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0219・2度目の死亡と洞窟の呪術士




 「ッ!!」


 「ふーむ、予想外に梃子摺りますね。まさかそんな低レベルでここまでとは、流石は女王陛下が認めただけはある。ですがレベルの差というのは時に覆せない程のものなのですよ」



 僕は先ほどから短めのレイピアの攻撃を必死になって避けている。微妙にカスっていて血が出ており、結構な傷に見えるだろう。もちろんこれは”ワザ”とであり、とある連中の目を眩ませる為にやっている。



 (それにしても貴方が【心力操作】を持っていてくれて良かったですよ。でなければ、ココまで明瞭な形で伝える事はできなかったでしょう。まだ上手く扱えないようですが、こちらから一方的に伝えさせてもらいます)


 (こう……かな。何とか使えるけど、高度な仙力と違ってやってやれない事もないね)


 (驚きました。まさか一度使われただけで、ここまで上手く使うとは……。本当に女王陛下が勲章を渡されただけはある。それよりも手短に伝えます。私は恋人を人質にとられており、その所為でラギル伯爵に従わざるを得ないのです)


 (人質にとられた人と、とられた理由は?)


 (人質にとられた理由は、私が奴隷売買の現場を目撃したからです。その時に運悪く見つかってしまい、情報屋仲間にも話せなくなってしまいました。貴方に話しているのは部外者だからです。何か奴等を欺く方法はありませんか?)


 「グッ! ……はぁ、はぁ」


 「なかなかにやりますが、徐々に傷が増えていますよ? 避ける動きも鈍っていますし、いつまで耐えられるか見物です、ね!!」


 (欺くって、どういう事さ? ちゃんと説明してくれいないと困るんだけど?)


 (この町の近くに盗賊団が潜伏している洞窟があります。北東の森の筈ですが、そこに<呪術士>が居て、その者が私の恋人に呪いを掛けているのです。その所為で従わざるを得なくなってしまい、秘密裏に手助けしてくれる者を探していました。しかし、まさか夜中に外に出るなんて思いませんでしたよ)


 (適当に尾行してくるヤツを引っ掛けようと思っただけさ。ガロイさんが出てくるなんて思わなかった訳だし、僕に怒りを向けられても困るよ。それより誰にも見つからずに町を出る方法は?)


 (は? ………町の南西にあるスラム。そこの一番南西の小屋に、外に通じるトンネルがあります。緊急脱出用ですが、それがどうかしましたか?)


 (僕は稀人だからね、死んでも復活する。なのでここで殺してもらおうか。その後、僕は宿から出てスラムに行く。殺した後で僕に逃げられたと報告すればいい。どうせ誰かから監視を受けてるんでしょ? 【念話】なんて回りくどい方法をとってるぐらいだし)


 (……まさか稀人だったとは。しかし殺してしまっていいのですか? 稀人は死ぬとそれなりの間、弱くなると聞いた事がありますよ?)


 (僕はネクロマンサーだからね。弱体化しても仲間が居るし特に問題は無いよ。それに転移札も持ってるしね。それを使うフリをすれば、逃げられたと分かる筈さ。そして僕は真相に辿り着いてない、そう見える筈)


 (確かに。この状況での最有力容疑者は私となるでしょう。渡した紙には伯爵の犯罪の事は書いていませんからね。では、いきますよ!!)


 「……はぁ、はぁ」


 「ここまでとは天晴れです。もはや手加減抜きで貴方を仕留めましょう。………【死風二陣】」



 僕はスキルを使われる前にガロイさんとタイミングを合わせて懐から何かを出すフリをする。ガロイさんには転移札と言ったけど、実際にはマイルームに置いてきてるから、それっぽく見せる事しか出来ない。



 「なっ!? 消えた!? ……いったい何処へ行ったのかは分かりませんが、先ほどの攻撃で間違いなく致命傷の筈」


 「吟遊詩人、ご苦労だったな。仮に先程のヤツが逃げ切れたとしても、それで捕縛され、首を落とされるのはお前だ。奴隷売買の罪はお前に着せられるからな」


 「くっ! お前達という奴は!」


 「ははははは! 所詮この世は利用する者とされる者しか居ないんだよ! はははははは……」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ―――――――――――――――


 ※スキル:【心術】の【念話】を習得しました


 ―――――――――――――――



 目にも留まらぬ速さで二閃された僕は、その一撃であっさりと死亡。倒れるまでは分かったが、次の瞬間には宿の部屋に戻っていた。


 僕はすぐにマイルームへと飛び、倉庫から装備とアイテムを回収。そしてラスティアとキャスティだけじゃなく、召喚モンスターを含めた全員に説明をする。


 そして宿を素早く出た僕は、【精密魔力感知・下級】と【練気感知・下級】を使いながら、町の南西にあるスラムの更に南西へと進む。小さな小屋があったのでそこに入り、小屋の中を詳しく調べると、木箱の下に空間があった。


 ゆっくりと静かに木箱を動かすと、地下への梯子を発見。必死になって降りていく。現在の能力値は1割しかないから大変なんだよ。10分経たないと2割には戻らない。何とか下まで降りて、トンネルを進んで行く。


 狭いし小さいけど、それでも進めなくはない。こういう時は背が低いのが素直にありがたい。突き当たりに梯子があったので上ると、町の外に出られた。僕はすぐに皆を呼び出し、北東の森の中にあるという洞窟を探しに行く。


 どこに居るのかは知らないが、呪いを掛けている敵を倒さないといけない。今回はドースが留守番で、代わりにファルを入れている。これは行き先が洞窟だからだ。流石に洞窟の中では馬のドースは活躍できないだろう。


 【精密魔力感知・下級】と【練気感知・下級】を使うも、なかなか上手く確認が出来ない。ブレブレになって集中できないのは<状態:デスペナルティ>の所為だ。初めてなったけど、思ってたより厳しいな、コレ。


 それでも皆の一番後ろでついていくと、フォグが匂いで発見してくれた。お手柄だフォグ。盾のファル、シグマ、セス、キャスティを前に出し、盗賊がいる洞窟へと入っていく。ここまでに10分は掛かっているので、死にたてよりはマシになった。


 それでも厳しい状態ではあるが、<呪術師>を早く何とかしないと状況が悪化する一方だからね。それに、もう1度ガロイさんと戦うのはゴメンだ。あの人レベルが高いから、明らかにこっちが不利なんだよ。


 洞窟の中ではラスティアが大活躍だった。寝ている盗賊達に対し、殆ど音をさせる事もなく暗殺して回っている。何故か分からないけど、妙に生き生きとしてるのは気のせいかな? まあ、今はありがたいんだけど、キャスティが微妙な表情をしてるよ。


 結局、殆どの盗賊はラスティアが1人で殺害した。しかしその事で、どうもボスと数名が奥で起きたようだ。全部で4人かな? 動きがあるから間違いない。洞窟に入って20分ほど経過してるからか、ようやく5割ほど戻ってきた。弱いけど戦えなくもないね



 「そこに居る奴等出てこい!! 居るのは分かってんだぞ! 魔力も何も隠してねえんだからな!!」



 隠してないというより、隠すスキルを持ってないだけなんだけどね? そう思いつつも盾4人を前面に出して戦闘を始めた。何故か呪術師っぽいヤツと、幹部のようなの2人とボス。全員男なんだけど、同じ部屋で寝ていたようだ。


 これはアレ? そういう関係だから一緒に寝てたの? それともイベントでの戦闘だから? ……普通に考えれば盗賊のボスは1人部屋だよね。それが何で男だらけで寝てるんだろう?。


 適当に【ダークヒール】を使うだけだから、ちょっと暇な所為で下らない事を考えてた。戦闘に集中しよう。



 「ハッ! この程度の実力で攻めて来るたぁ、<皆殺しのドンメス>様も舐められほげぇ!」



 急に何だと思ったら、僕の使った【ダークヒール】で<状態:弛緩>になっていた。こんな状態異常まであるんだねー……初めて知ったけど、戦闘が終わった仲間達がジト目で見てくる。



 ―――――――――――――――


 召喚モンスター:セスのレベルが上がりました

 召喚モンスター:セスのレベルが上がりました


 ―――――――――――――――



 僕はボスと呪術師に<煉獄の枷>を嵌めながら、僕の所為じゃないし偶然だと主張しておいた。ま、聞いてもらえなかったけど。


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