組が手を出す暇が無い。ゴブリンは棍棒を持っているだけだが、魔法が飛ぶとすぐに避ける。
どうも【魔力感知】系のスキルを持っているらしく、魔法を使う前に魔力で察知されているらしい。思っていた以上に面倒で厄介な奴等だった。セスの【ダークウェーブ】や、キャスティの【ライトウェーブ】で削るも、碌に効いている感じがしない。
僕は最大威力であろう【ダークジャベリン】を使っているが、コレも効いているのか分からなくて困る。イルが後ろから狙いを定めて矢を撃ち込み、見事に目に突き刺さったものの、気にせず戦い続けるゴブリン。戦闘狂なのコイツら!?。
ユウヤが右から攻撃をされた隙に、ラスティアが素早く薙刀を突き出して喉を突く。上手く当たったのは確実なんだが、【回復魔法】で治療されてしまった。完全に千日手になってるし、仕方ない。
僕は【ダークジャベリン】を使ったタイミングで一気に前に出て、【ダークジャベリン】を回避したホワイトゴブリンの喉を突き刺す。そのまま抉り込んだら手放し、回復されないように体を掴んで後ろへ放り投げる。
ホワイトゴブリン自体は通常のゴブリンと同じ大きさでしかないので、投げられない事は無い。僕もバックステップで後ろに下がり、ようやく均衡を破る事が出来た。
それにしても、イベントの正騎士部隊みたいに連携してくるんだけど、これ絶対ボス戦の所為でしょ?。




