0192・ナツとイルを連れて豪雪山へ
色々な感情が湧きあがってくるのは皆が同じだ。全員が一致してそれを放り投げ、何事も無かったかのようにはならなかった。師匠がもう1つのヘルロックを渡してきたので高度な仙力を再び流すと、やっぱり煉獄の枷に変化。
師匠はそれを様々な角度から確認したものの、最後には「悪用せぬならば使え」と言って放り投げてきた。ただし煉獄の枷はそれ以上量産するなと厳命されたけど、僕は量産する気なんて欠片も無い。これ以上の面倒事は御免だよ。
夕食を食べた後、いつもの部屋に行って2人に大福を渡してログアウト。現実での雑事を熟す。その後は両親が帰ってきたので料理を作り、シズが下りてきて夕食。後片付けが終わったら部屋に戻ってログインする。
ラスティアとキャスティには驚かれたが、本を読む為にログインしたと言ったら納得していた。僕は寝る時間が来るまで本を読み、時間が来たのでログアウト。本日はここまで。
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2000年 9月20日 水曜日 AM8:23
今日もいつも通りログインだけど、ナツとイルが久々にログインするんだっけ? 2人を豪雪山に連れて行ったりとか色々しなきゃいけないけど大丈夫かな? 2人の武器もアップデートする事になるだろうけど、まあ加工経験が溜まるしありがたい事か。
ログインしてお腹の上のコタロウをどけ、皆に挨拶をする。ここ最近はプレイヤーマーケットに流してないので売り上げはないが、催促は来てそうな気がする。とはいえバイゼル山では掘ってないから、市場に流せるような素材が無いんだよねぇ。
コタロウと遊んでいるとファルに呼ばれたので、食堂に行くと全員揃っていた。挨拶をした後で食事を始めるんだけど、昨日の事を言われたよ。
「コトブキ。昨日の枷を使う事になったならば迷わず使え、相手の事を考えるな。しかしどうなったかの報告はせよ。場合によっては相手の精神が壊れかねんからな。そこだけは気をつけておく必要がある」
「相手の精神が壊れかねない枷? ……またコトブキが怖ろしい事をした?」
「またって事は過去に何かあったの? そういう感じには見えないけど……」
「イルが大袈裟に言ってるだけだよ。それよりも、今日現れるかどうかは分かりませんけど、現れたら使っておきます。アレは高度な仙力を練らなければ使えませんので、戦闘中にはとても使えませんし」
「戦闘中にも使えたら反則でしょ。相手が何も出来ないまま、勝手に苦しんで死ぬかもしれないし、死ななくても再起不能になるかもよ?」
「そう考えるとゴブリン辺りで一度実験しておいた方がいいのかな? 皆に押さえつけておいて貰えば枷を嵌める事は出来ると思う。高度な仙力を練る訓練もしなきゃいけないし」
「高度な仙力ってそんなに難しいの? 私はスキルを持ってないから分からないけど……」
「相当難しいね。今のところ足とか腕とか動かそうとすると失敗するんだ。とにかく動かずに循環させることしか出来ないし、それすらかなり難しいよ。少しずつは何とかしてるんだけど、そもそも練る事すら大変だから」
説明しても伝わらないもどかしさはあるけど、こればっかりは仕方ない。多分だけど出来ない人は出来ないんじゃないかなー、と思ってる。このゲームそういう部分があるんだよね。全員が全員できるようにはなっていない。
ただし、出来ない人は出来ないなりに楽しめるようになっている感じ。プレイヤーの誰もが同じように、仲良く誰でも出来る……何ていうゲームじゃない。出来なきゃ出来ないなりに工夫しろというゲームだ。
そういう意味でもテンプレは作れなくなっている、というのが正しいんだろうね。自分は何が出来て何が出来ないのか、それをサポートするのにスキルや装備をどうするべきか? 多分だけどそんな感じ。
だからこそ自分に合わせて自分をカスタマイズしなきゃいけない。適当にダラダラやってると上手くいかないように……もしかしてその為の隠しパラメータというか、アバターデータなんだろうか?。
その人個人のデータとして確立してあって、それぞれの行動に補正を受けてる? だとしたら隠されてるデータは膨大になるけど……。これ以上は考えても答えは出ないし、さっさと用意しよう。
ナツとイルも用意が完了したみたいなので出発し、バイゼル山でユウヤと合流、そのまま豪雪山へと行く。格子を開けて進み、閉じたら洞窟を出て右へ。ウサギや狼を倒しつつ進み、鉱床で掘っていくのだが、ツルハシが違うからか量が多い気がする。
「確かにそうね? 言われてみればスノートレウッドと白曜石のツルハシの方が量が多く手に入ってるような……?」
「多く出る確率が上がってるって感じかな? イベント前にツルハシの素材を変えたばかりだし、今のところは何となくでしかないけども」
「それでも増えている気がするなら、先にツルハシを変えた方が良いかもね。多く手に入るならそれに越した事はないし」
「それはそう。こういう小さいのが積もって後に響く。少しでも多く手に入るなら、そっちに変えるのは当たり前」
皆が掘り終わったら林に【ダークウェーブ】を使って戦闘開始。といっても僕達が魔法を連打し、その隙に武器が残っているメンバーが攻撃して終了。今回は全員が1つずつだった。確率が下がってるかどうかは微妙なところだね。
そのまま洞窟に戻り、フリーズベアと戦闘して勝利。トモエとユウヤからはジト目が来たけど僕は気にせず説明。フリーズベアの毛皮のジャケットの話と、氷熊の短剣を説明すると理解された。倒す回数を増やさないと多くの素材が手に入らないからね。
トモエは鞭の為の皮だけど、ユウヤはジャケットの方が気になったみたい。服の時点である程度の防御力があるのは助かるみたいだ、特にユウヤは盾士だから細かい攻撃を受けやすいんだと思う。
「タンクはどうしても前「GYAAA!!」に出、キモッ!!!」
「う、うわぁ……」
「やっぱ反応するよな、アレ! 絶対に反応するって! 初見でアレに反応しないとか、そいつはもう枯れてるとしか思えねえ」
ギリギリ耐えた僕をおかしな風に言うのは止めてもらいたい、それは濡れ衣だ。僕は反応をギリギリで抑えこんだだけで、別に無反応だった訳じゃないし。
フローズンエレメンタルやアイススライムを倒していると、レアアイテムが出たらしくユウヤが騒いでいる。どうやらアクセサリーらしいけど……。
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<装飾> スライムイヤリング 品質:10 レア度:7 耐久270
アイススライムと同じ色で作られた綺麗なイヤリング、アイススライムの体で出来ているようにも見える。何故か雪の結晶のような装飾部分が付いているが、身に着けるだけで寒さを完全に無効化できる。ただし暑さに弱くなるので注意
耐寒(完全) 耐暑(弱体)
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「「「………」」」
「「………」」
女性3人は牽制し合ってるけど、男2人は黙ったままです。というか雪山で寒いからそろそろ決めて欲しいんだけど? 流石にそう言うと、3人は睨み合ったままじゃんけんを始めた。
ユウヤと一緒に「ホッ」と一息吐いたのも束の間、一回で決着。またもやナツが勝利してイヤリングを身に着ける。トモエとイルが愕然としているが、君たち流石にじゃんけんに弱くないかな?。
もちろん負けた2人には絶対に言わないし、男2人は何も言わずに黙々と歩いて行くだけです。後ろを見る事も無く歩き、鉱床に着いたら掘っていく。
途中でスマッシュタイガーが現れたけど、誰かさん2人の八つ当たりで酷い目に遭わされていた。説明は……僕の安全の為にも控えておく。




