0230・新魔法と農地
今はキャスティの話を横に置いておき、僕達は魔物を倒して移動を続ける。出来れば21階で多くの敵と戦えれば良いんだけど、そこまで多くの敵が居ない。仕方なく22階へと進み、そこでも魔物を倒していく。
マーマンはラスティアに踊ってもらい引き寄せて、僕とセナで石球を投げて倒す。材料は近くに山ほど転がっているので、作る手間さえ掛ければ数は揃う。とはいえ、もう石球作り程度じゃ碌な経験にはならないらしい。
ビッグハンマークラブやサハギンを倒しつつウロウロしながら探す。たまにラスティアが踊って無差別に引き寄せ、皆が魔法を放って一気にダメージを与える。
フォグの【アースボム】はバレーボールぐらいの大きさの球が飛んでいき、着弾すると周囲に【アースバレット】が飛ぶ。この魔法は相手が大きいと多段ヒットするので強力だが、キャスティが問題点を指摘してくれた。
「実はウェーブ系の魔法は範囲が広く味方に被害を与えやすいのですが、代わりに潰される事が無いのです。各種ボム系の魔法は飛ぶ前に攻撃がぶつかると、その時点で着弾となり爆発します。場合によっては味方の中心で炸裂する事になり……」
「それが冗談じゃないから厳しいのよねえ。上手く使わないと酷い目に遭うのがボム系魔法なんだけど、逆に敵が使ってきたら利用する事も出来るわ。当然、使ってくる魔物が居るから注意しないといけないわね」
「各種魔物のマジシャンタイプ、それの一定レベル以上は使ってきますね。気をつけておかないと敵の魔法が炸裂して酷いダメージを受けます。なるべくは盾で止めますけど、限度がありますから期待しないで下さい」
「了解。まあ、盾に接触したとたん炸裂するんじゃねえ。四方八方に飛び散られたら、防ぎ切れないのも仕方ないさ」
実際に厄介な魔法みたいだし、まだ使われていないのは運が良いのか悪いのか。より高レベルで強力なのを喰らう前に知れたのは良かったけど、経験してないからイマイチ判断がつかないな。っと、戦闘に集中しよう。
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
使い魔:ラスティアの種族レベルが上がりました
メイン職業:暗殺者・下級のレベルが上がりました
サブ職業:踊り子・下級のレベルが上がりました
使い魔:キャスティの種族レベルが上がりました
メイン職業:盾士・下級のレベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:シグマのレベルが上がりました
召喚モンスター:セスのレベルが上がりました
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それなりの時間を戦い、素材も十分手に入れたので脱出する。ダンジョン街を出て師匠の家へと戻り、ソファーのある部屋でマイルームへ。倉庫に素材を突っ込み、まずはプレイヤーマーケットを確認する。目的の物はあるかな?。
検索するとすぐに見つかり、サブ職業が農家の人が売っていた。僕は各種の種を購入し、次に運営マーケットで30万デルの農地を購入した。どうやら土作りを始め、色々としなきゃならないらしい。
そんな事は放り投げ、僕は買ったばかりの農地を見に行く。外に出ると庭を含めた家を囲うように柵が出来ており、玄関を正面に見て左側に農地が出来ていた。柵に出入り口があったので開けて入ってみる。
……うん。農地というか土が剥き出しの土地があるね。僕には農業の知識なんて無いからキャスティに放り投げよう。僕は囲炉裏の部屋に戻り、召喚モンスター達を呼び出した後、ソファーの部屋へと戻る。
次にキャスティに農地を買った事を伝え、マイルームに2人を転移させる。何故かラスティアも見たがったので連れて来たけど、見て分かるのかな?。
「全然? 踊り子に農業の知識を要求されても困るわね。そもそも何をどうやって育てるかも知らないし、こういうのは専門家に任せるべきでしょ」
「土は悪くないようですし、水は井戸があるので問題ありません。肥料は……今のところは諦めましょうか。何度かは育てられるでしょうし、肥料は売っているかもしれません。農地が売っているくらいですから」
「まあ、言いたい事は分かるよ。マイルームに関してはどこまで出来るか分かってないし、マイルームという名前だけど、これ箱庭だよね?」
何となく僕の言いたい事が分かったのか、2人も農地を見て溜息を吐いている。キャスティならこの環境でずっと生活できそうだね。作物作って売って生活して……って、なんだかストイックにやるか、早々に飽きて終わりそうだ。
「キャスティ1人なら話し相手も居ない訳だし、早々にギブアップするでしょう。流石にこの空間で害されずに生きていけると言っても、孤独じゃすぐに限界を迎えるだろうし」
「ですね。流石に私もそれに耐えられるとは思いません。早々に駄目にはならないでしょうが、それでも永くは耐えられないでしょう」
僕はキャスティに種を渡すものの、キャスティは農具が無いので無理だと言う。ああ、鍬とかスコップとか必要だよね。僕は囲炉裏の部屋に戻り、倉庫からスノーウッドと甲殻を出してキャスティが言う物を作っていく。
鍬にスコップに鎌などを作って渡す。スコップに関しては大きいのと小さいのを作った。僕は何でもスコップと呼んでるけど、シャベルとかショベルって言うんだっけ? 西と東で呼び方が逆だって聞いた事がある。ま、どうでもいいけど。
キャスティに他に必要な物を聞いたら、ガーデンナイフという物が欲しいようだ。聞くと先が内側に湾曲している鎌っぽいナイフだった。【錬金術】で作り渡すと、キャスティは種を持って農地へと移動した。
僕はふと思い、如雨露も作って持っていく。流石にコレは必要だろうと思って渡すと、キャスティは久しぶりの土いじりに忘れていたらしい。如雨露を渡した後、夕食になったら強制的に召喚する事を言ってから移動。ソファーの部屋へと戻る。
ファルを呼んで料理を任せ、僕はスノーウッドと甲殻を使って様々な物を作り、それらをプレイヤーマーケットに流していく。あまり作らない物から、先ほどキャスティに作った農具まで。それらを作るのも経験になるだろうと思っているからだ。
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サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました。
サブ職業:錬金術師・下級のレベルが上がりました。
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ギリギリだったのか2つレベルが上がったので止め、プレイヤーマーケットに全て流すとファルが呼びに来た。なのでラスティアとキャスティを呼びだすと、片方は踊りの途中であり、片方は中腰の態勢で固まっている。
急に呼ばれてビックリするのは分かるけど、僕に当たるのは止めてほしい。とりあえず止まってくれたので食堂に行くと、五月蝿いと師匠に怒られてしまった。
「先にコトブキが断りを入れておったのなら、怒る筋合いではあるまい。そなたらが忘れておっただけであろうが」
「それは、そうなんだけどねぇ。こう、練習を見られるのは色々とあるのよ」
「私なんて中腰での作業中にいきなりですよ? 周囲の景色が急に変わるとビックリするのは当然でしょう」
そんな事を言われても困るんだけどね、本当。僕は呼び出すって伝えておいたんだから、悪くないよ?。
74話の誤字報告、ありがとうございました




