0201・国境イベントの終了
「そろそろ様々なところを巡るのに丁度良いかと思ってな、それで転移札を渡しておく。ただし魔力には注意せよ。人数が増えれば増えるほど消費MPは増大するのだ。最初は己一人でギリギリであろう。それと、その転移札ではここにしか転移できんから覚えておけ」
「転移札は便利ですが、設置型と違って大気中や大地の魔力を利用出来ませんからね。全ての魔力を使用者が負担しなくてはならないのですよ。流石に私達はついていけません、3人でも消費魔力はかなりのものです。もっとレベルが上がってからですかね?」
「そうね。まあ、今のところは何処かに行く用事も無いし、気にしなくても良いんだけど」
「先ほど<破滅>殿が言ったけど、流石に地図と我が国の紹介をしている観光本が報酬ではね? という事でコッソリ持ってきたわ。宰相には知らせてないけど、まあ後で気付くでしょう。はい、コレが報酬よ」
マリアさんがテーブルに自分で置いたのは、何かのメダルだろうか? 金属で出来た丸いメダルのような物が置かれている。一応手に持って良いか聞いてから手に持ったけど、何だろうコレは?。
「ある意味で報酬であるし、ある意味では報酬ではない。相も変わらず……と思わんではないが、顔を知られていないコトブキならば有用か。ま、怒らぬでおいてやる」
「流石にコレを渡したのに怒られても困るのだけれど?」
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<印> ブラッディア血聖勲章
ブラッディア国内において送られる勲章の中でも、極めて特殊な勲章。この血聖勲章は女王自らが下賜する物であり、女王が認めた者にしか渡されない。勲章として功績を認める物ではないが、正式に女王の知人と周囲からは見られる
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「「………」」
「女王の知人と見られる……ねえ。どちらかと言うと、将来有望そうなのに唾を付けたという方が正しい気がするんだけど?」
「実際そういう意味でも渡しておるようだぞ? だから怒らんでおいてやると言うたのだ。妾の弟子に唾を付けるなど本来は許さんが、この国の中を歩くには都合が良いからのう」
「まあ、女王の知り合いで稀人となればマズイ相手だと分かりますからね。悪徳な連中は特に困るでしょう、口を塞げませんし。死んでも復活するというのは、腐っている連中にとっては天敵みたいなものです」
僕は天敵扱いでこの国を回る羽目になるの? まあ多分だけど、他のプレイヤーも似たような事をやっている人は居るんだろうなぁ。それが天使の星と悪魔の星の戦争に繋がるんだろうし。っと、そういえば鑑定してなかった。
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<転移具> 竜木の転移札 品質:10 レア度:6
希少な竜木で作られた転移札。魔力を篭めると設定されている任意の場所に転移する事が出来る。この札に登録されているのは<破滅の魔女の家の庭>
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「そういえば途中で飛んだが、これも渡しておかねばアヤツが五月蝿いからの。こっちもコトブキとトモエ両方に渡しておく。好きに使えば良いが、仕事を頼まれても知らんぞ?」
そう言って、師匠は僕とトモエに木の札を放り投げてきた。さっきの転移札と同じだと思うんだけど、何か違うのだろうか?。
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<転移具> 竜木の転移札 品質:10 レア度:6
希少な竜木で作られた転移札。魔力を篭めると設定されている任意の場所に転移する事が出来る。この札に登録されているのは<支配の魔女の家の庭>
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「支配の魔女の家の庭って、これ師匠の家に転移するって事ですか? となると、落ち着いたのかな? 師匠は稀人が弟子にしてくれと言ってきて鬱陶しいって言ってたけど」
「そういえば、そういう理由で支配の魔女って家から離れてたんだっけ? これって僕もサキュリアに行けるって事なんだろうけど、行ってどうするって話でもあるんだよね。まだブラッディア国内も殆ど見回った事ないし」
「まあ、それはねー。私はどうしよう、一旦師匠の所に戻った方がいいのかな? それはそれで面倒だけど、戻っておかなきゃ五月蝿いだろうしなー」
「貴女、<魔隷師>よね? 支配してる魔物と一緒にどうやって帰るの? 貴女のレベルでは魔力が足りないわよ。魔石を使えばカバーできるとはいえ、一度の転移でかなりの魔石を必要とするから諦めたら?」
「魔石なんて売っちゃって持ってない。………まあ、帰らなくても五月蝿く言われないでしょう。何より魔力が足りなくて帰れないんだから、しょーがない、しょーがない」
何か物凄く会いたくない感が滲み出てるなぁ。会いたくないじゃなくて、遭いたくないって感じかな? それはともかく、そろそろ一言断ってソファーの部屋に戻ろう。
ソファーの部屋に戻った僕はプレイヤーマーケットに、今日のモンスターラッシュで手に入った物と、正騎士達を倒して得た物を売り出す。
全て終わったらファルとセナに対し、セスに【魔力操作】と【魔力感知】を教えるように頼む。それが終わったらこの冊子を渡し、好きな魔法を3つ覚えていい事を言っておく。それと、それ以外のスキルは覚えられない事も言っておいた。最初は5個が限度だし。
テーブルの上に三色団子5本入りを2人分置いてログアウト、現実へと戻る。
諸々の雑事を終えてログインすると、ソファーの部屋に丁度ラスティアとキャスティが居て団子を食べていた。横でギンもお裾分けを貰っている。
僕はそんな光景を眺めながら持ってきた本を読み、時間になったのでログアウト。本日はここで終了。
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2000年 9月22日 金曜日 AM8:28
本日も雑事を終えたのでログインするのだが、ようやく新PVが完成したのか、オープニングで流れた。まあイベントをまとめたPVなので視聴し、終わったら改めてログイン。何故か僕が鬼面武者と戦っているところが使われてたね。
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召喚モンスター:セスが【魔力操作】を取得しました
召喚モンスター:セスが【魔力感知】を習得しました
召喚モンスター:セスの【魔力操作】が【精密魔力操作】に変更されます
召喚モンスター:セスの【魔力感知】が【精密魔力感知】に変更されます
召喚モンスター:セスが【浄化魔法】を習得しました
召喚モンスター:セスが【氷魔法】を習得しました
召喚モンスター:セスが【雷魔法】を習得しました
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おお! 通知ラッ、うん? ……氷魔法に雷魔法? いやいや、ちょっと待って。えっ、あの冊子の中に氷魔法とか雷魔法があったの? 全然知らなかったんだけど?。
ギンとコタロウをどけ、ソファーから起き上がったら木箱に向かう。昨日の売り上げは……何か凄いなぁ。今までの最高額を更新したんじゃないかな。木箱の中のお金と先程の売り上げを全て足して、再びウィンドウからお金を出す。
両替で貨幣を少なくしたら仕舞い、部屋に居たナツとイルに挨拶する。今日は2人ともログインできる日だから居るんだけど、昨日で国境都市のイベントが終わった事を話す。
「あー……そうなんだぁ、それは残念。私も正騎士と戦ってみたかったよ。イルが居たらもうちょっと楽に勝てたと思うし、私も魔法で援護できたと思う」
「魔法はあまり効かなかったみたいだから、相手は対策を立てていたか、単純に強かった可能性が高い。物理攻撃の方が有利に戦えてたと思う。コトブキの召喚モンスターは【ダークヒール】でしか回復できない」
「あっ……そういえば、そうだった。魔法って便利だけど、魔法防御? を上げられると厳しいね。何か考えておかないと」
「コトブキみたいに【投擲】を習得して投げるとか? スキルで補正が掛かると思うから、リアルで変でも大丈夫な筈。おそらく奇跡は起きない」
実はナツは物を投げるのが苦手じゃない。でも何故か投げると稀に奇跡を起こし、おかしな方向へ飛ぶ事がある。
誰かの頭にぶつかり怒られると思った瞬間、何故か上から植木鉢が落ちてきて当たった人の前に落下。当たった人の命が助かるとか。
そういう意味不明な奇跡を起こす事があるんだよね。流石にアシストの効いているゲームだと無い……と思う。




