0195・煉獄の枷の結果を報告
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種族レベルが上がりました
メイン職業:ネクロマンサー・下級のレベルが上がりました
使い魔:ラスティアのレベルが上がりました
使い魔:キャスティのレベルが上がりました
召喚モンスター:ファルのレベルが上がりました
召喚モンスター:セナのレベルが上がりました
召喚モンスター:ドースのレベルが上がりました
召喚モンスター:フォグのレベルが上がりました
召喚モンスター:フィーゴのレベルが上がりました
召喚モンスター:シグマのレベルが上がりました
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ドースと共に皆の下へと戻ると、既に全員にヘルロックを掛けて確保していてくれた。ちょっと大変だろうがカメレマンは軽いので、奇声を上げている2人をドースの背中に乗せる。残りは僕、ファル、セナ、シグマで背負って戻ろう。
「レベルの高い連中に勝ってレベルが上がったのは嬉しいけど、BGMが良くない」
「奇声だからね……でも、しょうがないよ。他に捕まえる為の道具とか無いうえ、中には<曲芸師>なんていう見た事もない職業の人も居るから。縄抜けとかされたら困るし、枷を使うのは仕方ないと思う」
「こいつら本当に暗殺者として役立つサブ職業ばかりねえ。私達は使い魔だから微妙にカテゴリーが違うけど、暗殺に特化し過ぎで日常に溶け込むのは無理じゃない。元々そういう種族だけど」
「そうですね。日常に溶け込んで情報を探るなんていう役目は絶対に出来ないでしょう。そういう者は<農家>や<商人>の職業で入り込みますから。ハッキリと暗殺者である以上、入り込むのは不可能です」
「という事は、こいつらは暗殺に来た……? 誰を狙ったかが大事だけど、辺境伯以外には居ないと思う。もしくは砦の兵士?」
「砦の兵士を殺して砦を陥落させてもブラッディアの側よ? 見つかったらすぐに攻撃されて取り戻されるんじゃない? 歩調を合わせて向こうが進軍してくるなら分かるけど、そんな様子は無いみたいだしねえ」
「やはり辺境伯の暗殺でしょう。可能性としてはそれが一番高いです」
話をしながらも急いで戻っていく。単に背負っている連中が重いのでダラダラ歩きたくないだけなんだけど、それでも面倒臭さは分かってくれるのか歩調を合わせてくれる。早歩きぐらいの速度で戻り、ミョウセンの門番に事情を説明。すぐに屋敷まで急ぐ。
辺境伯家の門番に事情を説明し中へと走ってもらうと、慌てたような走りで執事とサーヤさんが出てきた。僕達は屋敷の中へと案内され地下牢へと連れて行くのだが、ドースの背負っていた奴は兵士2人が背負ってくれている。
通された先の地下牢では先に捕まった奴等が憔悴した顔をしており、1人は頭を抱えて震えながら怯えていた。アレが煉獄の枷を着けた奴の末路なのかな?。
「あの頭を抱えている男。あれが煉獄の枷を着けられていた奴よ。普通なら私が嘘を真偽判定しながら尋問するんだけど、あの男だけは絶対に嘘を吐かないの。何かに怯え続けていて真実しか話さない状態になっているわ。実質、再起不能よ」
「「「「うわぁ……」」」」
「おかげで真偽判定をしなくても真実を話してくれるから楽で良いんだけどね。あそこまでの威力があるというのは素晴らしいと思う。でも、完膚なきまでに折れるのでは……まあ、他国のスパイだったりだから問題は無いんだけど」
「あまり良い気分じゃないと。まあ、それは当然でしょうね。精神が壊れはしなくとも、怯え続けるのではどうにもなりません。完全に心が折れているというより、生きながらにして心が地獄の業火に炙られたのでしょう」
「それって心が折れるよりも酷い有様よね。心が砕かれて再起不能になった感じ? 容赦の欠片も無いという点ではコトブキにピッタリの枷だと思うけどね? 何より作った本人なんだし」
「そういえば枷の話ばかりで忘れていたけれど………御苦労様、枷を返すわね。実は最初に捕まえられてきた連中は、ここミョウセンにアジトを構えるつもりだったみたい。表向きは狩人のパーティーの家で、裏は獣王国の拠点という感じで考えていたらしいの」
「サーヤ様を暗殺する為の者達を夜中に忍び込ませるつもりだったらしい。これからの尋問次第だが、おそらく君達が捕まえてきたカメレマン達の事だろう。君の怖ろしい枷を嵌められた者が2名おるので、おそらくすぐに分かるとは思う」
兵士長の言葉を最後に僕達は上にあがり、転移魔法陣から師匠の家に戻る。立て続けに成果を出したからか、怪しげな者を見るような視線は無くなっていた。
師匠の家に戻った僕達は、まだ夕食には早いので物作りを始める。ナツはともかくイルは矢を作っており、トモエは細工をせずにギンとコタロウと遊んでいる。僕は昨日に引き続き武器を作っていき、ラスティアとキャスティに新しい武器を渡す。
2人から返された武器を分解しスノートレウッドと白曜石に分ける。白曜石は棒手裏剣にしてインベントリへ入れ、スノートレウッドは棍棒にしてプレイヤーマーケットに流す。あまり良い品じゃないけど魔力強化出来るから売れるかな?。
残りは自分の武器とナイフと短剣か。明日で揃うとは思うけど、その後もファルとキャスティの剣とか作らないといけないし、まだまだ大量の素材が必要だなぁ。……っと、ファルが呼びに来たので食堂に行くか。
食堂に行くと、何故かマリアさんまで来ていて、食前酒としてのワインを飲んでいた。僕達は席に座って食べ始めるんだけど、予想していた通り師匠から聞かれる。
「今日おそらくあの枷を使うたであろうが、どうであった? 場合によっては取り上げて封印せねばならんからの。流石に人の手にあまる物は持たせられん」
「難しいところですね。着けると奇声をあげて、発狂したように喚き散らします。しかし狂う事は出来ないようで、精神が壊れるなどという事もありませんでした。代わりにずっと怯え続けているそうです」
「………それはそれで地獄じゃない? 狂う事もできず、発狂する事も許されない。正気のあるままに生き地獄に突き落とされる。そう考えたら悪夢としか言えないわね」
「とはいえ壊れぬという点は素晴らしいの。普通ならば、そこまでの責め苦だと壊れるぞ。にも関わらず、壊れる事も狂う事も許さぬというのだ。拷問としては理想的だとしか言えん、責め手も煩わされずに済む」
「着けて放っておけば、それが拷問だしねえ。捕縛と同時に拷問が出来るんだもの、外されたら必死で全てを喋るわよ。耐え難い拷問をもう一度受けてまで守る事でも無いでしょうしね」
「そもそもの事ですが、そこまでの矜持や忠義がある者に対して潜入や暗殺任務などさせませんよ。物語などではあったりしますが、忠義や矜持のある者は側に置いて使うでしょう、普通は」
「そうね。そもそも潜入や暗殺なんていうのは、失敗しても心が痛まない者にさせるのよ。つまりお金で雇う連中ね。身内に手を汚させたりなんてしないわ。そういう事をさせると忠義も失うし」
「それもあろうが最も大きいのは、そういう事をさせられたのだから地位を寄越せと言うてくる事だ。それがあるので金でやる者にやらせるという事を各国もやっておる。身内にさせると優遇せねば五月蝿いからの」
「そうなのよねえ。当人が何も言わなくても、身内か子孫がこっちに言ってくるのよ。なので私は絶対にさせないわ。もし勝手にしたら、その罪を問うもの」
「功ではなく罪にしてしまうという事じゃの。まあ勝手をしたのだから当たり前ではある」
貴族を治めるのも色々大変なんだなぁ。でも戦国時代の武将とかも似たような事で頭を抱えてたって聞くし、何処でもある事なのかな?。




