0203・運営さん達14
2000年 9月19日 火曜日
「大型アップデートが終わり、今日から第三陣の受け入れ開始だけど売れてるのかな? 一応第二陣も売れるのにそれなりに時間が掛かったようだし」
「第三陣に関しては、早く販売してくれという催促が多かったらしいけど? どうも第二陣の時は様子見が多かったみたいで、代わりに第三陣の発売は午前0時だったにも関わらず、朝までで残り1000を切ってる」
「あららー、もう9000売れたの? それは上も増やしたくなるでしょうね。……何というか、今月中に第四陣の販売とかしそうな気がする」
「次の第四陣は一気に10万まで増やすらしいから、流石に今月中じゃないんじゃない? 上の方としては早く売り出して、売れる時に売ってしまいたいんだろうけどさ」
「10万!? 流石に2万から10万じゃ、負担が桁違いに増えるわね。そのうえこのゲームに慣れてないのが一気に入ってくると、簡単なゲームだと思ってる連中がおかしなクレームを言ってきかねないわよ?」
『現在、隠しパラメータに関しては多くのプレイヤーの知るところとなりましたが、好意的に受け止められています。世の中にリアル志向のゲームが多い為、そこまで忌避されてはいません』
「まあねえ。スキルをブンブン振り回すゲームの方がよっぽどファンタジーだと思うけど、向こうは設定的にリアルなのよねえ。リアルな戦いの中でプレイヤーだけがスキルを振り回してる感じかしら」
「そんな感じだね。ウチは由緒正しいファンタジーの中にリアルとゲーム的な部分を入れてる。スキルを振り回すだけでは強くなれないっていうのも、古いゲームでは普通にある事だよ。むしろスキルを振り回せばどうにかなる方がおかしい」
「難易度とバランスはねえ、本当にシビアで難しいのよ。難しすぎれば客は離れ、簡単すぎても客は離れる。苦労をして達成しなきゃゲームは楽しく思えないけど、苦労し過ぎれば疲れて飽きる」
「本当にねー。ユーザーは簡単にバッシングしてくれるけど、難易度の調整は簡単じゃないんだよ。そもそも叩いてるユーザーと楽しんでるユーザーは違うんだ。全員が全員、叩いてる人間ほどゲームが上手いわけじゃない。叩いてる連中はそこが分かってないんだよね」
「これ以上愚痴ってても疲れるだけだから、仕事しましょうか」
『ブラッディアの女王マリアトゥーラが、<破滅>の家の庭に転移魔法陣を設置しました。ブラッディアの国境都市ミョウセンへの転移魔法陣です』
「うん? …………ああ、国境から侵入者が来るイベントね。……あれ? 思っているより随分と早くない? このイベントもうちょっと後の予定よね? 弟君のレベルだと相当厳しい事になると思うけど」
『マリアトゥーラの性格設定上、気に入った者がいれば勲章を渡すほどの人物かどうかを計ります。今回はそれとイベントが重なった結果のようです』
「重要NPCは性格設定でイベントのトリガーを引くかどうかを任せてるからこうなった訳ね。任せるのも良し悪しなんだけど、これは悪いとまでは言えないわ。そもそも完全失敗はしないイベントだし」
「………ああ、成る程。情報を持ち帰れば良いイベントか。ならそこまで精査して対処する必要もないね。それにこのイベントをクリア……したら結構凄い事になるなー」
「パーフェクトクリアは難しいでしょうけど、出来なくはないかなー、ってところね。あくまでも弟君ならだけど。マリアトゥーラがそこを込みでやらせてるなら、AIの学習としては相当上手くいっていると言えるわ」
…
……
………
『プレイヤー<コトブキ>が転移魔法陣を使い、ミョウセンの辺境伯家の中へと転移しました。メイドの襲撃イベントが開始されます』
「襲撃イベ……ああ、コレ。メイドの襲撃を上手く流せるかどうかで判定が変わるヤツね。最悪、能力が足りないと追い出されて、女王に言ってもらってようやく国境の調査を開始。という面倒な事態になるんだけど……」
『プレイヤー<コトブキ>はメイドの攻撃を流し、腕の関節を逆側に極めつつ床に押し倒しました。その後、メイドは救援を呼ぶ笛を吹き、兵士達が雪崩れ込んでいます』
「あっさりとメイドの攻撃を流したわね。殆ど不意打ちに近い筈なんだけど、何故か効かないっていう……でも納得している自分がいるのよねえ」
「おっと、登場! ……へー、ああいう感じになるんだ。巫女さんがお札投げて攻撃ってあるあるだけど、あんな刃物みたいなお札が飛んでくるなら負けてもしかたないね。巫女さんの武器としては怖ろしいけど」
「まあねえ。しっかし可愛い系じゃなくて綺麗系になっちゃってるのはどうなの? あれじゃあ小○ちゃんって感じがしないんだけど」
「小○ちゃんって言うの止めなよ。あれは一応、辺境伯のサーヤだから。奇○怪○の小○ちゃんじゃないから」
「そうだけど、元ネタは小○ちゃんじゃないの。こう、もうちょっと可愛い系に出来なかったの? せっかくのレトロな女の子キャラなのに、この扱いはねえ。マド○ーラの翼のル○アとかワルキ○ーレを押し退けての小○ちゃんなのに」
「まあそうなんだけど、その2人のキャラはちゃんと居るからね? 天使の星で未だ誰も会ってないから登場してないだけ。まあ、弟君が関わる可能性は低いだろうけども」
『プレイヤー<コトブキ>がティロエムを採取しています。これをマリアトゥーラに渡すとブラッディア国内の引き締めに繋がります』
「そこは良いんじゃない? もう今の時点でも勝てないだろうしね。そもそもブラッディアは有利だもの。幾ら<破滅>が戦争に介入しないからといっても、それでビスティオに負ける要素は殆ど無いのよねえ」
「そうそう。だからこそビスティオに多くのプレイヤーが協力して。ブラッディアの国力を落とさないといけない訳……なんだけど、弟君がブラッディアのイベントを熟しまくってるからなぁ」
「元々ブラッディア有利が、更に酷い事になってるのよねえ。もうどうにもならないレベルまで突っ走ってもらった方が良いくらいよ。中途半端になられるのが一番困るわ」
「確かにねえ。ウダウダとイベントが起こったり、そのイベントがダラダラ続いたりとかすると、何処の国が何処の国と争うか分からなくなってくる。最悪イベントが頻発して見通しが立たなくなったら、どうする事もできなくなるって事も……」
「その辺りは心配あるまい。今はまだブラッディアの事だけだし、関わりはビスティオだけだ。もちろん私の一言がフラグとならんように進めねばならんが、今から気を揉んでも仕方あるまい」
「まあ、それはそうなんですけど……それでも大丈夫かの心配はしてしまいますよ」
「そこまで心配はせんでも、おそらく弟君がスパッと介錯してくれるだろう。ビスティオを」
「でしょうねー。カメレマンのイベントも結局はパーフェクトに終わらせた所為で、スカルモンド伯爵の出番無かったし。そういえばブラッディアにレトロゲームのキャラが多いのは何故なんです?」
「元ネタがレトロゲームなどのキャラは強い。だからこそ弱点を設定しておく必要がある。弱点の多い種族といえば……?」
「アンデッドって訳ですか。吸血鬼も弱点多いですしね。それでも一部の者達はある程度克服してますけど」
「そこはプレイヤーとの兼ね合いだな。流石にずっと弱点があったらプレイヤーもやる気を失くす。だからこそ高位になればなるほど弱点は減るようにしてある。それがプレイヤーだけというのもおかしかろう?」
「まあ、そうですね」




