0212・まずは王都トゥーラへ
2000年 9月25日 月曜日 AM8:27
今日も元気にログインするものの、今日からはブラッディア国内の移動という旅行だ。マリア女王から貰った冊子にはちょこちょこと書き足してあるっぽい文字もあったので、僕を行かせたい場所があるんだろう。
とはいえ何のイベントがあるかは疑問だ。だってブラッディア王国には天使の星へのゲートが無いからね。だから大型イベントとかには関わらない国の筈なんだ。ある意味で安定している国だけど、ある意味では物足りない国でもある。
そんな事を考えつつログインした僕は、お腹の上のコタロウを横にどけ、プレイヤーマーケットの売り上げを木箱に入れる。何故コタロウが狭い箱の中に入りたがるのかは知らないが、コタロウを外に出して木箱をインベントリに収納した。
マイルームへと行き、木箱の中身を倉庫に収納した僕は、木箱を囲炉裏の近くに置いて師匠の家へと戻る。次に起きているであろうラスティアとキャスティの下へ行き、2人がマイルームへと移動出来るのか確認。すると普通に移動できた。
「へー、ココがコトブキだけの専用空間ねえ……。神様もとんでもない物を用意したものよ、ホント。わざわざ稀人1人1人に専用空間を狭いなりにも与えるなんてさ。……あれ? ここなら幾ら寝てても怒られない?」
「まあ、怒る人も居ないとは思いますよ? 私だって大天使様や大悪魔の監視から逃れられる空間ですからね。ここなら少々怠けても怒られはしないでしょう。何より体を動かせる場所があるというのは聞いてますし。訓練場でしたっけ?」
キャスティが訓練場の事を言い出したので訓練場へと行く。実はファルだけはログイン直後に師匠の家に呼び出している。【拠点召喚】は拠点を変更するだけなら魔力を消費しない。だから師匠の家とマイルームの拠点登録を交互にしているだけだ。
訓練場にはファル以外が全員居て、各々が好きな事をしている。セナはセスと1対1で戦い、射撃の的みたいな物にフォグが【ストーンバレット】を撃っている。遠くではドースが素早く走ったり体当たりをする練習をしていて、シグマがそれを盾で受け止めているようだ。
各々が自分の為になる練習をしているのを眺めつつ、僕は皆に声を掛けてから師匠の家に戻る。戻ってきてラスティアやキャスティをこちらに呼んだタイミングで、ファルが朝食だと呼びに来た。なので3人で食堂へと移動。
朝からログインしていたナツとイルにも事情を話し、僕がブラッディア国内を巡る事を話しておいた。僕が居ないので武器の修理などは出来ない事をちゃんと伝えておかないといけない。2人は特に問題ないと言っていたので大丈夫だろう。
「そもそも私はサイクロプスの和弓とスノートレウッドと白曜石のショートボウがある。弓矢のうち矢は壊れやすいけど、弓は簡単には壊れない。なのでコトブキが戻ってくるまでに壊れる事は無いと思う」
「私は鋼鉄のメイスも持ってるから修理に行けばいいだけだよ。そろそろプレイヤーマーケットで素材を買って料理しないとね。お肉は熊肉とかウサギ肉でも良いし、まだいっぱい余ってるから料理しなきゃいけないぐらい」
「最近は豪雪山に行ったりとかだったから、あまり料理が出来てないんでしょ? 今はサブ職業を上げればいいのよ。イルは私と一緒に近くを回ってくれる? 何か良さ気な魔物が居たらゲットしたいから」
「目標があるのは良い事じゃの。コトブキよ、西のドゥエルト町からは馬車が出ておる。金を払えば乗せてくれるから、まずは西の王都へ行け。国の位置としては、北にビスティオで南はダークフォレスト。西はサキュリアで東はホオズキとなる。覚えておくようにな」
「師匠は王都と繋げるのは止めろと言っていたので、王都を嫌っているのだと思っていましたが……」
「妾が嫌っておるのと、お主の行き先は関係が無い。妾が王都嫌いなのは、あそこの阿呆どもが妾に薬を作れと五月蝿いからよ。いちいち貴族どもの望む薬など作っていられん。奴等は際限が無いからな」
「成る程、そういう事っだったんですね。とはいえ、何で王都を薦められたのかは分かりませんが」
「王都トゥーラのスラム近くに<ベイズナムラ>という名前の酒場がある。荒くれどもばかりの店だがそこへ行け。店主であるベイズかナムラにお主が貰った勲章を見せれば良い。それ以上は向こうで聞いてから考えよ」
「分かりました」
スラム近くの酒場ねえ。こういう時に漫画とかだと、店主は情報通だったりするんだけども……このゲームではどうなんだろ? 少なくとも師匠が行けというぐらいだ。何も無いモブって事は無いと思う。それ以上は師匠の言う通り、行ってからだな。
朝食が終わったので僕は皆に一旦の別れを告げ、師匠の家を出てマイルームへと行きファルを【拠点召喚】。師匠の家の前に戻った後、ファル以外の拠点召喚をキャンセルして僕の周りに出す。
全員揃ったので歩き出し、まずは<屍人の森>を戦いながら進む。これは<腐った肉>を回収する為だ。アンデッドの肉体再生用に<腐った肉>を少し補充しておきたい。皆をバラけさせ、アンデッドを倒して回収してもらう。
短い道程ではあるけど多少は手に入ったので良しとし、そのままダンジョン街へ。実はダンジョンがある場所というのはそこまで多くないらしいのだが、立地によっては人が集まらない事もある。それがスカルモンド伯爵家の領内にあるこのダンジョンだそうだ。
何でも王都の近くにダンジョンがあるらしいので、一攫千金などの夢を持つ者はそっちに行くんだそうだ。後この国は他の国と違い、アンデッドが国民の大多数だ。そしてアンデッドは精神が風化したり、瘴気アンデッドになるまで死なない。
かわりに突然生まれてくるのがアンデッドであり、どのアンデッドも普通の血縁関係が無い。吸血鬼になったり血の盟約などはあるそうだが、それ以外での血縁関係は存在しないらしく、いわゆる義理の関係が全てなんだそうだ。
義理の親子、義理の兄弟、義理の姉妹。ただし夫婦関係はちゃんとあるし、婚姻もちゃんと証明される。子供も居るが義理の関係だというだけだ。アンデッドが子供を作るなど不可能なので、普通に考えたらこうなるだろうなぁ……というくらいかな。
そんな事も本に書いてあったと皆に話している。その本はキャスティが持ってるし、地図はラスティアが持ってるけども。
ちなみに僕は本の内容はともかくとして、地図はキッチリ記憶している。地図を失くしても困るので、覚えておいて出さないのが一番いい。
ラスティアが返してきたのでインベントリに地図を入れておく。あの本はブラッディア国内で普通に販売されているらしく、読んでても人目を引いたりはしないだろう。マリアさんの書き込みがあるけど、誰もそれを書いたのがマリアさんだと分からないし。
キャスティも本を返してきたのでインベントリにいれ、ダンジョン街を抜けて更に歩く。アトー村が見えてきたけどまだ昼前だ。前と比べて移動速度が随分上がってるような……これは能力値による影響なのかな?。
アトー村の入り口から少し入った所で僕達は腰を下ろした。プレイヤーマーケットで昼食を買い、ラスティアとキャスティに渡す。何故か揚げパンがあったので買ったものの、中身は肉野菜炒めだった。
調味料がちゃんと使われているので普通に美味しい。ラスティアはちょっと油が濃いって言ってるけど、不味くはないらしく食べている。僕は急いで食べ終わり、2人にガリガ○君を1つずつ渡したらログアウト。
リアルでも急いで昼食を食べて雑事を熟したら、すぐにログイン。すると、ラスティアとキャスティからジト目が来た。どういう事?。




