0213・ドゥエルト町に到着
2人がジト目で見てきた理由は、昼食を食べ終わる頃にはガリ○リ君が溶けていたかららしい。仕方なく運営マーケットでガ○ガリ君を2本買い、2人に渡すと簡単に笑顔になった。天使と悪魔がお菓子に弱過ぎる気がするんだけど……?。
僕のそんな思いも気にせず美味しそうにアイスを食べる2人。まあ、とりあえず行こうか。僕は皆に声を掛け、アトー村から先へと進む。大して変わり映えのしない景色の中を歩いて行き、たまに出てくる魔物も適当に蹴散らす。
そのまま歩いて行き、ドゥエルト町に到着した。やっぱり前回と比べて短い時間で到着している。道に変な感じはしなかったけど、能力値とかレベルによって距離が変わるのかな? それとも大型アップデートで距離が減った?。
最初はあまりプレイヤーに動き回ってほしい感じじゃなかったし、意図的に時間が掛かるようにしてた……可能性の話なので何とも言えないけど、前回よりも早いのは間違い無いんだよね。
ドゥエルト町に来たので門番に話して中に入り、町の人に宿の場所を聞く。町の中に入ってから、正規の手続きで町に入ったのが初めてだと気付く。だから何だという訳じゃないんだけど、前回は兵士に捕まって牢に入れられたからなあ。
僕は宿に行き3人部屋をとる。宿の人には訝し気にされたけど、ラスティアとキャスティ以外は召喚モンスターだと言うと納得された。セナやフォグはともかく、シグマやセスを見れば分かるだろうと思ったが、正アンデッドがいるから分からないかと考え直す。
一泊分の4500デルを支払い部屋をとったらドースをマイルームに召喚し、僕は宿へと戻る。宿の従業員が驚いていたけどスルーし、僕達は町へと出る。目的は王都までの情報収集だ。
行き交う人達に聞くと、移動馬車の所へ行けと教えられたので移動馬車の店へと行く。どうも様々な人を乗せて運ぶ専用の馬車が町から町へと出ているらしい。そういえばナツとイルが乗り継いできたのがこの馬車かと思い出した。
明日も朝から出るらしいので料金を聞くと、1人2000デルで3つ先のアットルマの町まで乗せてくれるそうだ。これは何処でも同じで、次の町まで2000デルだが途中の村で降りても2000デルとなっている。
厄介な料金体系の気もするけど、古い時代ってこんなものかな。馬車もタダじゃないんだし。とりあえず明日どう動けばいいかが分かったので、町中をウロウロしつつ必要な素材をちょこちょこと買う。これはファルへのお土産だ。
その後もウロウロし、ベッドを2つと毛布を6枚購入。他にも色々買った事で散財したけど、必要な事なので我慢する。ベッドって意外に高いんだなぁ。別に最新式の物でもないし、スプリングも入ってないのに。
一旦宿の部屋に戻った僕は召喚モンスター全員をマイルームへと召喚し、僕とラスティアにキャスティの3人で酒場に行く。適当な注文をし、2人は酒を頼んで良いかと聞いて来たので好きにさせる。僕は飲まないけどね、そもそも未成年だし。
適当に頼んだ食事を済ませ、宿の部屋に戻った僕達は呆れて溜息を吐く。2人はほろ酔いだったが、別に前後不覚なほど酔っ払ってはいない。そんな2人を襲おうと思ったのか、後ろから3人ほど尾行していたのだ。
「本当にバカだけど、捕まえた方がいいのかな? 【精密魔力感知】でも【練気感知】でも把握できている程度でしかないんだけど、どうしてバレないと思えるんだろう。呆れるしかないよ」
「往々にしてバカな男なんてそんなものよ。サキュバスですら、いちいち相手にしないバカでしかないっていう自覚が無いのよ。古くから居るけど、こんな時代でも居なくならないのねえ……」
「女性も変わりませんけどね。天使の星でもそうですが、女性だからと安心したらお持ち帰りされる事はありますよ。どちらにしても、そんな者は一部でしかありませんけど」
「仮にもしそんな奴等だらけなら、あの女王が黙ってないでしょ。徹底的に根絶やしにするでしょうし、許す筈が無いわ。女王らしく腹黒いしね」
「まあ腹黒くなければ女王なんて出来ないでしょう。そもそも己の狂信者が子飼いな時点で……」
「とりあえず面倒だから放り投げよう。どのみちマイルームに戻ったらベッドを置くから、そこで寝ればいいよ、僕も囲炉裏の部屋で寝る気だし。宿の部屋をとったのは言い訳の為だけだからね」
実は町中でマイルームに渡りログアウトする事も可能なので、宿の部屋を無理にとる必要は無い。マイルームから戻った際に、宿の部屋か町の片隅に出てくるかの違いぐらいだそうだ。これは検証班が既に検証していた。
とはいえ町の片隅にいきなり出てきたら「あいつ宿代も無いのかよ」と思われかねないので、僕としてはそんな恥ずかしい真似は出来ない。だから宿の部屋をとったんだ。
「まあ、確かにあの安全な空間があったら宿をとる必要は無いわね。絶対に安全だし。でもコトブキの言いたい事はよく分かるわ。流石に宿代も無いって思われるのは嫌すぎる」
「嫌すぎと言うより、恥ずかしすぎますよ。流石にそこまで落ちぶれたくないです。一日魔物を狩っていれば、宿代と食事代ぐらいは最低でも稼げますからね。それすら無いと思われるのは……」
「とにかくさっさとマイルームに行って、それから話そう。連中もそろそろ限界かもしれないし、いつ宿の中に侵入してくるか分からない」
僕はそう言ってマイルームに行き、ラスティアとキャスティをマイルームに召喚した。増設した部屋にベッドを置いて毛布を2枚ずつ渡す。僕は囲炉裏の部屋に毛布を敷き、その上に寝るのでこれで良し。
2人にはア○フォートを渡し、倉庫に素材を詰め込んだらログアウト。本日はここまで。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2000年 9月26日 火曜日 AM8:31
昨日は久しぶりに授業を受けて終わらせたけど、トモエは大丈夫なんだろうか。3人に比べれば大丈夫だと思うんだけど……お尻に火が着いたら全力でやるだろうから、それまで放っておくしかないかな。
ログインして周りを確認するも誰もいない。どうやらファルは作業室に居るらしい。昨日は木材やら釘やら色々買っておいたから、たぶん何かを作ってるんだろう。【料理】や【木工】は下級や中級と付かないから分からないんだよね。
僕の【錬金術】もそのままだし、スキルの名前はずっとそのままなのかもしれない。それでもスキルレベルは上がってるし、新しい錬金術も覚えてる。なのでファルのスキルも良くなってる筈だ。
訓練場に行って確認すると、皆は居るがラスティアとキャスティは居なかった。どうもまだ寝ているらしい。仕方ないので増設した部屋の外から声を掛けると、3度目で反応があった。
いつもは僕がログインしていると起きてるのに、今日は随分と寝ていたようだ。
「昨夜は結構遅くまで訓練場に居て体を動かしてたのよ。私もそうだけどキャスティもね」
「ええ。セナとの模擬戦はなかなか面白かったです。あのトンファーとヌンチャクって予想外に厄介ですしね。それにあそこでは神様の加護で死ぬ事はなく傷なども回復しますから、久しぶりに殺し合いも出来ました」
「本当にねー。久しぶりにアンタと本気で殺し合いをしたけど、昔と違うからかお互いに変な感じだったわ」
「ですね。貴女は力を失いましたし、私は封印されています。お互いに今の能力に合っていない事に気付けたのは良かったです。体の動かし方から見直さないといけませんが……」
どうも限界ギリギリの感覚が随分と違ってたらしい。僅かな事でも違ってると全力が出せないからね、そこはアジャストさせておかないといけないところだ。




