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0216・酒場と依頼




 「失礼します、貴方が店主のベイズさんですか?」


 「おお、そうだぜ。どうしたお坊っちゃん、オレに何か用か? ここにはお坊っちゃんに合う酒や食いもんは無いぜ」


 「「「「「ハハハハハハハ!!!」」」」」


 「何が面白いのかは知りませんけど、コレを」



 僕はそう言ってカウンターに<ブラッディア血聖勲章>を置く。それを見た途端、カウンターに居る連中は全員黙った。そしてテーブル席の者達は固唾を呑んで見守っている。何か異様な反応だな。



 「………ふぅ。まさか少年がこんなもんを持ってくるとはな。ナムラ! 聞こえてるか、ナムラ!!」


 「……なによ? 今仕込みの最中なんだから、いちいち呼ぶな!」


 「コレを持ってきた客だ。オレはお客の相手をしなくちゃなんねえ。すまねえがカウンターを空ける。いいな?」


 「……分かった。そこのアンタ、代わりに働きなさい。後でお酒奢ってあげるから」


 「よろこんでー!」



 緊迫してたのに、急に何処かの居酒屋チェーンになったよ。それはともかくとしてベイズ氏が僕達に「ついて来い」というのでついて行く。僕達自身、何がなんだか分からないけど、とにかく今のところは黙ってついて行こう。


 2階の1室に案内されたので中にあった椅子に座る。罠という事は無い筈だから座っても問題ないだろう、ベイズ氏から薦められたんだし。



 「一応言っておくんだが、薦められたからって簡単に座るのは止した方がいいぜ? 椅子に罠が仕掛けられてたり、座った途端に周りを囲まれる事もある。何処の誰であろうと死んじまったら終わりだからな」


 「僕は稀人なんで死んでも復活しますけどね。それはともかく、師匠からここに行って勲章を見せろと言われて来ただけなんですよ。僕はコトブキといいまして、師匠は<破滅のエンリエッタ>と言います」


 「何てこった………<破滅の魔女>の弟子かよ。しかも稀人ってシャレにもならねえなー。何であの方はそんなとんでもないのに勲章を与えられたのやら。まあ、いいか。オレ達はこの国の闇だ、とはいえ悪い意味じゃねえぜ?」


 「どういう事よ? ああ、私は元悪魔のラスティア。<狂性の悪魔>とも言われた【色欲】のラスティアよ。今はコトブキの使い魔をしているけどね」


 「私は封印されていますが、【純潔】の天使キャスティ。ラスティアと同じくコトブキの使い魔をしています」


 「………少年はメチャクチャすぎるな。疲れてきたが、まあいい。ここは国の闇の仕事を仲介する場所だ。簡単に言うと、ある場所に侵入してこいとか、どっか行って証拠を手に入れてこいとかな。しかし<破滅の魔女>の弟子で、あの方から勲章を貰ってる者をどうしろって、うわ!?」



 いきなりベイズ氏の背後からタキシードの人が現れて、何枚かの紙を渡すと影に沈んでいった。元々ここの人達さえ関係なく、僕をここに連れてくる事が目的だったのだろうか?。


 ベイズ氏はいきなり来たタキシードの人にビックリしながらも、今は数枚の紙を真剣に読み、そして思いっきり溜息を吐いた。いったい何があったのだろうか?。



 「こりゃあ……ちょっと大変だけど、あの方々が渡してきたのなら頼むって事なんだろうなぁ。王都から北に行った所にロスムーダという町がある。その辺りを治めているラギル伯爵がちょいと怪しいようだ」


 「つまり、その怪しい伯爵を調べて罪を暴けって事ですか? それとも別の事?」


 「さて……そこまでは何とも、ってところだな。とはいえロスムーダには潜んでいる奴がいるし、そいつに聞けばもっと詳しい事が……って、ガロイかよ」


 「「「ガロイ?」」」


 「ああ、奴は吟遊詩人でな。銀で作ったハープを持ってるからすぐに分かる。アイツはレクイエムが得意なんだが、何故か瘴気アンデッドがやたらに集まるんだよ。それを浄化して還している奴になる。主にあの辺りの地方で情報屋をしている奴だ」


 「そのガロイ氏に聞けば詳しい事が分かるという事ですか?」


 「そうだな。お前さんに依頼する仕事はラギル伯爵の怪しい噂の真相を調べる事だ。お城のあの方からの直接依頼となる。正直オレ達はダシに使われただけで、本命は直接依頼だったんだろうな。今までも色々居たけど大変だぞ? 命を大切にな。それと返しておく」


 「ええ、ありがとうございます。とりあえずはロスムーダという町にいるガロイ氏を訪ねてみます」


 「おう、頑張れよ」



 僕は2階の一室を出た後、その足で酒場を出て町中の食堂に向かう。そこで3人で食事をし、宿の部屋へ帰ってマイルームへ。とりあえずブラッディアの紹介本で確認するんだけど、王都からから北としか書いてないね。


 他国の者に地理を把握されても困るからだろうけど、地図の方には……あった。王都トゥーラから北にソーティム町、ボウニ村、セッテア町。ニニス村、ウェズス村、カイム町。モルエル村、サフニン村、ロスムーダ町。結構遠いなぁ。


 とにかく位置関係は分かったので、明日からは僕とドースで走って行こう。出来るだけ急いでもらわないと、早くは着けないからね。それにしても、このイベントは移動に時間が掛かるイベントだよ。仮に馬を使っても大変だし。


 問題は、師匠の弟子に起こるイベントなのか、それともマリア女王に気に入られたら起こるイベントなのかが分からない事だ。どっちかによって難易度が大きく変わる。


 女王に気に入られたなら誰にでも可能性はある、だからそこまで厄介なイベントじゃなくシンプルにしてある筈だ。でも師匠の弟子だから起こるイベントだった場合、ネクロマンサーである事が前提になる。それを使って解決の場合は単純じゃない。


 ネクロマンサーの召喚モンスターって結構色々な事が出来るから、何をして解決か特定し辛いんだよね。場合によっては特定の進化先じゃないとクリアできませんとか。そんな可能性もゼロじゃないところがさー、怖い。


 まあ、嫌な想像ばかりしててもしょうがないから、そろそろログアウトしよう。ファルの作った物をプレイヤーマーケットに売り出したら、今日はここで終わり。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 2000年 9月29日 金曜日 AM8:31



 ここ最近ゲーム内で移動しかしていない気がするけど、イベントだから仕方ないとも思う。もしかしたら他のプレイヤーもイベントでは似たり寄ったりなのかもしれない。単に僕が初めてなだけで、皆は経験してきてるのかも。


 元々<屍人の森>から始まって、ずっとあの辺りに居たし、そういうプレイヤーの方が珍しいのかな? 結構な人が転移で移動してるらしいし。


 ログインして起き上がり、まずはプレイヤーマーケットのお金を回収し、適当な食べ物や素材を買って詰めておく。そうすれば後はファルが【木工】スキルで加工してくれる。木製武器も割と売れているので助かるよ、本当。


 宿の部屋に出たら、そのまま宿を出て食堂へ。朝食を食べたら王都を出て少し歩き、ドースを呼び出したら乗って出発する。ドースに【疾走】を使ったりして急ぐように頼むと、更に加速して走り始めた。どうやら【身体強化】まで使ったらしい。


 ドースの体にしがみつくような感じで走らせているが、ドース自身は全力で走れて楽しそうだ。殆ど爆走と言っていい速さで走っているが、体が怖ろしくブレないので乗りやすい。それでも前からの向かい風はどうにもならないけど。


 ソーティム町とボウニ村を越えて、セッテア町に昼前に着いた。門番には爆走してきたのでジト目で見られたが、事故は起こしていないので許してもらえた。セッテア町の中で食事をとり、ドースに見張って貰いながらリアルで昼食。


 雑事を熟したらすぐにログインする。今日1日で出来るだけ進んでおきたいからね。1分1秒を無駄にしたくない。


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