0217・ガロイからの情報
セッテア町で起きた僕は、なるべく日数というか時間を掛けない為に町を早く出た。門番にはちょっと怪しまれたがスルーし、鞍の上に乗った僕は一気に走り出したドースに摑まって進む。
スタミナが存在しないドースは元気よく駆けて行き、夕方には3つ先のカイム町まで来た。
驚くほどの早さで通過してきたけど、それでもロスムーダ町には着いていない。それでも本来なら2日掛かるところを1日で来たんだから、十分すぎるほどに早い。僕はドースを褒めながら町の近くで降りて歩く。
ドースと一緒に門番から質問を受け、それが終わったら通される。町の人に宿の場所を聞き、1人部屋をとったら部屋へ行きドースをマイルームへ。1人で食堂に行き夕食を終えたら、宿の部屋へ戻ってからマイルームへと移動。
ラスティアやキャスティに話を聞いたが、一日適当に体を動かしていただけだそうだ。僕は明日にはロスムーダ町に着ける事を説明し、囲炉裏部屋でログアウト。本日はここまで。
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2000年 9月30日 土曜日 AM8:38
今日も移動の日なんだけど、昨日1日で随分進んだから昼頃には到着するだろう。問題はそこからだけど、まずはガロイ氏を探さなきゃいけない。吟遊詩人で銀のハープを持ってるって聞いたけど、なんだか何処かで聞いた事があるような……?。
ログインした僕はプレイヤーマーケットの売り上げを回収し、昨日作ってくれたファルのアイテム類をプレイヤーマーケットに流す。倉庫を確認して足りない物を補充したら、僕は宿の部屋へと戻った。
さっさと宿を出て食堂に移動、朝食を食べたら町を出る。少し歩いた後でドースを呼び出し、昨日と同じ速さで進んで行く。昨日の今日だというのにドースは楽しそうに爆走し、気付けば昼前にロスムーダ町に到着した。
相変わらず門番には警戒されるが、質問を受けて答え、町の中へと入る。まずは宿の部屋を確保する為に向かい、1人部屋をとった。次にマイルームへと行き、ラスティアとキャスティに呼び出す事を言って宿の部屋へ。
部屋の中で呼び出した僕は、2人と共に部屋を出て食堂へと向かう。宿の従業員に驚かれたけど、そのままスルーして宿を出た。町の人に聞いた食堂に行き、食事をしつつ今日の予定を話す。
「ロスムーダ町に到着したけど、今日これからやる事は人探し。聞いていたガロイという人を探「私がどうかしましたか?」すんだけど……」
「「………」」
僕とラスティアとキャスティは、声を掛けてきた人を見る。優雅な感じで食事をとる華奢でイケメンな人が隣の席で食事をしていた。幾らなんでもこんな偶然があるの? それともイベントだから?。
そんな風に固まっていると、ガロイ氏の方から再度話し掛けてきた。
「私の名前が聞こえてきたのでお聞きしたのですが、私に何か用があるのですか? 私にはありませんが」
「すみません。僕はコトブキといいます。こちらに居るのはラスティアとキャスティ。僕達は王都のベイズさんに、ガロイさんに会えばいいと言われて来たんですよ」
「………ベイズ殿にですか。分かりました、この後で<バルクラ>という酒場に来て下さい。そこの裏に私が寝泊りしている建物があります。町の東側なのですぐに分かるでしょう。では、私はこれで」
食事を終えて席を立ったガロイ氏は、そのまま食堂を出て行った。僕達も食事をした後に出て、町の東側にある<バルクラ>という酒場へ行く。町の人に聞くと大きな酒場なのですぐに分かるとの事だったが、凄く大きな2階建てだった。
そんな分かりやすい酒場の裏に回ると従業員用の宿舎っぽい建物があり、その建物の前にガロイ氏が居た。彼に案内されるままに僕達は部屋へとついていく。何故か建物の1室に石造りの重厚な部屋があった。どういう事?。
「ここは密談で使われる場所なんですよ。酒場の裏扉から出てここへやってくる方はそれなりに居ましてね、そもそも酒場自体が情報屋だと言っていいのです。……で、私に用と窺いましたが?」
僕はそう言うガロイ氏に、まずは<ブラッディア血聖勲章>を見せる。それだけで事が重大だとでも思ったのか、真剣な表情に変わる。
「僕達はこのメダルを下賜された方からの直接依頼を受けています。それはここの伯爵が怪しいので調査せよ、という依頼なんです。それでベイズさんは、ロスムーダ町に行って貴方に聞けと」
「成る程、そういう事ですか。……確かにラギル伯爵には良くない噂があります。ここは国境に近い町であり隣には辺境伯領があります。東にある辺境伯領とどうしても比べられますし、その南の子爵領とも比べられますからね」
「つまり……どういう事よ?」
「サーヤ辺境伯の南を守る、セプリオ子爵と比べても悪いという事です。そして北のアヴァンデス辺境伯からも疑問視されている訳です、その力量を」
「隣の子爵と比べられて、この者で大丈夫かと思われている。鬱屈していると裏切りそうですね。それが情報を売り渡すだけなのか、それとも何かしらの実力行使を考えているのか」
「流石にそこまでは分かっていません。どんな種族であっても裏切りはあり得る事ですし、避けては通れません。絶対の忠誠など、女王陛下の近くに侍っている方しか持てませんよ」
「まあ、アレはねえ……」
「それで、ラギル伯爵についての情報などはありますか? どれぐらい必要かは情報によるんでしょうが」
「そうですね……20万。これでラギル伯爵に関わる全ての情報をお出ししましょう」
「分かりました。その情報を買わせてもらいます」
「「………」」
20万という金額が高いか安いかは知らないが、僕は金額を支払い、ガロイ氏から聞けるだけの情報を聞きだした。こちらからの質問にもすぐに答えてくれたので嘘は無いと思う。それと、情報を纏めた紙もくれた。
僕達は情報を全て貰ったので、一旦宿の部屋へと戻る。1人部屋だから狭いけど、ベッドの上に座ったりして考えていく。ラギル伯爵の情報を精査していくけど、それなりの常識人で国に対する忠誠もある人だった。
ところが、どうにも怪しい連中が伯爵邸に出入りしている形跡があるらしい。外から窺っているだけなので分からないが、度々同じ馬車が目撃されている。いったい何を話しているか分からないものの、ここ最近の事らしい。
そして伯爵の嫡男が病に臥せっているという情報もある。合わせて考えると、出入りしているのは薬師か神官なんだろうが、その割には頻繁に出入りしているとの事。毒か病気か、はたまた呪いか。憶測だらけで分からないね。
「その頻繁に出入りしているのは<デボン商会>という所の馬車だって事だけど、商会の馬車に乗ってるなら薬師かしら? もちろん神官を乗せている可能性もあるけど……商会なら薬の元である薬草も持ってるでしょうし」
「伯爵家の嫡男が何がしかを患っているとして、それと伯爵が怪しいというのは繋がらないような……?」
「仮に他国に情報を売って、儲けたお金で息子の治療? しかし周りと比べても劣る伯爵の実力。お金の為に裏切ってるなら大変分かりやすいんだけど……」
「言いたい事は分かりますが、世の中そう単純ではありません。伯爵が劣っているというのは周りと比べてですし、普通の実力はある伯爵かもしれませんよ? 優秀な者と比べられれば、普通の者も劣っているように見えます」
「まあ、人伝だもの。本当に劣ってるかどうかなんて分からないわ。こういう時は事実だけを積み上げた方がいいわね。妙な情報は排除しましょ」
何故か謎解きっぽくなってきてる? 明らかにゲームの種類を間違えてる気がする。




