0196・捕縛者に関しての報告
話している最中、突然マリアさんの影からいつものタキシードの人が現れ、テーブルの上に6つの枷を置いた。青い色の枷だけど、これはいったい……。
「ごめんねー。うちの宰相がヘルロックを与えるのは流石にやりすぎだって言って、こっちと交換してほしいの。特殊罪人用の枷が流出しても困るし。流石に煉獄の枷はそっちで使って問題ないけど、ヘルロックは我が国の技術で作ってるから」
「宰相は技術流出を恐れたか。まあ、分からんではないが、それを言い出すと煉獄の枷はコトブキの作りし物だと認めるようなものだがな。ヘルロックが無ければ作れんとはいえ、あの枷は今のところコトブキにしか作れぬ」
僕はヘルロックをインベントリから取り出してテーブルの上に置く。この枷を代わりに貰っていいらしいけど、この枷はどんな枷なんだろう?。
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<枷> 弱体の枷 品質:10 レア度:5 耐久880
悪魔の星の多くの国で使われている、犯罪者捕縛用の枷。着けた者の能力を落とし、逃げられないように出来る。魔力や闘気で着脱ができ、着けられた者は流せないので捕まった者が外す事は出来ない
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「着けた相手を弱体化させるって便利ですね。でも同時に敵に使われると面倒な事になる物でもあるか……気をつけよう。今日の連中も思ってたより強かったし」
「ほう? コトブキが強いという者がおるとはな。いったい何と戦ったのだ?」
「いえ、今日の敵はスパイ? とカメレマンだったのですが、カメレマンの方に苦戦しまして。捕縛を考えていたのもあるんですが、それ以上に小さく体を折り畳むようにして戦われたので、攻撃するのが難しく……そのうえ向こうは回避主体でしたので、なかなか当たらなかったんです」
「成る程ねえ。確かに小さい相手って戦うのは面倒だし、まして捕縛する為に殺せないとなったら尚更。とはいえカメレマンが来たって事はサーヤを暗殺しようとしたって事?」
「あの辺境伯が言うには、辺境都市ミョウセンに拠点を作ろうとしたのが最初の連中。狩人に扮してたらしいけど、普通の狩人ではないでしょうね。その後に捕まえたのがカメレマンの連中よ」
「あの者どもは暗殺者でしたし、サブ職業が<鍵師>だったり<曲芸師>だったりしたので、間違いなく侵入などを目的にした者達でしょう。レベルは45~50という所ですから、それなりの者ではありますね」
「ふむ、中級の者達を派遣してきたというところかの。その程度では辺境伯を殺す事など無理じゃがな。相手を舐めておるのか、それとも単なる脅しか……。または国境に目を向けておきたいのかもしれん」
「本命は別で、国境は陽動という事? 可能性としてはあるけれど、今のところそういう情報は入ってないわね。疑わしいというだけで身内を調べる訳にはいかないし、難しいところよ。疑惑の目を向けると、こっちにも疑惑の目が向くわ」
「まあ、当然じゃな。誰かを疑うという事は、誰かから疑われるという事。しかし統治者は疑わねばならん。因果な商売じゃのう、妾には何の関係も無いが」
「でしょうね……。それはともかくとして、もう少しの間ミョウセンの周辺を探ってくれる? カメレマンまで投入してきたって事は、これ以上裏からの攻撃は無いと思うんだけど」
「獣王国にとっては裏の駒で一番なのがカメレマンじゃからな。奴等を使って失敗したとなれば、後は正攻法、つまり戦争しかない。もしくはそれ以下の情報戦となるが……噂を流す意味も無いから、いちいちせぬであろうよ」
「そもそもこの国ってアンデッドが主体だからねえ。不満を煽ろうにもアンデッドが普通に生きていけるのはこの国ぐらいだし、他の種族は「嫌なら出て行け」で終わるものねえ。他の種族が暮らしやすい国は別にあるんだし」
成る程ねえ、それでこの国は強固なのか。アンデッドって寿命長いし病気とかにもなりにくい。精神が風化したら寿命らしいけど、それまでは生き続けられるそうだ。もう1つ、瘴気に弱く魔物になってしまう可能性はある。
その辺りは長い間の経験などの蓄積で、浄化したりとか色々できるらしく問題ないみたいだ。それにブラッディアでは瘴気が外に漏れないように師匠が結界を張っているしね。だから尚の事、瘴気アンデッドになったりはしない。
夕食と話し合いも終わり、僕はさっさとソファーのある部屋でログアウト。2人には堅揚げ○テトを渡しておいたので仲良く食べてるだろう。
………ふぅ、夕食などを終えて部屋へと戻ってきたのでログイン。昨日と同じく時間まで本を読み、時間が来たらログアウト。本日はここまで。
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2000年 9月21日 木曜日 AM8:21
ログインしてギンをどけ、プレイヤーマーケットの売り上げを木箱の中に入れる。そういえばマイルームに一度も行ってないなと思い転移すると、古い時代の家の中だった。簡単に言うと板間に囲炉裏があり、その横に竈などがある。
入り口になっている木戸を開けると、外には庭が見えた。僕が購入したのは増設した部屋と庭と倉庫、作業部屋と訓練場だ。囲炉裏の後ろの戸を開けると部屋があり、右側の戸を開けると作業をする為の器具などが並んでいた。
囲炉裏の部屋の片隅に魔法陣みたいな物があったので、その上に乗ってみる。すると真っ白な空間に移動した。もしかしてここが訓練場なのか? 一歩踏み出すとウィンドウが出て、設定を変える事が出来るのが分かる。ここでは死なずに練習できるらしい。
それは僕好みで嬉しいのだが、死なないという事は痛みと苦しみを味わい続けるという事でもあり……それを考えると少しゲンナリしてくる。とりあえず師匠の家に戻ろう。
ちなみに召喚モンスターは僕がマイルームに来たら呼び出せるようだ。しかし毎回マイルームに来ないと連れては来れない。
退避させるという利用方法は出来ないようになってるね。戦闘中には使えないだろうけど、退避させるならちゃんと送還しろって事だと思う。っと、さっさと戻ろう。ファルが来ているかもしれない。
戻ってすぐにファルが呼びに来たのでギリギリだったようだ。何故か部屋にはトモエが居てジト目で見てきたが……。
「ギンが鳴いてたから来たのよ。あんた何処行ってたの?」
「ああ、マイルームの確認に行ってただけだよ。まさかマイルームまでレトロとは思わなかったけど、囲炉裏とかちょっと楽しそうだよね」
「マイルームに行ってたって、まだ確認してなかったの? 呆れるわね。それより施設は充実させてる? 私だってギリギリで全て交換できたくらいだし、あんたなら余裕でしょ?」
「インベントリとか含めたらギリギリだったけどね。だからスキルとかは一切入手できてないよ。欲しいものも無かったけど」
「まあ、優秀なスキルがポイントで手に入る訳もないし、そういうのはスキルレベルを上げるしかないでしょ。現在のレベルがサッパリ分からないけど。あ、そうそう、ナツとイルは授業受けるってさ」
「昨日はログインしてたから交互にするのかな? それなら何とかなりそうだけど大変だね。あの2人なら根性と集中力でどうにかするだろうけども」
食堂に行くと師匠が居たので挨拶し、僕達は食事をとった後で豪雪山へと行く。トモエもスノートレウッドと白曜石はもうちょっと欲しいみたい。僕の場合はそもそも装備が揃ってないし大変だよ。
今日も頑張って採掘しようっと。




